あえてレッドラインを廃した“大人仕様”のNISMO登場

ノートオーラNISMOとアクアGR SPORTは、どちらも専用意匠のエアロパーツと運動性能を高めるチューニングを施すことでスポーティな運転特性に仕上げられたスポーティモデルだ。

アクアGR SPORTの内装は高触感人工皮革エアヌバック表皮のスポーツシートに換装され、インパネ部の装飾がガンメタリック塗装に変わっているが、内外装はブラック基調でまとめられており比較的シックな印象が漂う。

各部がブラック基調である点はノートオーラNISMOも同じだが、内外装の各部にはNISMOブランドのアイデンティティであるレッドのアクセントカラーが配されている点が大きな特徴だ。しかもノートオーラNISMOでは、シートベルトもレッドとなっている。

新たにノートオーラNISMOへ追加された”ブラックリミテッド”は、こうした内外装のレッド加飾部をブラックでまとめ上げた“大人仕様”のNISMOモデルだ。ただし、インパネは通常のNISMOモデルと同じレッドカーボン調の化粧板を採用することで特別感はしっかりと残されている。

両車ともスポーツモデルらしさを前面に押し出したモデルとなるが、車内の寸法や機能はベースモデルと共通であり使い勝手は一切損なわれていない。

後席空間はアクアGR SPORTの方がほんのわずかに広い。しかし、後席の乗降性はリヤドアの開口面積と開放角度が大きいノートオーラNISMOの方が高い。多少の優劣はあるが、どちらもコンパクトカーとしては快適な部類のクルマだ。

荷室寸法はノートオーラNISMOが長さ690mm×幅1030mm×高さ840mm、アクアGR SPORTが656mm×935mm×824mmとなる。どちらも後席を格納すると荷室床面と後席背もたれの間に大きな段差ができるが、後席格納時でもフラットな荷室にできるオプションが両車ともに装着可能だ。

日産 ノートオーラ NISMO Black Limited
ボディサイズ=全長4120mm×全幅1735mm×全高1505mm
ホイールベース=2580mm
車両重量=1280kg
タイヤサイズ=205/50R17(前後)

トヨタ アクア GR SPORT
ボディサイズ=全長4100mm×全幅1695mm×全高1485mm
ホイールベース=2600mm
車両重量=1160kg
タイヤサイズ=205/45R17(前後)

肝はアクセルレスポンスとハンドリング! 燃費性能はアクアに軍配

ノートオーラNISMOのパワートレインは、ベースとなるノートオーラと共通の1.2L エンジンを発電機として使う“e-POWER”だ。フロントモーターのスペックも同じく最高出力136ps/最大トルク300Nmとなる。

アクアGR SPORTもパワートレインはベースモデルと全くの共通となる1.5L の“THS-II”であり、モータースペックは最高出力80ps/最大トルク141Nmだ。

両車とも公式の0-100km/h加速タイムは発表されていないが、非公式ではノートオーラNISMOのタイムは7秒前後と、アクアGR SPORTより1秒近く速い。しかし、どちらも全開での連続走行が得意なクルマとは言えない。

高速回転するほどトルクが落ち込むモーターの特性上、e-POWERのノートオーラNISMOは速度域が高まるほど加速感が鈍くなる。電力入出力特性に優れたバイポーラニッケル水素バッテリーを駆動電源に用いるアクアも加減速を得意とするクルマだ。両車の特色は絶対的な加速性能ではなく、優れたアクセルレスポンスとハンドリングにある。

アクアGR SPORTはリヤリーンホース部とセンタートンネル部に補強を追加したうえで、コイルスプリング&ショックアブソーバーも専用品を装着。さらにフロントロワアームブッシュの高硬度化や特殊ボルトナットの使用によるリヤサスの締結剛性強化でシャープなハンドリングに仕上げられており、“POWER+モード”選択時にはパワステ制御も高レスポンス制御に切り替わる。

ノートオーラNISMOも前後リーンホースメント部に補強を加え、市販車では珍しいモノチューブ式リヤショックアブソーバーを採用したローダウンサスペンションでハンドリングと乗り心地を両立。駆動制御は専用セッティングとなっており、なかでも”NISMOモード”選択時は過剰とも言えるほどの加速応答性を発揮する。

4WDモデルの有無も大きな違いと言えるだろう。オーラNISMOのリヤモーターは標準ノートオーラの最高出力68ps/最大トルク100Nmに対して82ps/150Nmに強化され、NISMOモードでは積極的に後輪を使う駆動セッティングに変わる。それに対して、アクアGR SPORTには4WDの設定がない。

WLTCモード平均燃費はノートオーラNISMOが23.3km/Lに対し、アクアGR SPORTが30.7km/Lと大きく引き離す。オーラNISMOの4WDは持ち込み登録となるため詳細な燃費は公表されていないが、実燃費は18km/L程度となる。

日産 ノートオーラ NISMO Black Limited
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1198cc
最高出力=82ps/6000rpm
最大トルク=103Nm/4800rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

トヨタ アクア GR SPORT
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1490cc
最高出力=91ps/5500rpm
最大トルク=120Nm/3800-4800rpm
トランスミッション=電気式CVT
駆動方式=2WD(FF)

主張が控えめな“ハイスペックHVスポーツ”に需要はあるか?

トヨタ アクアGR SPORTの新車価格は323万8400円だ。対するノートオーラNISMOブラックリミテッドの新車価格はFFモデルが364万4300円、4WDモデルは401万1700円にも上る。

ブラックリミテッドの価格が通常のNISMO(FFモデル316万3600円)に比べて大幅に高い理由は、シートヒーター&ステアリングヒーターが備わることはもちろん、プロパイロットやBOSEサウンドシステム、NissanConnectナビゲーションシステムなど43万5600円のオプションが標準装備となるためだ。これらの装備を前提とすれば、通常NISMOモデルに対しての追加費用は4万5000円程度にとどまる。

ただし、ノートオーラNISMOブラックリミテッドではパワーリクライニング付きのレカロ製シートやエクステリアオプションが選択できないといった違いもある。

一方、アクアGR SPORTはシートヒーター&ステアリングヒーターを備え、通信が途切れても使える“コネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオPlus”が標準装備となっており、快適装備の面ではブラックリミテッドにも劣らない。もちろんアダプティブクルーズコントロールも標準装備だ。

装備も含めたトータルコスパではアクアGR SPORTの方が圧倒的に高い。ノートオーラNISMOブラックリミテッドは、通常NISMOモデルの外観が派手に感じてしまう人や、スペックに魅力は感じるがフォーマルな場でも使いたい人に向けたニッチなモデルと言えるだろう。

しかし、シックな外観を好むなら通常のノートオーラもブラックリミテッドの対抗馬として上がってくるだろう。とくに今回の改良で追加された“ノートオーラ ブラックエディション”はナビやプロパイロットが標準装備で価格は327万1400円と買い得感が高いモデルだ。

ノートオーラNISMOブラックリミテッドのポジション的なライバルは、アクアGR SPORTで間違いない。しかし販売上の競合は通常のノートオーラと言えるのかもしれない。

車両本体価格

日産 ノートオーラ NISMO Black Limited:364万4300円

トヨタ アクア GR SPORT:323万8400円