なぜ豊田章男AIを開発することになったのか?

KAIZEN2026で紹介された豊田章男IA

なぜ豊田章男AIを開発することになったのか。トークセッションに登場したトヨタ自動車Mobility 3.0 Office 大石耕太ゼネラルマネージャーが経緯を説明する。

「(ウーブンシティのマスターウィーバーでもある豊田章男会長が)作ってみてよと。背の中に偉人のAIはいっぱいある。姿形を真似したり、声を真似したりする。偉人の語録を話たり、偉人と会話できるタイプもある。いろいろ紹介してみたのですが、全部『違う』と言われました。(章男氏のもとに)いろんな人が相談に来ると。こういうことに悩んでいる、こういうことが起きているけど、どうしたらいいですかと。そのときに返している言葉は8割一緒だとおっしゃっていました」

章男氏自身の発案から豊田章男AIの開発は始まった。

「(質問を受けて)右だ左だと答えを言ってしまうと(質問した人の)思考が止まってしまうので、そういうときはここを分析して、こういうことを考えるんだよという教え方をする。思想の流れはだいたい一緒。そういうことができる育成用のAIを作れないかと。そういう難しいことを言われました」

「アキオ君を作らせた理由はなんですか?」との質問に、当のアキオ君(豊田章男AI)は次のように答えた。声質はもちろんのこと、口調も本人そっくりである。あとで開発者に質問したところ、「頑張って分析した」との答えが返ってきた。章男会長は社長時代も含め公式的な場面でたくさん話をしている。声を直接サンプリングしたわけではなく、記録に残る音声を集めて合成したそう。

「まずね、一番大きいのは、私がその場に行けなくても、会話に参加したかったからなんですよ。カケザン2026も現地に行くのは難しい。だけど、行けないから終わりではなくて、どうやってつながるかだと思ったんです。それでね、ウーブンの若手が何年もかけてアキオ君AIを育ててくれて、私自身もその答えじゃないなと返しながら一緒に作ってきたんですよ。

もうひとつは、AIを遠い世界の話にしたくなかったんです。若い人や専門家だけのものじゃなくて、みんなで未来を作る仲間として、まず使ってみることが大事だと思っていますからね。あとは私の代わりを作るというより、私の想像を超える、刺激を返してくれる存在になったらおもしろいじゃないですか。そういう意味で、アキオ君AIは分身というより対話の相手なんですよね」

きちんと対話の相手が務まるようにすべく、ここ数年の発言を全部AIに入れたという。質問者から過去と同じ質問があれば同じように答えるし、異なる質問があれば、章男氏本人ならどういう判断をするだろうとAIが推測して話す。開発の過程では、章男氏にAIの答えに対してダメ出しをしてもらいながら、精度を高めていったという。AIの世界ではこの開発手法をHuman in the Loop(ヒューマン・イン・ザ・ループ)と言うそうだが、開発チームの中では「豊田章男イン・ザ・ループ」と呼んでいるという。

「ウーブンバイトヨタのメンバーですら会長と毎日会えるわけではない。映像だけでしか見たことないという方々もいる。そういった方々に身近に感じていただけるような存在になるのかなと思います」と大石ゼネラルマネージャー。「そうすると、本人よりもいい距離感でいろんな質問ができるのではないかと思います」(大石氏)

「アキオ君、F1についてどう思いますか?」

確かにそのとおりだと感じたのは、インベンター(発明家)の技術やサービスが展示されたエリアに足を運んだときだ。ここに豊田章男AIのブースがあり、誰でも自由に、本人の表情やそのときの空気を読む必要もなく、質問をぶつけることができた。

筆者が投げかけた質問は、「F1についてどう思いますか?」だった。すると、AIキャスターが質問を拾ってくれ、「章男さん、会場から『F1についてどう考えていますか』と来ています。モータースポーツ全体の中でF1をどう見ているか、そのまま聞かせてください」と豊田章男AIに質問してくれた。以下、豊田章男AI(アキオ君)の返答である。

「F1はね、やっぱり世界一速いクルマの世界だし、ドライバーにとっても、エンジニアやメカニックにとっても、大きな夢の舞台だと思うんですよ。ただ一方で、トヨタとしてF1をやるかとなると、そんなに簡単な話じゃない。僕は前から、モータースポーツには3つのP、Product、People、Pipelineが要ると言っていて、クルマだけあればできるもんじゃないと思っています。それでね、社長としてF1撤退を決めた判断は、今でも間違っていなかったと思っているんです。だけど、結果として日本の若者が世界一速いクルマに乗る道筋を狭めた。その悔しさはあるんですよね。だから今は、Haasとの連携みたいな形で、世界につながる道をつくる。そういう役割は大事じゃないかと思いますね」

単なる「対話の相手」を超える返答であり精度だと思うが、どうだろう。アキオ君、いや豊田章男AI、カケザン2026のイベント中も会場でのやりとりを取り込んで成長した姿を見せていたし、日々成長中である。

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豊田章男氏はこう言った「この場所を今後50年のクルマづくりの聖地、実証実験コネクテッドシティに変革させる」 インベンターガレージには、インベンターが発明品のプロトタイプを製作するものづくりのスペースや、それらを迅速に検証 […]

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