下田市の第87回「黒船祭」で一般公開された
海上自衛隊の掃海艦『あわじ』を見学
静岡県賀茂郡河津町で開催された『【CBR Meeting 2026 in 河津】Motovlogger Siro Presents』が14時に閉会となり、ミーティング取材を終えたあと、宿のチェックインまで時間があったことから、筆者は愛車のモト・グッツィV11スポーツにまたがって伊豆半島を南下。下田市で毎年5月に開催されている『黒船祭』の一環として、下田港・外ヶ岡岸壁で一般公開されている海上自衛隊(以下、海自)の「あわじ型」掃海艦のネームシップ(1番艦)『あわじ』の見学へ向かうことにした。

掃海艦とは海中に敷設された機雷を探知し、これを排除・無害化して安全な航路の確保を任務とした軍艦の一種で、機雷の脅威から艦隊や民間船舶を守る機雷戦の主力となる。任務が重複する艦艇に掃海艇があるが、両者は外観上の大きさが異なる。もともと沿岸での活動を前提とした掃海艇は基準排水量が数十t~500tほどの小型の船艇が用いられることが多かった。

しかし、掃海艇では沖合の深深度に敷設された機雷への対処能力がないことから、その能力付与のため艦体を大型化した掃海艦が誕生した。海自では1993年就役の「やえやま型」から従来の掃海艇に加えて掃海艦の整備を開始し、現在では後継艦の「あわじ型」5隻が就役、1隻が建造中である。
我が国のシーレーン防衛の要のひとつとなる「機雷戦」
その最前線に立つ『あわじ』は世界最大級のGFRP製の船体で建造
今回、見学した『あわじ』は、2014年2月に起工し、2015年10月に浸水、2017年3月から就役した海自掃海艦の主力かつ最新鋭で、現在は横須賀を母港とする水陸両用戦機雷戦群第1機雷戦隊に所属している。

「あわじ型」掃海艦
スペック
基準排水量:690t
満載排水量:780t
全長:66.8m
全幅:11.0m
深さ:5.7m
吃水:2.7m
主機:ディーゼル2基・2軸
出力:2200ps
最大速力:14kt (26km/h)
乗員:約50名
兵装:JM61-RFS 20mmバルカン砲×1
レーダー:OPS-39H 対水上捜索用
光学式監視装置
ソナー:OQQ-10 掃海艦ソーナーシステム
OZZ-2 水中無人機(UUV)※2番艦まで
OZZ-4 機雷捜索用水中無人機(中型)※3番艦以降
掃海装備:小型係維掃海具1型改
感応掃海具1型改
掃討装備:自走式機雷処分用弾薬(EMD)
その他:OXX-2 情報収集用ROV ※3番艦以降
筆者は過去に「ちくご型」護衛艦『によど』『てしお』、「はるな型」護衛艦『ひえい』(ともに現在は退役)、「あたご型」護衛艦『あたご』などのDE (小型護衛艦)やDDH (ヘリコプター搭載型護衛艦)、DDG (イージス護衛艦)を見学したことがあるが、それらの戦闘任務に就く艦艇に比べると基準排水量は690tと小さく、兵装は艦首のJM61-RFS 20mmバルカン砲1門のみとなる。

それも火器管制レーダーを備えず、レーザー測距儀と赤外線を組み合わせた電子光学式照準装置のみとなることから対艦・対空装備ではなく、水上を漂う機雷の破壊用だ。

このように聞くと地味な艦との印象を持たれるかもしれないが、海自にとって機雷戦は、対潜水艦戦やミサイル防衛と並ぶシーレーン防衛の要であり、その重要性は大型の護衛艦と比べても遜色はない。

掃海艦や掃海艇が処理する機雷はさまざまな種類があるが、大別すると触発式、感応式、管制式の3つに分類される。感応式機雷の中には船舶が通過した際の磁気の乱れに感応する磁気機雷があり、触雷を避けるため、掃海艦や掃海艇の船体は非磁気化、すなわちスチール以外の素材で作られた船体が必須となる。

過去には木造で建造されることが一般的だった掃海艇だが、近年の木材の高騰と木造船建造技術者(船大工)の減少、樹脂整形技術の発達により、海自では「ひらしま型」掃海艇を最後にGFRP (ガラス繊維強化プラスチック)で建造している。

「あわじ型」掃海艦の船体もその例に漏れず、水中放射音の低減と高剛性・耐衝撃性を確保するため、GFRPの外板に軽量かつ衝撃吸収性に優れた芯材を挟み込んだ「GFRPサンドイッチ構造」を採用する。これほどの大きさの船体をGFRPで建造することは珍しく、世界最大級のGFRP製の艦艇となる。この艦の存在は建造したジャパンマリンユナイテッドの高い建造技術の証左と言えるだろう。

機雷を処理する3つの方法とは?
ダイバーが手作業で処理する「掃討」はもっとも危険な任務
機雷の処理方法は大きく分けると3つ。機雷を発見してひとつずつ処理する「掃討」。係維機雷を対象として掃海索(カッター付きのワイヤー)を曳航し、海中で機雷を固定しているワイヤーを切り離してから浮上した機雷を銃などで爆破処理する「掃海」。

そして、発音体や掃海電線を使用して意図的に音響や磁場を作り出して船舶が通過したかのような状況を作り出し、機雷を誤爆させて処理する「感応掃海(複合掃海)」だ。

いずれも難易度が高い任務であるが、とくに「掃討」は水中無人機(ROV)と自走式機雷処分用弾薬(EMD)を用いるだけでなく、ダイバーが水中に潜り、機雷の場所を特定した上で、手作業で爆薬を設置して処理することもある。
作業中に機雷が爆発する恐れがあるほか、海の中にはサメやダツ(細長く尖った顎と鋭い歯を持つ魚で、光に反応して60km/hの猛スピードで突進する習性がある)などの危険な生物も潜んでいる。機雷を処理する掃海とは、常に死と隣り合わせの危険な任務でもあるのだ。


まさに「海の男」の鑑のような『あわじ』乗組員
家族的な雰囲気の中で日々の訓練と危険な任務にあたる
そんな危険な任務に臨む『あわじ』の乗組員はどのような人たちかといえば、明るく、礼儀正しく、気持ちの良い海の男たちだった。純白の制服の下には鍛え抜かれた身体を持ち、笑顔の中には厳しい訓練と苦難を乗り越えてきた確固たる自信と精神力がたぎっている。

彼らは無知な筆者がつまらない質問をしても、その都度丁寧かつわかりやすく任務や装備品について説明してくれた。おそらく、この日だけでも来艦者から同様の質問を何十回、何百回と受けているはずだが、イヤな顔ひとつ見せることはなかった。

掃海艦『あわじ』の乗員は約50名。1度航海に出れば長期間陸に戻れないこともあるだろう。閉鎖的な狭い空間で常に寝食を共にするため、人間関係はどうしても濃密になるはずだ。艦内の雰囲気はどのようなものなのか乗員のひとりに尋ねた。
「ウチはみんな仲が良いですよ。200~300人の乗組員を擁する大型の護衛艦と違って『あわじ』は50人ほどの小所帯です。その分、絆が深まるのでしょうね。乗組員はみんな家族のようなものです。任務は厳しいですし、自衛隊を語る上で階級という上下関係を抜きにすることはできませんが、乗組員はアットホームな雰囲気の中で任務に励んでいます」

続けて、彼らに艦での生活について話を聞くことにした。すると、やはり生命の危険にさらされた経験はあるようで、乗員のひとりは
「海が荒れた時は大型の護衛艦と違ってかなり揺れます。時化(シケ)の中での甲板作業中に高波にさらわれました。そのときは右舷にいたのですが、左舷の手すりにしがみついて命拾いしました。落水するようなことは滅多にありませんが、それでも怖い思いをしたことは何度かあります。甲板上の滑り止めなど海が荒れると気休めにもなりません」
とのエピソードを披露してくれた。

また、狭い艦内でどのように体力を維持しているかといえば、
「体力錬成の方法は人それぞれで、決まったメニューはありません。艦の空きスペースを見つけては、マットを敷いて柔軟体操や腕立て伏せなどの筋トレに励んだり、艦首から艦尾までをグルグルとマラソンするなど工夫しています。自衛官は身体が資本です。狭い艦でも運動不足にならないよう各自気をつけています」
と語る。

日々の生活の中での楽しみについて聞くと、やはり「食事」と返す乗組員が多かった。だが、潜水員のひとりはこのように回答して筆者を笑わせてくれた。
「それは外国を含めていろいろなところに行けることです。港々にはうまい酒とうまい肴があります。海の上では酒は飲めない。だから、それを何よりも楽しみに日々の任務に就いています。ここだけの話、艦艇勤務はお金を使う場所がないから貯金できると思っているでしょ? けど、実際のところ上陸時にパァ~と飲みに使っちゃうので、貯金のない隊員は結構多いんですよ。かく言う私もそのひとり(笑)」
『あわじ』の組員のひとりは「私たちに選択権はない」と答えた
政治は彼らの生命をけっして軽視しないでほしい
最後に乗組員のひとりに少し意地悪な質問をしてみた。保守系月刊誌『選択』4月号には、高市早苗首相はトランプ米大統領の要求を受けて掃海部隊のペルシャ湾派遣を検討したが、今井尚哉内閣官房参与が反対し、激しい対立や更迭劇があった……との記事が掲載され、世間を騒がせたことは、読者のみなさんもご存知のことだろう(高市首相は4月7日の参院予算委員会で記事を否定)。

この記事が仮に事実だったとして、掃海艦乗組員としては、日々の訓練の成果を発揮できずに残念に思うのか、それとも国際紛争の真っ只中に派遣されなくて良かったと思っているのか、と。この質問を受けた乗員は少し戸惑った表情を見せたあと、言葉少なめにこのように語ってくれた。

「私たちに選択権はありません。日本政府が行けというのならどこへでも行きます。それが私たちの仕事ですから。ただ、国際貢献任務として活動するのなら、できれば掃海に専念できる状況を望みたいですね。私個人の意見としてですが……」

生命の危険のない安全な場所で有事を語る政治家の言葉より、現場で身体を張って任務に就く人間の言葉は重みがある。そのように感じた瞬間であった。





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