深い感動と考察を促す傑作誕生

数々の名作恐怖小説で“ホラーの帝王”と呼ばれる巨匠スティーヴン・キングの新たな映画化作品『サンキュー、チャック』は、地球上の“すべての人生”を肯定する感動作です。『マイティ・ソー』や『アベンジャーズ』シリーズで活躍するトム・ヒドルストン を主演に迎え、アカデミー賞作品賞受賞作『それでも夜は明ける』で主演を務めたキウェテル・イジョフォー や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのカレン・ギラン、『ルーム』で数々の賞に輝いたジェイコブ・トレンブレイ、さらに『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカー役でお馴染みのマーク・ハミルなど、実力と人気を兼ね備えたスターキャスト陣の共演が実現しました。
物語の舞台となるのは、どうやら異常気象などで崩壊寸前らしい世界。しかし、絶望する人々の前に突如現れたのは「チャールズ・クランツ 素晴らしい39年間! ありがとう、チャック!」という大量の感謝広告でした。一体チャックとは誰? ありがとうの意味とは? やがてチャックの人生を遡り、すべての謎が解ける時、予想だにしなかった衝撃と感動が押し寄せます。

物語は3部構成を逆さまに進み、まず終わりゆく世界を映し出します。世界中で拡がる火災、枯渇する水、急増する自殺……。静かなパニック状況の中、高校教師マーティーが路上で出会った老人と歩く車道には、乗り捨てられた車による無人の渋滞が。そこに並んでいるのは2000年代以降のカローラやカムリなど、トヨタ車が目につきます。さらに同社のタコマ、日産のタイタンなど、北米市場向けのピックアップトラックのほか、新しいところではヒョンデのヴェニューやソナタの後ろ姿も。不気味なほどの静けさが逆にリアルな“終末”には、意外とクラシカルなアメ車よりも日本車がマッチするのかもしれません。
しかし、そうした車が大量に映り込むのは冒頭の第3部のみ。その後の2部と1部で描かれる物語は、チャックという人物の足跡を映し出すとともに、私たちの先入観をガツンと打ち砕きます。誰もが内包している、人生という宇宙――。キングが紡いだ物語を、どこかテレンス・マリック作品を彷彿とさせる美しさで見事に映像化してみせたマイケル・フラナガン監督に拍手を贈りたくなるはず。2度目の鑑賞ではあらゆるシーンが泣き所になり、涙が止まらないでしょう。