7台のみが存在したという超希少モデル!
知る人ぞ知る2.0Lターボ搭載車の真実!
R32型スカイラインのオーテックバージョンといえば、ツインターボユニットを外したRB26DEに4速ATを組み合わせた4ドアモデル。クルマ好きの間では、そう認識されている。NA化によって上質な走りを目指したグランドツアラーという位置付けだ。
ところが、R32オーテックバージョンには、実はRB20DET+4速ATというパワートレインを持つモデルも存在した。今回の取材車両が、まさにそれに該当する。
オーナーは、他にGC10やDR30前期型も所有する小林さん。R32オーテックバージョンを手に入れたのは、今から9年ほど前のことだ。

「18歳で免許を取って、初めての愛車がKGC10でした。エンジンを2.4Lに載せ換えて、外装は定番のR仕様。その頃から富士スピードウェイにはよく走りに行ってましたね」。
その後、DR30やBNR32を乗り継ぎ、一旦スカイラインから離れることに。ブランクを経て、R32オーテックバージョンで再びスカイラインに戻ってきたというわけだ。
生産台数は7台と言われており、この個体については、初代オーナーがオーテックジャパンの社員だった。小林さんは3オーナー目となるが、譲ってもらうために前オーナーを口説き落とすのは大変だったという。
「その時、他にトミーカイラもあったんですけど、狙っていたのはオーテックバージョンだけでした」と小林さんは振り返る。

専用ボディカラーとなるイエロイッシュグリーンパールメタリックや、3Dパターンコーティングが施されたフロントバンパーを含め、RB26DEを搭載するオーテックバージョンとの外装上の違いは皆無。つまり、見た目だけではRB20DET搭載モデルであることを判断できず、ボンネットを開けるまで、その素性が明らかになることはない。
確かに、R32オーテックバージョンとしては異端に思えるかもしれない。だが、思い返せば先代R31には、限定800台のグループAホモロゲーションモデル「GTS-R」が存在した。その抽選から惜しくも漏れたユーザーへの救済措置として、専用チューンのRB20DETを搭載したオーテックバージョンがラインアップされた経緯がある。
そうした背景を知ると、スカイラインをベースとするオーテックバージョンの正統な後継機は、2.6L・NAを搭載したモデルではなく、むしろ2.0Lターボを載せた“こちら”なのではないか……。そんな思いが込み上げてくる。
エンジンルームに収まるRB20DET。吸気効率の向上を狙い、エアクリーナーはARCスーパーインダクションボックスへと交換されている。カムカバーの色やサージタンク中央に備わるECCSプレートから、R31オーテックに搭載されたT25/T3タービン仕様とは異なると推測される。

16インチ6.5Jのアルミホイールは、HNR/HCR32純正と同じもの。スポーク部とリムの内側をボディ同色に仕上げることで、足元の印象を変えている。タイヤは標準サイズとなる205/55のポテンザRE-71Rを装着。サイドエンブレムもR32オーテックバージョン専用品だ。

ステアリングホイールには、オーテックジャパンのロゴ入りホーンボタンを採用。それ以外はメーターパネルを含め、HNR32と共通となる。そのためタコメーターは、RB26DE搭載のオーテックバージョンがBNR32と同じ1万1000rpmフルスケールなのに対し、こちらは9000rpmフルスケール。ミッションは4速ATを搭載する。

また、運転席はレカロSR-7 GK100へと交換。助手席はHNR32純正ながら、表皮にはエクセーヌとダブルラッセルを組み合わせたオーテックバージョン専用品が採用されている。

RB26DE搭載のオーテックバージョンには、トランクリッド右側に「SKYLINE 26」のエンブレムが備わるが、取材車両はエンブレムレス。そこが外装における唯一の相違点となる。
また、足回りはテイン車高調へと交換されているものの、大幅なローダウンは避け、ノーマル然とした車高をキープ。「マフラーは錆や腐食もないので純正のままです」と小林さん。
特別なモデルであることを声高に主張しない出で立ちと、希少性の高さから醸し出されるミステリアスな雰囲気。よほどのクルマ好きでさえも、一目でその正体を見抜くことは難しい、知られざる一台だ。
“もう一つ”のR32オーテックバージョンは、登場から30年以上が経った今もなお、独特の存在感を静かに放ち続けている。
