壮大なSFを現実世界につなぎとめる車たち

『E.T.』(1982年)や『A.I.』(2001年)など、半世紀以上にわたって数々の名作を生み出し、エンターテイメントの概念そのものを塗り替えてきたスピルバーグ監督。そんな彼が原点回帰とばかりに“地球外生命体”“宇宙の真実”に真正面から向き合ったのが最新作『ディスクロージャー・デイ』です。とはいえ本作は、ざっくりとあらすじを説明できるようなシロモノではありません。
ひとまず押さえておくべきは、ある機密情報を握るノア(コリン・ファース)と、彼に執拗に追われるデジタル識者ダニエル(ジョシュ・オコナー)、そして何らかの使命に突き動かされるお天気キャスターのマーガレット(エミリー・ブラント)、そして2人を誘導する謎の人物ヒューゴ(コールマン・ドミンゴ)の存在。この4人の関係性だけ念頭に置けば、無理やり話の筋を掴もうとしなくても問題ないでしょう。
もちろんスピルバーグが長年培ってきた“映画力”がスクリーンの隅々にまで充満し、あらゆるカット、シーンが完璧に計算されていますが、それらもすべてはクライマックスのため。そして、その壮大なSF物語が私たちの生きる現実世界と“地続き”であることをつなぎとめる存在として、よく見慣れた車たちが登場します。
コリン・ファース演じるノアに従う漆黒の車列は、2015年式のダッジ・チャージャーと2022年式のジープ・グランドチェロキー。さらに大人数での移動にはフレイトライナー・トラックスのビジネスクラス(2022年式)まで持ち出しますが、すべて黒塗りという“ザ・秘密組織”なブレない方針を強調します。

かたやマーガレットは華やかなTV業界で働く売れっ子キャスターらしく、2024年式の真っ赤なアルファ ロメオ・ジュリアが愛車。ある瞬間に“目覚めて”しまった彼女は、ドン引きする恋人を置き去りにしてまでアルファ ロメオで爆走し、すさまじいカーチェイスに巻き込まれます。
さらに終盤には、アメリカの救急車両でおなじみピアース・ランス(1995年式)が大活躍したり、キャデラック・ゲージ社の水陸両用軽装甲車コマンドウがチラリと映り込んだりと、スピルバーグの過去作を彷彿させる特殊大型車両の存在も見逃せません。
とにもかくにも、前半の我慢がクライマックスに向けてパンと弾ける、その瞬間のために劇場に行くべきと断言したい本作。巨匠らしからぬ単純なお話だと言う人もいるかもしれませんが、理由もわからず涙があふれる、その衝撃のさらに上をいく衝撃を、ぜひスクリーンで目撃してください。クライマックスのシーンには動悸が止まりませんよ!
