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スズキ・スペーシア/スペーシアカスタムは、初代が2013年にデビュー。とてもよくできたクルマではあったが、カスタムも含めクリーンなデザインでライバルに対し個性ではやや遅れをとった。そのことから、モデルライフ後半にはさらに押し出しの強いデザインのスペーシアカスタムZを追加した。
スペーシアは2017年に二代目へとフルモデルチェンジ。スタイルをより個性的にするべくトランクケースをモチーフにしたデザインを採用するほか、ユーティリティでもかゆいところに手が届く作り込みがなされ、カスタムも当初から押し出しの強いデザインとなった。
さらに、SUVテイストをまとったスペーシア・ギアや商用車的道具感を備えたスペーシア・ベースなども展開された。
そして、2023年11月に三代目にモデルチェンジしたわけだが、新型の詳細は別ページに譲るとして、ここでは早速この先代モデル(二代目)と新型とを比較してみよう。
エクステリア:スペーシア
先代では「トランクケース」をモチーフにしたというデザインは、さらなるユーティリティ性をイメージして「コンテナ」をモチーフにしているという。
そのため、新型は先代よりもボディサイドのリブ処理が増えているほか、ホイールアーチもスクエアなデザインになっているのがわかるだろう。
先代スペーシアはマイナーチェンジの際にフロントグリルをメッキの細長4本のデザインに変更されたが、新型では、むしろデビュー時に近いデザインになっている。
ヘッドライトは先代よりもやや横長になり、ウインカーを外側から内側にしているのも違い。バンパー中央の横棒もフローティングデザインから「日」の字になり、全体的に先代よりもスクエアな印象を受ける。
前述のとおりトランクからコンテナにモチーフが変わったことからリブ風のプレスラインが増え、ホイールハウスのプレスラインもスクエアに。もう一点大きな変化が、先代でトランクの把手をイメージしたドア上部のデザインがなくなった点だ。これもトランク→コンテナのモチーフ変化によるデザイン変更だ。
さらにリヤクォーターウインドウのピラーを先代のブラックアウトしたものからしっかりと見せるデザインとなり、先代のフローティングルーフ的な演出は継承されなかった。また、ウインドウの後端を跳ね上げることで躍動感のある雰囲気を出している。
また、ホイールキャップのデザインがスポークタイプに変化。ホイールとタイヤのサイズは155/65R14と変更はない。
リヤコンビランプは先代より大型化され位置を下げたのが大きな違い。先代ではリヤゲートハンドルにあったバックランプもコンビランプ内に組み込まれ、より洗練されたリヤビューとなった。
ドアハンドルの位置も下がり、リヤゲート下端の角がスクエアになったため、積載性も高まったのではないだろうか?
エクステリア:スペーシアカスタム
上質感と華やかさを掲げるスペーシアカスタムは、先代の大面積メッキグリルから水平基調のグリルとなり、先代の押し出し感に対して、確かに上質感が高まっているように感じられる。
二段の横長メッキグリルは上段がヘッドライトから連続しており、先代の縦長なフェイスに対し水平基調に改められている。先代では細かく敷き詰められたメッキの中に「S」のエンブレムが埋もれてしまっている印象だったが、新型ではしっかりと見えている。
また、先代では「コ」で囲まれたフォグランプは、新型では内向きの五角形になり、スポーティな印象だ。
サイドビューは先代、新型ともにスペーシアと変わるところはなく、その変化も共通している。撮影車両はボディ同色だが、新型スペーシアカスタムにももちろんツートーンルーフ仕様も設定されている。
ホイールは新デザインとなったが、15インチホイールと165/55R15のタイヤサイズに変更はなかった。
カスタムはリヤコンビランプがクリアである点は継承され、位置の変化やバックランプの内蔵はスペーシアと同様だ。コンビランプがクリアなせいか、リヤウインドウのラインがコンビランプと連続しており、フロントマスク同様の水平基調がリヤにも反映されている。
また、リヤバンパーのスポイラー形状がより顕著になり、スポーティな雰囲気になった。
インテリア
全体的にスクエアなデザインになり、センターディスプレイのベゼルが拡大したことでエアコンの操作パネルがシフトレバー左に移った。また先代の特徴であった円形のエアコン吹き出し口もスクエアな縦長のものに変わっている。
ステアリングとメーターのデザインも変更され、先代よりスポーティな雰囲気になっている。
スペーシアカスタムではダーク基調の内装になり上質感を演出するが、ドアトリムやダッシュボードに艶消しボルドーを配色することで、ダーク系一辺倒だった先代とはイメージを異にしている。
何より、先代のトランクモチーフのインパネアッパーボックスが無くなっているのが大きな変化と言えるだろう。
メーターナセルも先代の弧状デザインからインパネ同様スクエアになり、メーターもアナログからデジタルに変更された。そのため、先代のようにスペーシアとスペーシアカスタムでメーターの差別化はされていない。
シート
フロント、リヤ共にシート自体は特に変化していないように感じられるが、やはり最大の違いはリヤシートに設定される「マルチユースフラップ」だろう。この詳細については別ページを参照してほしい。
地味なアップデートではあるが、センターピラー内側に設置されている乗降グリップが拡大され、大人から子供まで使いやすくなっているほか、リヤシートには左右席独立のセンターアムレストを用意。さらなるくつろぎ空間へのこだわりを感じる。
スペーシアカスタムでは、シート色の変化がスペーシアよりも大きく、先代のブラック基調からやや明るい色調になり、レッドのパイピングが入るなど、モダンなデザインになっている。
他にもパーソナルテーブルと付随するドリンクホルダーの形状変更、上部にもシートバックポケットを追加するなど、リヤシートのユーティリティをかなり高めている。
また、形状に大きな変化は見られないが、スリムサーキュレーターの静粛性が向上しているのは嬉しいポイントだろう。くわえて、ルームランプがLEDになり、明るく低電力、長寿命になったほか、後席右側にUSB電源も用意している。
ラゲッジルーム
ラゲッジルームは後席格納時の床面が先代よりもフラットになり、それに伴い荷室高が拡大。大きな荷物を積みやすくなっている。
ドライブトレーン
エンジンは先代のR06A型から新型のR06D型に改められた。水冷直列3気筒DOHC12バルブという基本諸元はそのままながら圧縮比を高め(11.5→12.0)燃焼効率を向上させている。
ただしターボエンジンは先代同様R06A型を搭載する。
トランスミッションは全車CVTなのは変わらないが、軽量・高効率の新型CVTとマイルハイブリッドを組み合わせ、燃費は最大で30.4km/L(JC08モード)を実現。先代の30.0km/L(JC08モード)から0.4km/L向上している。
※先代はWLTCモード値が無いためJC08モード値で比較
型式 | R06D | R06A(先代) | R06Aターボ | R06Aターボ(先代) |
エンジン | 直列3気筒DOHC12バルブ | 直列3気筒DOHC12バルブ | 直列3気筒DOHC12バルブ インタークーラーターボ | 直列3気筒DOHC12バルブ インタークーラーターボ |
ボア×ストローク | 61.5×73.8mm | 64.0×68.2mm | 64.0×68.2mm | 64.0×68.2mm |
排気量 | 657cc | 658cc | 658cc | 658cc |
圧縮比 | 12.0 | 11.5 | 9.1 | 9.1 |
最大出力 | 49ps/6500rpm | 52ps/6500rpm | 64ps/6000rpm | 64ps/6000rpm |
最大トルク | 5.9kgm/5000rpm | 6.1kgm/4000rpm | 10.0kgm/3000rpm | 10.0kgm/3000rpm |
燃料 | 27L(レギュラー) | 27L(レギュラー) | 27L(レギュラー) | 27L(レギュラー) |
モーター | WA04C 直流同期電動機 | WA05C 直流同期電動機 | WA05C 直流同期電動機 | WA05C 直流同期電動機 |
最大出力 | 2.6ps/1500rpm | 3.1ps/1000rpm | 3.1ps/1000rpm | 3.1ps/1000rpm |
最大トルク | 4.1kgm/100rpm | 5.1kgm/100rpm | 5.1kgm/100rpm | 5.1kgm/100rpm |
トランスミッション | CVT | CVT | CVT | CVT |
主要諸元とグレード設定・価格
ボディサイズは軽自動車枠のスーパーハイトワゴンという制約上、デザインが変わってもそれほど大きな違いが出ることはない。スペーシアとスペーシアカスタムターボで新旧を比較してみよう。ドライブトレーンの比較については前述したとおりだ。
車名 | スペーシア | スペーシア (先代) | スペーシアカスタムターボ | スペーシアカスタムターボ (先代) |
全長 | 3395mm | 3395mm | 3395mm | 3395mm |
全幅 | 1475mm | 1475mm | 1475mm | 1475mm |
全高 | 1785mm | 1785mm | 1785mm | 1785mm |
ホイールベース | 2460mm | 2460mm | 2460mm | 2460mm |
室内長 | 2170mm | 2155mm | 2170mm | 2155mm |
室内幅 | 1345mm | 1345mm | 1345mm | 1345mm |
室内高 | 1415mm | 1410mm | 1415mm | 1410mm |
最低地上高 | 150mm | 150mm | 150mm | 150mm |
車両重量 | FF:850-880kg 4WD:910-930kg | FF:850-870kg 4WD:900-920kg | FF:910kg 4WD:960kg | FF:900kg 4WD:950kg |
フロントにマクファーソンストラット、リヤにトーションビーム(4WDはITLリンク)というサスペンション形式、フロントにディスク(4WDはベンチレーテッドディスク)、リヤにドラムというブレーキ形式は先代から踏襲。ホイールとタイヤサイズも同様だ。
また、グレード展開もスペーシアに「HYBRID X」と「HYBRID G」、スペーシアカスタムに「HYBRID XSターボ」「HYBRID XS」「HYBRID GS」という内容は先代と同じになっている。全車にFFと4WDが設定されるのも変わらない。
車名・グレード | 価格 | 価格(先代) |
スペーシア・HYBRID G(FF) | 153万100円 | 133万3800円 |
スペーシア・HYBRID G(4WD) | 165万6600円 | 145万4760円 |
スペーシア・HYBRID X(FF) | 170万5000円 | 146万8800円 |
スペーシア・HYBRID X(4WD) | 182万4900円 | 158万9760円 |
スペーシアカスタム・HYBRID GS(FF) | 180万1800円 | 157万6800円 |
スペーシアカスタム・HYBRID GS(4WD) | 192万5000円 | 169万7760円 |
スペーシアカスタム・HYBRID XS(FF) | 199万5400円 | 169万200円 |
スペーシアカスタム・HYBRID XS(4WD) | 211万5300円 | 181万1160円 |
スペーシアカスタム・HYBRID XSターボ(FF) | 207万3500円 | 178万7400円 |
スペーシアカスタム・HYBRID XSターボ(4WD) | 219万3400円 | 190万8360円 |
クルマの高機能化と物価の高騰から、2017年の先代モデル発表当時から概ね20万円の値上げとなっている。しかし、搭載される先進安全装備や快適装備を考えれば妥当な価格アップと言えるのではないだろうか。