実は「POWERED by HONDA」のコマツ電動ミニショベルカー
ご周知の通り、ジャパンモビリティショー2023には多くのEVが展示されていたが、フル電動化の波は一般ユース用よりも、むしろプロユース用の方が早い印象を受けた。おそらく、リチウムイオンバッテリーの容量の都合で、使用時間が長い一般ユース用よりも、限定された時間で使うプロユース用に適しているからだと思う。
先般ここでご紹介した日野「デュトロZ EV」もそうだが、我々が思うよりも急速にモビリティは電動化されているのである。それは、こんなカテゴリーにも。ホンダブースの片隅に、ひっそりと置かれていたのにも関わらず、乗り物好きが次々と見に来る展示車両があった。それは、コマツ「PC05E-1 電動マイクロショベル」だ。
2tトラックにも積めて、狭小な建築現場でも使える、まさに日本ならではの建機だ。「これ、ウチの庭で使いたいなぁ」と意味も無く思うメカ好きは少なくないと思う。
それにしても、コマツの建機がなぜホンダに置かれていたのだろうか。傍らにいた技術スタッフに聞いてみると、なんとこの中に入っているモーターなどの電動システムはホンダ製なのだという。つまり、“POWERED by HONDA”なのである。
コマツから小型の建機に限って、フル電動システムの開発を依頼されているそうで、すでに「PC01E-1」というレンタル専用機があるという。このPC05E-1は2023年10月に発売されたばかりで、まさにモビリティショーが一般人のお披露目の場だったわけである。
こんなものまでBEVなのか…と驚くが、建機ほど電動と相性がいいモビリティはないのだという。まず、これまでのショベルカーはディーゼルエンジンで動いたわけだが、モーターになれば当然音は静かだし、振動が抑えられる。住宅密集地で使っても、以前ほど騒音を立てないというわけだ。それに乗員の疲労もグッと抑えられる。
さらになるほどと思うのは、ショベルの部分を動かすのは油圧だが、それを発生させるのはエンジンだった。ところがエンジンの場合、油圧を発生させるまでどうしてもタイムラグが出てしまっていた。一方、モーターは回転直後に最大トルクとなるため、油圧を発生させやすい。よって、掘るという作業の中で有効なトルクを使いやすいのだという。
つまり、電動化によっていいことづくめだということだ。しかし、気になるのはバッテリーの持続時間。聞いたら、フル充電でスペック上は60分だという。それを聞いてため息が出たのだが、「いやいや、一般的に作業時間は30〜40分程度ですから」と技術スタッフ。
なるほど、それなら実用的なバッテリー容量と言える。だが、作業は長引いて、バッテリーエンプティになった場合はトホホなのではないか。無論、そんなことは十分に考えられていた。この建機のバッテリーは、ホンダが規格化しているカートリッジ式のものが2個入っており、予備を携行しておけば、すぐに作業を再開できるわけである。
将来的にはこのバッテリー規格を様々な分野に展開する予定とのことで、まるでマキタの電動の工具のように、バッテリーを使い回しできるのもそう遠くない未来のようだ。
ちなみにお値段は300万円ほどだというから、クルマと大差ない。見に来ていた男性が、“ローンは利くのかな?”と聞くほど、男心をくすぐるマシンであることは間違いない。