憧れの高級車は安くても2500万円から。ベントレーが高額になる納得の理由とは?

イギリスを代表する高級車ブランド「ベントレー」は誰もが憧れる高級車だが、車両価格は一番安いもので2500万円超からとなっている。一般的な大衆車の何倍もする価格の理由はどこにあるのだろうか?

価格の理由は、比類なきクラフトマンシップを追求した結果だった

もっともリーズナブルなベンテイガでも2500万円を超えるプライスとなっている。

1919年にウォルター・オーウェン・ベントレーがイギリス・ロンドンで設立した「ベントレー」は100年以上の歴史を誇るイギリスを代表する高級車ブランドだ。長い歴史を誇るブランドだけあってか、お値段も高級な価格に設定されている。

日本で販売されているベントレーのラインナップを見てみると、下記の価格となっている(1万円未満切り捨て)。もっとも安いベンテイガでも2500万円を超え、最高値のモデルでは4472万円となっている。庶民には手の届かいない価格だ…。

・コンチネンタルGT:3005万円〜4106万円
・コンチネンタルGTC:3292万円〜4472万円
・フライングスパー:2598万円〜4177万円
・ベンテイガ:2505万円〜4006万円

フライングスパー・ハイブリッドは、2.9LのV6ツインターボとモーターを組み合わせ、最大出力544PS/最大トルク750Nmを発生する。

では、なぜベントレーがこれほど高額な車両価格になるのだろうか?
その答えは、厳選した素材を使い、熟練の職人が手作りで製造しているからだという。

ベントレーは、イングランド北西部のクルーにあるファクトリーで、何千人もの熟練した職人が手作業で車を製造している。ウッド、刺繍、レザーからエクステリアを彩るペイントに至るまで、ベントレーの職人たちは細心の注意を払い、比類のない職人技で作業を行なっているとうことが価格に反映されているようだ。

コンチネンタルGTC アズールは、4.0LのV8ツインターボを搭載し最高出力は550PS。0-100kmまでの加速は約4.1秒。

ベンテイガには牛14頭分の高級レザーが使用される。

ベントレーのレザーとして使用される牛革は、牛の皮に傷が付かないよう厳格な管理により生産される。レザーの傷の主な原因は、牛が虫に刺されることによるものなので、その虫が発生しにくい北ヨーロッパの高地で放牧された牛を使用している。もちろん、大きな傷の原因となる有刺鉄線などもない広々とした牧場だ。そうして飼育された最高級のレザーがインテリアに使用されるのだという。また、ベントレーは革の生産工程で使用する化学薬品の安全性や排水処理、エネルギー使用などの環境対策を審査する「レザーワーキンググループ(LWG)」に加盟するなど、革を製造する過程での環境負荷を極力減らすことで、持続可能な社会に向けての取り組みを積極的に行なっている。

厳格に管理されたレザーは、傷や虫刺されによる欠陥がほとんどない。

そうした最高品質のレザーを、ベンテイガを一台製作するにはおよそ牛14頭分使用する。フライングスパーは13頭分、コンチネンタルGTはクーペかコンバーチブルかにより異なるが、およそ10から11頭分が必要となる。一台分のレザーをカット、ステッチ、トリムするのにおよそ26時間掛かるという。

シートや内装の革製装飾品は、ステッチから仕上げまですべて手作業で行われ、最高級の家具や高級バックに匹敵する品質を誇る。

ステッチと刺繍のクオリティもラグジュアリーなインテリアを仕上げるのに不可欠な要素だ。例えば、ステアリングホイールは複雑な形状をしており、それを包み込むレザーは機械ではきれいに縫うことがでないため、手作業で縫われていく。ステアリングホイール部分だけで、ステッチの作業に5時間掛かり、10メートルの糸を使い、620針のステッチを施す。そうして車両1台分のステッチを縫い上げるのに約136時間も掛かるという。

最高級の家具や高級ブランドのバッグと同じような最高品質のレザーを内装全体の広い面積に張り巡らせていると考えると、ベントレーが高価な理由も納得できるのではないだろうか?

ステアリングホイールなど複雑な作業が必要な部分も手作業で縫い上げていく。

左右対称「ミラーマッチング」の木目パネルは職人技

レザー以外にも、ベントレーのインテリアの特徴のひとつとして、キャビンをまるで大きなリングのように囲むウッドパネルが挙げられる。木材のエキスパートが世界中から調達した天然木のウッドパネルには、木目が左右で同じになる「ミラーマッチング」と呼ばれる手法が用いられていて、一本の木の同じ部分から切り出したの0.6mmのウッドのシートを繋ぎ合わせることで、一続きの木目模様となるように仕上げている。

ウッドパネルの材料は、世界中から集めた天然木を0.6mmの厚さにスライスしたもの。

そのようにして、インテリアでは手縫いのレザーとハンドクラフトで仕上げられたウッドパネルが精巧なデザインと融合する。レザーカラーやキャビンを囲むパネルから、ペダルやカーペットといった目立たない部分に至るまで、ほぼすべての部分を好みどおりに仕上げることが可能となっているのもベントレーの魅力のひとつだ。ほとんどの購入者が約500万円ほどのオプションやオーダーメイドを施すというから驚きだ。

木目が左右対称になるように貼り合わせる「ミラーマッチング」により、継ぎ目のないウッドパネルに仕上げていく。

エクルテリアのスピード感を強調する陰影の強いプレスラインは、アルミパネルを500℃にまで加熱して空気圧によって成形するスーパーフォーミング製法が使われている。こうして成形されたボディパネルは、ほとんど継ぎ目のない彫刻のように鋭く滑らかなボディ表面を実現する。そこにハイパワーのV8やW12といったエンジンを搭載することで、大衆車とは一線を画す唯一無二の存在となっている。

スーパーフォーミング製法によって成形されたボディは彫刻のように鋭いラインを描く。

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著者プロフィール

土屋直軌 近影

土屋直軌

1982年生まれ、静岡県出身。都内の美術大学を卒業後、なんとなくモータースポーツ関連のイベント制作会社…