111万2000人の意味を考える。ジャパンモビリティショー2023は成功だったのか?

「ジャパンモビリティショー」は、東京モーターショーから名称を変えて10月28日(土)~11月5日(日)の会期で開催された。会期中の入場者は111万2000人で、100万人を大きく超えた。初開催(東京モーターショーから数えると47回目)のジャパンモビリティショーを総括する。

先進国のモーターショーはオワコンなのか?

モーターショーの地盤沈下が言われるなか、東京モーターショーは、「ジャパンモビリティショー」へとコンセプトを変えて開催された。

かつて東京、デトロイト、フランクフルトが世界三大モーターショーと言われた時期も長くあった。我々、メディアもモーターショーの年間スケジュールを頭にいれて動いていたものだ。オールドフォーマットで言えば

毎年1月:デトロイト(NAIAS)
毎年3月:ジュネーブ
交互開催春:北京/上海
交互開催秋:フランクフルト(IAA)/パリ
隔年開催(フランクフルトと同じ年)秋:東京
という流れだ。

このなかで、往時の勢いを保っているのは、北京/上海のみ、といっていい。東京モーターショーも2017年開催の第45回は、入場者数77万1200人まで落ち込んでしまった。会期が10日間だったから、7万7120人/日平均ということになる。

前回(2019年)は、東京ビッグサイト+サテライト会場や無料エリアなどの工夫をこらして130万0900人の入場者数を記録した。会期12日間だったから約10万8400人/日平均だ。

今回は、会期11日間で111万2000人だから、約10万1100人/日だ。サテライト会場も無料エリアもなく東京ビッグサイト全館を使っての111万2000人はいわば”真水”の数字。これは相当立派なリザルトだと言っていい。

最終日にマツコ・デラックスさんと豊田章男自動車工業会会長によるトークショーで示された数字には
日当たりの来場者のレベル感として

2019年東京モーターショー:9万人
2023年上海モーターショー:9万人
2020年東京オートサロン:11万人(モリゾウがいた)
2005年愛・地球博:12万人
同じ会場で2日間開催のコミックマーケット:13万人だという。

ちなみに、今年の上海モーターショーは会期10日間で90万6000人の入場者だった(9万0600人/日)。し

最終日に開催された豊田章男会長(ジャパンモビリティショーの主催者・日本自動車工業会の会長)とマツコ・デラックスさんのトークショーは、多くの観客を集めた。

数字がすべてではないが、数字はウソをつかない。多くの人を惹きつけたということで、まずはジャパンモビリティショーの第一回は大成功だったと言える。無論、出展者が増えたことで、関係者も増えたということはあろうが、SNS全盛時代、面白くなかったら、即座に観客動員は難しくなるのだから、多くの人が”面白い”と感じた証である。

数字をもう少し並べると

  • Tokyo Future Tour(主催者プログラム):約50万人来場
  • Startup Future Factory/Pitch Contest & Award(スタートアップ企業116社参加)結果
    グランプリ:株式会社NearMe(未来の感動部門)1000万円獲得
    準グランプリ:Global Mobility Service 株式会社(未来の暮らし部門)100万円獲得
    Zip Infrastructure 株式会社(未来の社会基盤部門)100万円獲得
    ブース出展やビジネスマッチングを経た商談の継続数430件以上
  • Japan Future Session参加者/視聴者人数42,000人以上
  • 子供向け商業体験型施設「Out of KidZania in Japan Mobility Show 2023」参加者数13,000人以上
  • 公式アプリ「推しモビ図鑑」16万ダウンロード

となっている。

モビリティショーの新しいトライは?

モーターショーからモビリティショーへ。出展企業は過去最高の470社を数えた。Tokyo Future TourからStartup Future Factoryの流れは、非常に面白かったし、新しさも感じた。ここにこそ、今回のジャパンモビリティショー2023のエッセンスが凝縮していたと言える。

参加者の声をいくつか取り上げてみると

「普段は出合えないお客さまに見てもらえた」
「モビリティ業界に留まらず、一般のお客様からも大変好意的。出展した意義があった」
「同業だけではなく、女性、家族連れ、高齢の方からの反応が非常に高く、今まで接点のなかったお客様のご意見もたくさんいただけた」
「想定よりも女性が多く、他とは大きく異なった」
「新しい見せ方ができた:
「ショート通して”どのように使うのか”をご理解いただき、面白い、わかり易いと言って頂けた」
「モビリティやその周辺製品に特化した万博のよう」
「未来の生活を感じてもらう、オールインダストリーの大きなパビリオン」

出展者にも好評だったようだ。

ホンダブースには、ホンダジェットの1/1モックアップが展示されて人気を集めていた。

逆に言えば、東ホールの自動車メーカーブース、西ホール4階の部品ホールは、「モビリティショー」を意識するあまり、”迷い”が見てとれたようにも思う。モーターショーからモビリティショーへ変わったことで、「現在の自動車に関することは展示してはいけないのでは?」という思いがあったのではないだろうか?

モーターショーの魅力は、自動車の「現在(場合によっては過去)・近い未来・ちょっと遠い未来」を目の当たりにさせてくれることだと思う。多くの来場者は、「次に買うクルマ、次に乗れるモビリティショー」を吟味しにきていたはず。そこは今回は少し薄味だった気がする。一般公開日のトヨタ新型センチュリー、クラウンセダンなどに多くの観客が集まっていた理由も考える必要があると思う。

「モーターショーの華」であるコンセプトカーを日本メーカーが数多く出展したのは、入場者の関心を惹いていた。

海外のモーターショー(とくに中国や新興国)が高い熱量なのは、「実際にクルマを買いに来ている」からだ。その場で買える場合もあれば、すぐに買えるクルマが展示してあるから、自ずと視線が熱を帯びる。

ジャパンモビリティショーはそこが上品に過ぎる……とまでは言い過ぎだが、来場者の欲望を刺激するSOMETHINGがほしかった。

海外メーカーの参加はBMW、メルセデス・ベンツ、BYDの3社だった。

海外メーカーの参加が少なかった(BMW、メルセデス・ベンツ、BYD)のは、残念だったが、実際にその場で買える(中国のショーのように)場を作れば、当然参加も増えるはず。

豊田会長も長田実行委員長も言及していたが、「ダボス会議のような存在」にしていけば、別の意味で海外メーカーも巻き込めるようになりそうだ。自動車メーカー、サプライヤー、政府関係者などのトップが交流する場をジャパンモビリティショーのなかに作っていければ、もっと魅力的なショーに成長できると思う。

ジャパンモビリティショー2023は、ポストコロナの最初のビッグイベントだった。その割には、海外からの観客が少なかったように感じた。ここはデータがあるわけではないので、筆者個人の感想となってしまうが、1月の東京オートサロンの方が海外からの来場者が多かったように思う。ここにも成長の余地があるのではないか?

その意味でも視聴者数4万2000人以上を集めたJapan Future Sessionは、面白い試みだった。場所や告知方法、プログラムの組み立て方など、今回の経験を活かせば次はもっと面白いセッションが期待できると思う。

少し残念だったのは、H2 Energy Festivalだった。もちろんすべてのプログラムを観覧したわけではないが、どこで(南ホール1F)行なわれているのかもわかりにくかったし、ステージもやや貧弱だった。ステージのエネルギーを水素に求めるという試みは素晴らしいけれど、好きなアーティストのライブを見に来る人にとっては、ステージや音質、迫力の方が価値が高い。ここは、要改善ポイントだと感じた。

導線については、ジャパンモビリティショーに、というよりも東京ビッグサイトの構造上の欠点だと思う。東西南ホール全部を使ってのイベントをそもそも想定して作られていない(ですよね?)から、東から西・南へのアクセスは入場者に苦痛を強いる。また、「モビリティショー」を標榜するなら、入場やコンテンツへのアクセスで「渋滞」するのを、新しいテクノロジーが軽減してほしかった。スマホアプリの「推しモビ図鑑」のアップデートにも期待したい。そもそも、「ジャパンモビリティショー」のアプリが「推しモビ図鑑」というのがわかりにくい。

ちょっと苦言も呈してしまったが、初めてのジャパンモビリティショー2023、とても面白かった。筆者はプレスデーも含めて5日間通ったが、それでも見切れないコンテンツの豊富さ、面白さがあった。東京、北京、上海、デトロイト、パリ、フランクフルト、ジュネーブ、バーミンガム、メルボルン、CES、長春などなど、さまざまなモーターショーの取材をしてきたが、今回のジャパンモビリティショー2023は、「次」が楽しみなショーになっていたと思う。

経済成長を遂げている中国や新興国のモーターショーのように、「クルマが欲しい」「もっといいクルマが買いたい」という欲望を満たすショーと違って、経済成長が一定のレベルに達し、モータリゼーションが成熟した社会で、どんな「ショー」が受け入れられ、価値があるのか? 今回、主催者は熟考し、トライした。それは、それだけの価値があったと思う。

我々自動車を報じるメディアも、ジャパンモビリティショーをどう扱うか、どう伝えるか、次回に向けて検証する必要があると思っています。

隔年開催ではなく、毎年開催の必要性についても、「モビリティショーのどの部分が1年で更新すべき内容なのか」「どうやったら成立するか」などを、自動車業界(我々メディアも含めて、だ)で考えていきたい。

再び、参加したスタートアップ企業の感想を取り上げる。

「モビリティ業界の仲間になれたと感じられた」
「異業種連携の可能性を大きく感じられた」
「さまざまな技術をはいけんできて、非常に良い刺激を受けた」
「打ち合わせの依頼が複数きた」
「海外を含め別のイベントへの出展依頼があった」
「他メーカーから今後の前向きな提案を頂いた」
「一緒になにかできないか、という声をもらった」

第一回ジャパンモビリティショーは、成功裏に幕を閉じたが、その真価がわかるのは、もしかしたら今回から参加した”モビリティ業界の新しい仲間”がある種の化学反応を起こしてなにかを生み出したとき、なのかもしれない。

ともあれ、自動車もモビリティも巨大なショーも、オワコンではないことがわかって、心からうれしかった。

西館には壁一面にイラストが描かれたコーナーが設けられた。これは来場者にどんな未来を感じたかを文章で書き、それをイラストレーターがイラスト化するといったちょっと変わった企画だ。とても興味深いので、すべのイラストが見えるサイズに分割して掲載する。拡大して見てください。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…