レプリカじゃない! 本物のニューヨーク市警パトカーがお台場に!? アメ車の祭典『スーパーアメリカンフェスティバル』で見たスゴいクルマ vol.3

前回に引き続き、2023年10月22日(日)、ダイバーシティ前にあるお台場ウルトラパークにて開催された『Super American Festival at お台場』のエントリー車両の中から中から今回はフォード・ポリスインターセプターとマーキュリー・ボブキャット・ランナバウト、1962年型リンカーン・コンチネンタル・セダンを紹介しよう。
REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

一気に見せます! お台場で開催されたアメ車の祭典『スーパーアメリカンフェスティバル』!! 250台以上の展示車両の中には激レアモデルも!?

アメリカ車ファンの祭典『Super American Festival at お台場』がダイバーシティ前にあるお台場ウルトラパークで開催された。記念すべき30回目を数えた今回のイベントには、1920年代~最新モデルまで、さまざまな年代・車種・仕様のアメリカ車が集まった。カーショーだけでなく、ライブステージ、スワップミートと楽しみ方はさまざま。今回はエントリー車の中から注目すべきマシンを数台ピックアップしつつ、イベントリポートをお送りする。 REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

フォード最後のセダン型パトカー? ポリスインターセプター・セダン

一見すると2010~19年にかけて生産された六代目フォード・トーラスに見えるが、パトカー仕様からも分かる通り、法執行機関向けに製造されたポリスインターセプター・セダンだ。もちろんホンモノだ。展示車両はNYPD (ニューヨーク市警)仕様になっていた。

フォード・ポリスインターセプター・セダンのフロントビュー。トーラスベースということで前任のクラウン・ヴィクトリアよりもボディサイズはひと廻り以上小さい。

シボレー・カプリスの生産終了後、アメリカやカナダ、メキシコの警察では、唯一残されたV8ユニットを搭載したFRのフルサイズセダンのフォード・クラウン・ヴィクトリア・インターセプターをパトカーとして広く採用していたが、こちらも2011年に生産を終了。後継としてフォードが用意したのが、エクスプローラーから派生したインターセプター・ユーティリティと、今回のアメフェス に参加していたポリスインターセプター・セダンだった。

フォード・ポリスインターセプター・セダンのリアビュー。アンテナやスポットランプなど各種警察用装備を備える。ホイールはもちろんスチールだ。

同車は六代目トーラスと基本的なメカニズムを共通するが、標準仕様の最高出力288hpの3.5L V型6気筒DOHCのほかに、警察車両だけのオプションとしてマスタングにも採用された305hpを発揮する3.7L V型6気筒DOHC Ti-VCT FFVが用意された。また、のちになってダウンサイジングターボの2.0L直列4気筒DOHCエコブーストも追加されている。
組み合わされるトランスミッションは全車6速ATとなる。パワートレインはベース車がFFであったのに対し、同車は標準仕様で4WDとなる。なお、3.5Lエンジンのみエコノミー仕様としてFFを選ぶことができた。

空力を意識したパトランプ。裏側にはLED電光掲示板が備わる。

ポリスインターセプター・セダンは北米の警察車両らしく、回転灯やプッシュバー、助手席スポットライト、無線機、モバイルパソコンなどの装備が追加されている。前席と後席の間はパーテーションで区切られており、後部ドアをロックすれば内側から開けることができなくなる。

無線機やモバイル端末などが備わるフォード・ポリスインターセプター・セダンの運転席まわり。各種機器が並ぶため大柄なボディに反して居住空間はやや手狭か。

オーナーに話を聞くと、警察から払い下げられた車両を並行輸入したとのこと。日本でもアメリカンポリスのファンは多く、クラウンビクトリアやカプリス、CHP (カリフォルニア・ハイウェー・ポリス)仕様のマスタング などをイベントで見かけることはあるが、ポリスインターセプター・セダンは大変珍しい。日本国内ではまずお目にかかれない車両だ。

フォード・ポリスインターセプター・セダンの後部座席。犯罪の被疑者が乗ることを想定して頑強なパーテーションが備わる。

なお、フォードはセダン市場からの撤退を発表しており、同車も2020年をもって生産を終了している。今後は本国アメリカでもセダン型パトカーを見る機会は減って行くことだろう。

フォード・ポリスインターセプター・セダンのエンジンルーム 。標準仕様の3.5L横置きV型6気筒DOHCのほか、警察車両用に3.7L横置きV型6気筒DOHC Ti-VCT FFVが設定された。多くのパトカーは後者を積む。駆動方式はFFから4WDへと変更されている。

よくぞ生き残っていてくれた! 1970年代マーキュリーのサブコンパクトカー

マーキュリー・ボブキャットは1971年に登場したフォードのサブコンパクトカーで、燃料タンクの不適切な配置により追突されると火災を起こす欠陥車騒動(フォード・ピント事件)を起こしたピントの姉妹車だ。

マーキュリー・ボブキャット・ランナバウトのフロントビュー。ピントベースだが中級車デビジョンのマーキュリーブランドで販売された。

ピントとの違いはマーキュリーで販売するため、押し出し感のある立派なフロントグリルを備え、メッキ加飾の5マイルバンパー(のちにピントも同じバンパーを採用する)を備えたたことくらいで、内外装はほぼピントに準じている。

マーキュリー・ボブキャット・ランナバウトのリアビュー。コンビランプが大型化された以外はリアはほぼピントのまま。

アメフェスに参加していたボブキャットは、ランナバウトと呼ばれる3ドアハッチバックだ。同車にはほかにビレジャーと呼ばれる3ドアステーションワゴンがあった。年式はおそらくは1975年型で、丸目ライトを採用した前期型(1979年に角目ライトを持つ後期型にMCする)である。

ホイールは4穴タイプの13インチを採用。この車両は185/80R13サイズのタイヤを履かせていたが、工場出荷時には165/80R13サイズだった。車格を考えるとノーマル車の足まわりはやや貧弱な印象。

パワートレインは標準で83hpを発揮する2.3L直列4気筒OHVで、オプションとして93hpを発揮する2.8L V型6気筒OHVも用意されたが、プラットフォームを共通するマスタングIIに追加設定された5.0L V型8気筒OHVは最後まで設定されることはなかった(アメリカでは好事家が心臓部をV8にスワップした車両が珍しくない)。なお、組み合わせるトランスミッションは3速ATとなる。

インパネのデザインはピントと共通。姉妹車のマスタングIIとは異称が異なるものの操作系はほぼ共通。だが、ピント/ボブキャットには標準でタコメーターが備わらない。

1970年代のフォード製サブコンパクトカーの中でも、ピントやマスタングIIはアメ車のミーティングで時折見かけるが、ボブキャットは滅多にお目にかかれず本当に珍しい。しかもコンディションは新車と見紛うばかりだ。

シートは表皮を除いてピントと共通。ドアトリムも同じようだ。

1970年代当時、マスタングIIは近鉄モータースやニューエンパイヤモータース、HISCO (ホンダインターナショナル)などの手により、ある程度まとまった数が販売されたが、ボブキャットは数えるほどしか日本市場に入ってこなかった。生産終了後に並行輸入されるようなクルマでもないため、おそらくは正規輸入車の生き残りなのだろう。想像通りならエンジンはV6となるはずだ。マイナーだが、極めて珍しい車種のために紹介した。

威風堂々! 四代目々リンカーン ・コンチネンタルは……
ちょうど60年前のJFK暗殺事件の影の主役

『アメ車ワールド』の田中編集長とアワードの有力候補として、ダッジ ・チャレンジャー・SRT-8コンバーチブルと、最後までどちらを選ぶか悩んだのが写真の1962年型リンカーン・コンチネンタルだ。年式を考えればノンレストアとは考えにくく、インテリアには手が入っていたので、おそらくは丁寧な仕事で仕上げられたのだろう。

1962年型リンカーン・コンチネンタル・セダンのフロントビュー。1961~63年までのフェイスはグリルの意匠がわずかに異なる以外はほぼ同じ。1960年代以前はモデルイヤー制により毎年ガラリとスタイリングが異なっていたが、この頃からアメ車は徐々に複数年を通じて同じスタイリングを採るようになる(それでも細部は変更されていたが)。

コンディションは素晴らしく、塗装は新車同様で、メッキには曇りひとつない。バランス良くローダウンされた足まわりには、大径ホイール(20インチくらいか?)が組み合わされている。インテリアはタバコ色のレザーで張り替えられ、オリジナルのデザインを崩さないようにレトロデザインの新型オーディオレシーバーがインストールされていた。

1962年型リンカーン・コンチネンタル・セダンのリアビュー。1950年代には巨大化の一途を辿っていたアメ車のテールフィンも、1960年を境に徐々に小型化して行く。

1962年型リンカーン・コンチネンタルは、シリーズ四代目として1961年に登場した。リンカーンはこのモデルでコンチネンタルにラインナップが集約されている。

1962年型リンカーン・コンチネンタル・セダンのインパネ回り。オリジナルのデザインを損なうことなくレストアされ、内装は張り替えられ、新しいオーディオレシーバーが取り付けられていた。

伸びやかなスタイリングは、欧州向けのフォード・アングリア(映画『ハリーポッター』に登場した空飛ぶクルマ)を手掛け、のちにクライスラーに移籍して活躍するエルウッド・エンゲルによるもの。1964年にフェイスリフトを行うまでの各年式の外観上の差異は、グリルの意匠が異なる程度である(最終的に1969年まで製造された)。

リアドアはスーサイドドアとなるため、前後のドアを開けると観音開きとなる。セダンだけでなくコンバーチブルも4ドアとなるため、開き方はクーペを除いて共通だ。

ボディバリエーションは写真の4ドアセダンの他に、4ドアコンバーチブルと2ドアクーペが存在した。
1963年11月22日のケネディ暗殺事件で、大統領夫妻が乗っていたのもこのリンカーンで、大統領専用車として納入された1961年型リンカーン・コンチネンタル・コンバーチブル・リムジンで、「バブルトップ」と呼ばれる取り外し式のガラス製ハードトップが用意していたが、事件時にはオープン状態で使用されていた。なお、この事件以降、大統領専用車にコンバーチブルが採用されることはなくなった。

フォードミュージアムに展示される大統領専用車のストレッチリムジン。

同車はサンダーバード用に開発されたユニボディを延長したプラットフォームを使用し、7.0L V型8気筒OHVマローダーユニットを搭載し、最高出力は300hpを発揮した。組み合わされるトランスミッションは3速ATターボドライブとなる。

1963年11月22日のケネディ暗殺事件で、大統領夫妻が乗っていたリンカーン・コンチネンタル・コンバーチブル・リムジン。事件直前に撮影された写真で、コンバーチブルをベースにストレッチされ、3列シートに改装されたことがよくわかる。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…