ストリートのベスト”BMW M”「BMW M2 クーペ」【最新スポーツカー 車種別解説 BMW M2 COUPÉ】

2023年2月に2代目がデビューした「BMW M2 クーペ」。2016年に誕生し注目を集めた初代以上の期待がかけられた2代目はひと回り大きくなったボディと迫力の増したデザインが目を引く。しかしそのパフォーマンスはコンパクトなフォルムから受けるインパクト以上。先代から90psアップしたパワーはクラス上位のM4と同様のエンジンを搭載し、車重はM4より100kg程軽いことからも能力の高さは想像を超える。インテリアは最新世代に仕立てられ、実用的な使い勝手にレーシーなムードも両立させる「M2 クーペ」の価値は高い。
REPORT:石井昌道(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:平野 陽

インテリアは最新世代のBMWらしい仕立てに一新

BMWでも特にドライバーズカーとしての資質が高いMモデルにあって、最も身近でコンパクトな末弟がM2だ。近年のMモデルはパフォーマンスアップが著しく、M3やM4などでもストリートで楽しむにはややトゥーマッチなところがある。そう思う向きに強く支持されているのもM2の特徴だろう。

エクステリア

クーペらしい流麗なルーフと直線基調のディテールを融合させた個性的なデザインが目を惹く。リヤフェンダーまわりに厚みがあり、ワイド&ローを強調。真性Mモデルであることを証明する4本出しマフラーも見どころ。
M3、M4譲りの「S58B30A」型3.0ℓ直列6気筒は、最高出力460㎰/6250rpm、最大トルク550Nm/2650-5870rpmという強心臓ぶりを誇り、先代から50㎰も向上している。典型的な高出力型、高回転型ユニットでありながら、ツインターボなどにより常用域で強大な
トルクを発揮する。
前275/35R19、後285/30R20のミシュラン「パイロット・スポーツ4S」を履く。写真はオプションのツートーンカラータイプ。大径ブレーキディスクと「6ポッドMコンパウンドブレーキ」を標準装備。
日常使いから数泊の旅まで実用になる広さを確保する。通常時の奥行きは960㎜、後席背もたれを前倒しすると1.6mくらいまでの長尺物も積載可能。開口部下側から床面までは、約150 ㎜の深さがある。

初代は2016年に登場。M3よりむしろ02ターボやE30型M3の直系に感じると話題になり、初のモデルチェンジで2代目となった新型にも大いに期待が掛けられていた。ボディサイズはひと回り大きくなり、全長は114㎜長く、全幅は30㎜広がった。ブリスターフェンダーの迫力は凄まじく、ベースの2シリーズクーペと比べると60㎜も広い。車両重量は150㎏ほど重くなったが、エンジンの最高出力は先代の370㎰から460㎰へと大幅にアップされているのでパフォーマンスに不満があろうはずがない。

インテリア

「M レーストラックパッケージ」を選択すると、ブラックと金属調アクセントにカーボン加飾が加わる。メーターとの連続性のある14.9インチディスプレイやAI音声会話システムなどの最新コネクティビティも完備する。
12.3インチのパネルは、走行モードやルート情報など中央部の表示が切り替え可能。
Tのシフトフィールは硬質で、先代よりも剛性感が増している。
ただ3ペダルともに右側にオフセットしていて、斜め座りのような姿勢になる。

M4とほぼ同様のエンジンをコンパクトなボディにぶち込んでいるのだ。トランスミッションはお馴染みの8速ATだけではなく、6速MTを用意しているのがM2ならではだ。インテリアの仕立ては他のMモデルに準じたもの。最新世代のBMWらしくカーブドディスプレイなどが奢られ、先代のプリミティブな雰囲気とは一線を画している。MレーストラックパッケージをチョイスするとMカーボン・バケットシーなど、よりレーシーな装いとなる。

とてつもない剛性感で460PSを受け止める

FRで460㎰ものエンジンを搭載しているだけあって加速はさすがに鋭く、右足を踏み抜くには覚悟がいる。8速ATならばイージーに、6速MTではあっという間に吹き上がるエンジン回転に合わせて忙しい思いをしながらハイスピード領域へ。最初は緊張しながらドライビングしていたが、気付けば信頼のおけるシャシーのおかげで安心感に包まれていた。とてつもない剛性感があってハイパワーに負けていないのだ。ボディがしっかりしており、路面の凹凸による入力もどっしりと受け止める。サスペンションは引き締まってはいるものの、短いストロークのなかにしなやかさがあって乗り心地は決して粗くはない。前19インチ/後20インチのタイヤを履くが、大きく重いという感覚がないことも、シャシー性能の余裕をうかがわせる。

うれしい装備

EFFICIENT」や「SPORT」、「SPORT PLUS」からエンジン特性をボタン一発で呼び出せる。
パワートレインやサスペンション、ステアリングなどの特性を好みに応じて選択可能。 
iDriveコントローラーは、ナビやオーディオ、電話、車両設定などを手元
操作できる。 
センターコンソールボックス内にワイヤレスチャージング付きのスマホホルダーを用意。

ハンドリングは従来よりも底上げされた印象。フロントまわりの剛性感がひと際高く、トレッドも広がったことで、ステアリングを切り込んでいったときの反応は正確かつシャープで気持ち良く旋回していくが、スタビリティも高くて安心してアクセルを踏み込んでいける。サスだけではなくMスポーツ・ディファレンシャルの効果も高いのだろう。先代に比べると大幅にパフォーマンスアップされた分、手の内に収まる感覚は薄れたかもしれないが、トゥーマッチではないぎりぎりの範囲。相変わらずストリートでのベストBMW Mだと言えるだろう。

Country      Germany
Debut       2023年2月
車両本体価格     958万円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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