トヨタ・クラウンセダン 公用車、社長・役員車としてどう? 2.5LハイブリッドとFCEV(水素燃料電池車)、どちらを選ぶ?

トヨタ クラウン セダンZ(燃料電池車)車両価格:830万円
4車型の「群で戦う」新型クラウンシリーズは、クロスオーバーに続いて、スポーツとセダンが発売になった。後輪駆動プラットフォームを使うクラウンセダンは、かつてのクラウンが担っていた主な役割を受け持つモデルである。クラウンセダンは、期待通りの仕上がりになっているだろうか?
PHOTO:山上博也(YAMAGAMI Hiroya)

「いつかはクラウン」がクラウンセダン

トヨタ クラウン セダン2.5LハイブリッドZ 車両価格:730万円

「いつかはクラウン」という名コピーがある。
頑張って働いてきた証、成功の証としてのいいクルマがある。それがクラウンだった。

16代目クラウンは、長い伝統と多様化した価値観に向かい合うために、4つの車型を用意した。クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステートである。先陣を切ったクラウンクロスオーバーが、シリーズの基本形だ。感性/理性、創造/基盤という尺度で言えば
感性・創造に振ったモデルがクラウンスポーツ
理性・基盤に振ったモデルがクラウンセダンとなる。

ちなみに今後ラインアップに加わるクラウンエステートは理性・創造に振ったモデルだ。

クラウンセダンに求められるのは、「ブランドの伝統と歴史を継承するニューフォーマルセダン」だ。トヨタブランドのフラッグシップの役割もクラウンセダンが担う。

プラットフォームは、ほかの3モデルと違う後輪駆動プラットフォーム「GA-L」を使う。ロングノーズと6ライトキャビン、水平基調のエクステリアは、まさにフォーマルセダンだ。

クラウンセダンのターゲットは、従来のクラウンユーザー、官公庁の公用車、企業の社用車(といっても、社長や役員用)だろう。ドライバーズカーとしての資質とともに、ショーファーニーズにも応えないといけない。つまり、後席の居住性だ。

FCEVモデル 全長×全幅×全高:5030mm×1890mm×1475mm ホイールベース:3000mm
トレッド:F1620mm/R1615mm 最低地上高:130mm 最小回転半径:5.9m
試乗車の車両重量:2000kg 前軸軸重970kg 後軸軸重 1030kg

というようなことを考えながらクラウンセダンと対面した。
全長×全幅×全高:5030mm×1890mm×1475mm ホイールベース:3000mm
のボディは、堂々としてもっとも「クラウンらしい」佇まいだ。ただし、5m超えの全長はこれまでのクラウンよりだいぶ大きい。4車型で5m超えはセダンだけだ。メルセデス・ベンツEクラスより大きいのだ。

2.5L直4マルチステージハイブリッドより水素

トヨタ クラウン セダン2.5LハイブリッドZ
エンジン形式:直列4気筒DOHC+ハイブリッド エンジン型式:A25A-FXS 排気量:2487cc ボア×ストローク:87.5mm×103.4mm 圧縮比:- 最高出力:185ps(136kW)/6000rpm 最大トルク:225Nm/4200-5000rpm 過給機:- 燃料供給:DI+PFI(D-4S) 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:82L

最初に試乗したのは、2.5L直4+マルチステージハイブリッドだ。じつは、これ、クラウンセダン用に仕立てられた新しいパワートレーンだ。これまで3.5L V6エンジンに組み合わせていたマルチステージハイブリッドを2.5L直4エンジンに換えて成立させた意欲的なパワートレーンだ。

開発陣に、なぜわざわざ2.5L直4と組み合わせたのか質問したら「水素燃料電池でカーボンニュートラルと言っているのに、3.5L V6というわけにはいかないでしょう」という答えが返ってきた。官公庁で公用車として導入する際にも「3.5Lというよりも2.5Lの方が受けがいい」ということもあるのだろう。

A25A-FXS型直4エンジンの後ろに4速AT(プラネタリーギヤセットをふたつ)組み合わる。モーター+エンジンの出力軸に変速機構を追加したことで駆動力を向上。これに疑似10段変速制御(そのうち4速は変速機によるリアルな変速)を組み込んでいる。

WLTCモード燃費は、18.0km/L……もなかなか優れた数字だが、高速道路モード燃費19.7km/Lが特筆すべきポイントだ。従来、高速走行は苦手とされたトヨタ・ハイブリッドシステムだが、このマルチステージハイブリッドは高速走行燃費を苦手としない。

とはいえ、2020kgでエンジン出力(185ps/225Nm)、モーター出力(180ps/300Nm)だから、有り余るパワー&トルクという感じではない。ちょっと車重が重すぎる? BEVではないのだから、なんとか2トンは切ってほしかった。同様に、5030mmの全長も5m以下に収めてほしかった。

トヨタ クラウン セダン2.5LハイブリッドZの後席。

市街地をひと回りしたあと、首都高速へ。後席にはカメラマンに座ってもらった。後席の第一印象は、いまひとつだった。あまり広くないし、つま先を前席の下に入れることができない。1000mmというカップルディスタンスの割には、膝周りが狭い。後席には、左右席は座面内のエアブラダー(空気袋)を膨張させることで乗員の背中から大腿部を押圧するマッサージ機能があるが、そもそも期待していたほどの広々感がないことが気になった。

次に試乗したのは、FCEV(水素燃料電池車)だ。

トヨタ クラウン セダンZ(燃料電池車)車両価格:830万円 ボディカラー(プレシャスホワイトパール)5万5000円、デジタルキー3万3000円、フロアマット7万3700円

これがまったく別物のように、素晴らしい乗り味だった。静かで滑らか。車重は2000kだからハイブリッドモデルとほぼ同じ。モーターの出力も182ps/300Nmだから取り立ててパワフルなわけでもない。でも、FCEVモデルの方が、高級セダンとしての能力が高いように感じた。

ハイブリッドが悪いわけではない。FCEVがいいのだ。

トヨタ クラウン セダンZ(燃料電池車)の後席

後席に座ったカメラマンも、「こっちならずっと乗っていたいですね、静かで乗り心地もいいです」という感想だった。
FCEVの価格は830万円
ハイブリッドが730万円

だから、価格差は100万円だ。FCEV補助金を受ければ、価格差は縮まる。東京都なら110万円の補助金が得られるから価格は逆転する。

ラゲッジ容量は450L 9.5インチのゴルフバッグがハイブリッドモデルの場合3個、燃料電池車の場合2個収納できる。

これは、もうクラウンセダンを選ぶならFCEV一択でしょう。となるのだが、もちろん水素インフラを考える必要がある。近くに水素ステーションがあるのなら、FCEVを選んで後悔することはない。官公庁の公用車ならなおさらだし、社長・役員用車としても水素の方がいいだろう。これまで定評のあったMIRAIのいいところにさらに磨きを掛けたのがクラウンセダンFCEVだ。

トヨタ・アルファード Executive Lounge(E-Four) 全長×全幅×全高:4995mm×1850mm×1935mm ホイールベース:3000mm 車両価格:872万円
アルファードの2列目シート

後席の居住性や乗り心地だけを考えるなら、アルファード/ヴェルファイアでいいじゃないか、という見方もある。そしていまやその方が主流なのもわかっている。が、「やはり後輪駆動のセダンでないと」というユーザーは存在するし、そうでないと乗り付けられない場所もあると思う。

このカテゴリー、いまや絶滅寸前で
クラウンセダン:ハイブリッド730万円 FCEV830万円
レクサスLS500h:1288万円
くらいしか国産車にはないのだ。公用車で1000万円超えは納税者の眼が厳しいだろうし、社長・役員用車としてはインポートカーは選びにくいという場合もあるだろう。となると、もう新型クラウンセダン一択なのだ。

船出したクラウンセダンにかかる期待は、おそらく販売台数の多寡によらず大きい。日本にはクラウンがある。そこがとても大事なのである。

トヨタ クラウン セダン2.5LハイブリッドZ 車両価格:730万円
トヨタ クラウン セダン2.5LハイブリッドZ
全長×全幅×全高:5030mm×1890mm×1475mm
ホイールベース:3000mm
車重:2020kg
サスペンション:Fマルチリンク式 Rマルチリンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHC+ハイブリッド
エンジン型式:A25A-FXS
排気量:2487cc
ボア×ストローク:87.5mm×103.4mm
圧縮比:-
最高出力:185ps(136kW)/6000rpm
最大トルク:225Nm/4200-5000rpm
過給機:-
燃料供給:DI+PFI(D-4S)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:82L
トランスミッション:
モーター:
リヤモーター 2NM型交流同期モーター
 最高出力180ps(132kW)
 最大トルク300Nm
バッテリー:リチウムイオン電池
容量:4.3Ah

駆動方式:RWD
WLTCモード燃費:18.0km/L
 市街地モード14.4km/L
 郊外モード18.4km/L
 高速道路モード19.7km/L
車両価格:730万円

ブラックパッケージ19万8000円(245/45ZR20タイヤ+ヘッドランプモール漆黒めっき加飾/ロワーグリルモール/フェンダーガーニッシュ/ベルトモール/リヤバンパーモール)
パノラマルーフ11万円、デジタルキー3万3000円、フロアマット7万3700円
トヨタ クラウン セダンZ(燃料電池車)車両価格:830万円
トヨタ クラウン セダンZ(燃料電池車)
全長×全幅×全高:5030mm×1890mm×1475mm
ホイールベース:3000mm
車重:2000kg
サスペンション:Fマルチリンク式 Rマルチリンク式
FCスタック:固体高分子型
最高出力:174ps(128kW)
セル数:330
接続方式:直列
燃料種類:圧縮水素
貯蔵方式:高圧タンク(3本)
タンク容量:141L(前方64L+中52L+後方25L)
公称使用圧力:70MPa
モーター:
リヤモーター 3KM型永久磁石式交流同期モーター
定格出力:48.0kW
最高出力:182ps(134kW)/6940rpm
最大トルク:300Nm/0-3267rpm
バッテリー:リチウムイオン電池
容量:4.0Ah
駆動方式:RWD
一充填走行距離:820km(参考値)
WLTCモード燃費:148km/kg
 市街地モード14.4km/L
 郊外モード18.4km/L
 高速道路モード19.7km/L
車両価格:830万円

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…