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かつては多くのクルマが年末になると付けていて、正月休みの帰省ともなれば正月飾りを付けたクルマがサービスエリアの駐車場にズラリと並ぶ光景が見られたものだが、それもすっかり昔の話。最近は正月飾りを付けているクルマはめっきり少なくなったようだ。
正月飾りの意味と種類を知っている?
■年神様ってそもそも何者?
日本の正月といえば、玄関に門松と正月飾りを飾るのが風物詩で、これらは正月に年神様を迎えるための目印だという。
クルマにも正月飾りをつけるのは、人が中で過ごす時間も多いクルマにも神様が立ち寄ってくれるように……という思いの表れといったところだろうか?
そもそも「年神様」とは地域によって呼び方や司るものなど諸説あるようだが、新年に家々を訪れ幸せをもたらしてくれるという点は概ね共通。祖先の霊や田んぼの神様、山の神様など、諸々の神様を合わせた存在で、「正月様」「歳徳神」という呼称もある。
■クルマ用なら「しめ縄飾り」
そんな年神様をお招きする場所を示すのが「門松」であり、そこから不浄を取り除き神聖に保つのが「しめ縄」。「鏡餅」がやってきた神様の依代になる。新年の門出を祝うとともに無病息災、家内安全、五穀豊穣を願い、合わせて祖先の霊を祀る意味もある。
さすがにクルマに門松を付けたり鏡餅を飾ったりする人はいないだろうから、クルマの正月飾りといえばしめ縄系のお飾りがメインになるだろう。しめ縄飾り、あるいはしめ飾りはしめ縄に縁起物を付けたものだ。
おせち料理もそうであるように、しめ縄に付いている飾りにもそれぞれに意味が込められているのは他の正月飾りと同様だし、クルマ用でも基本的に変わらない。
では、その意味について見てみよう。
●しめ縄飾りの意味 扇:「末広がり」の形状から、家の末永い繁栄を意味する。 水引:吉事を願い結ぶ。 御幣・四手(紙垂):清浄な場所であることの印 しめ縄:周囲の汚れを清め、災いを防ぐ結界 橙:木から落ちずに実が育つことから、家が"代々"繁栄する 松:めでたさの象徴。常緑樹の松は繁栄の象徴で、長い樹齢は長寿にもつながる。 裏白:シダ植物で常緑なことからやはり長寿の象徴。
これらが一般的な正月飾りの装備品で、鏡餅に載せるものもそうだが橙はみかんで代用されたりする。クルマ飾りに橙まで付けると、これが外れて転がっているというのがかつての正月クルマあるあるとも言われていたようだが、筆者はあまり見たことがない。
他にもお飾りやそのセット内容には種類がある。
●お飾りの種類と意味 稲穂:豊かさの象徴で、五穀豊穣の願いを表す。 南天:「難を転じて福となす」厄災除けの意味。 海老:腰や髭の曲がった老人に喩えた長寿の象徴。 梅:他の花に先駆けて咲くことから「出世い」や「開運」の象徴。 鶴:鶴は一生同じつがいで添い遂げることから「夫婦愛」の象徴で、また「鶴は千年」と言われる長寿の象徴でもある。
神様をクルマにお招きするわけだから、正月飾りを付けるのであればクルマも綺麗にしておきたい。季節柄、クルマの大掃除をするにもちょうど良い。
どれを選んで、どうやって付ける?
■どれを選ぶ?
年末ともなると、スーパーやホームセンター、フラワーショップなどで正月飾りを見かける機会が多くなる。その多くは家用だ。では、クルマに付けるならどのようなものが良いのだろうか?
もちろん、中には「自動車飾り」と銘打ったものもあったりするので、それを選ぶのが無難ではある。
筆者が2016年まで使っていた稲穂付きの飾り(前述の画像参照)は、走行風でボンネット側に捲り上がることがままあり、それが多少気になる点ではあったので、2017年以降は小ぶりなものに切り替えた。
さすがに橙付きの立派なモノを付けて、橙を落とす人は今は稀だろうし、昨今はクルマからの落下物の責任問題も取り沙汰されるので、その辺りも考慮した方が良いかもしれない。
また装着方法も、以前は結束バンドなどでフロントグリルに固定していたが、面倒になってきたので2020年からは吸盤タイプのものを室内に付けるようになった。
手軽さでいえば吸盤タイプだし、”自動車用”として売られているのはだいたい吸盤タイプだ。ただ、吸盤タイプだと”正月飾りらしく”フロントグリルに付けるのは難しくなる。
付けやすさやデザイン、縁起物の構成、お値段など、最終的にはそれぞれの好みで良いだろう。だいたい「迎春」や「賀正」「開運」「謹賀新年」など、縁起物の文言が記されているが、”クルマ用”であれば「交通安全」を選ぶのも、セレクトの理由になるかもしれない。
■いつ付ける? いつまで付ける?
まず、クルマ用に限らず正月飾りは縁起が悪いとされる”一夜飾り”と、”二重苦”に通じる29日を避けて12月28日まで付けるのが良いとされる。前記の理由なら30日でも良さそうだが、それについての解説は見たことがない。
付け始めも13日からOK説と26日以降説があったりするが、忙しい師走の中頃から付ける人はいないだろう。
正月飾りを付ける期間はクルマ用でも特に変わらず、門松を飾っておく「松の内」(=神様の滞在期間)と呼ばれる期間内。松の内は、関西、四国方面では1月15日まで、関東、東北、九州あたりでは1月7日までとするようだ。
違反になるかも? 付ける場所に要注意!
前述のとおり、正月飾りを付けるならフロントグリルか室内かのどちらかになるだろう。どこに付けるかも好みによるところが大きいが、付ける場所や付け方には色々と方法がある。
一方で、装着する場所によっては”厳密に言えば”違反になることもあるので、注意が必要だ。その点についても解説しておこう。
■正月気分ならフロントグリル!
フロントグリルなら、グリル内の桟にワイヤータイや結束バンド、ヒモなどで付ける。ただし、グリルレスのフロントマスクだとこの方法は難しくなる。
その場合はボンネットを開けて、ボンネットフードロック(ボンネットラッチ)に引っ掛けるという方法もある。
フロント周りに付ける際は、ナンバープレートが隠れないようにしなければならない。ナンバープレートを隠すのは道交法違反で、それが正月飾りであっても、また故意でなくても取り締まりの対象になるので絶対にNGだ。
ただ、外装に正月飾りを付けると塗装が傷つく可能性も否定できない。そういう意味でも装着車が減るのもよくわかる。とすると、室内に吸盤で貼り付けるタイプが便利かもしれない。
■吸盤×室内ならとにかくカンタンだが……
とはいえ、基本的に吸盤が吸い付く平滑面が無いとどうにもならない。その一番の候補がウインドウガラスだ。
ドライバーの視界に入って正月気分が盛り上がるところとなるとやはりフロントガラスなのだが、道路運送車両の保安基準では車検シールなどの許可されたもの以外はフロントガラスに貼るのは禁止されている。これは前席のサイドウインドウも同様で、正月飾りとて例外ではない。以前は付けてしまっていたこともあったが、意外と知られてない点ではないだろうか。おそらく厳密に取り締まるケースは少ないと思われる(実際に付けている時に注意されたことはなかった)が、グッドドライバーなら遵守しておきたい。
筆者のクルマには見当たらなかったが、他にちょうど良い平滑面があればウインドウガラスにこだわることもないし、吸盤を使わないでヒモなり結束バンドなりワイヤータイ、フックなどを使えば車内にぶら下げる場所はあるだろう。
個人的には上記のリヤクオーターウインドウも斜め後方視界が悪化するのであまり付けたくない場所だ。また、吸盤を使わずにミラーの裏にぶら下げたこともあるが、これも視界に影響するかもしれないし、視界でものがブラブラしていると同乗者が酔いやすいという欠点もある。
装着はカンタンでも場所選びは意外と難しい。
外したらどうするの?
松の内が開けて外した正月飾り。
こだわりがなければ地域の分別法に従って処分すればよいが、せっかくの縁起物なのであまりぞんざいに扱うのも気が引ける。ではどうすれば良いのだろうか?
松の内が明けたところで神社などに持っていけば、前年のお守りや破魔矢と合わせて納めることができるだろう。しかし、せっかくなので最後まで正月気分を楽しめる方法をお教えしよう!
地域によっては「どんど焼き」という正月の最後を飾るイベントがあり、そこでお焚き上げをするのもアリだ。最後の正月気分を楽しみつつ、正月飾りを片付けることができて一石二鳥。
すっかりマイノリティになってしまった感の”クルマに正月飾りを付ける”派だが、せっかくの年末年始、カーライフでも日本の伝統を見直してお正月気分を楽しんでみるのも一興かと。