ドデカい塊感と低ドラッグを両立!? 三菱トライトンのエクステリアに隠された理系な一面

タイでは2023年7月に発売されている三菱の新型ピックアップトラック「トライトン」が、2024年2月15日に日本でも発売される。ゴツい見た目からはいかにも空気抵抗(ドラッグ)が大きそうな印象を受けるが、実はしっかりと空力も意識した作りになっている。


2023年夏に世界初公開され、日本では今年2月より販売される三菱の新型1トンピックアップトラック「トライトン」。パジェロ譲りのスーパーセレクト4WD-IIと新開発されたサスペンションが奢られたこのクルマは、荒れた路面もものともしない優れた走破性を誇る。そしてそれは、分厚く、頼もしさを感じさせるプロポーションからもうかがえる。

コンセプトはBEAST MODE

デザインスケッチ

迫力のあるデザインとすることは、商品企画段階からの決められていたこと。新型トライトンのデザインコンセプトは「BEAST MODE」(勇猛果敢)。これはピックアップらしいパワフルで力強いデザインを目指すべく定めたものだ。

デザインスケッチ

フロントフェイスは、人とクルマを守る安心感を表現した三菱独自のデザインコンセプト「ダイナミックシールド」を採用。立体的なフロントグリルやフェンダーからなる力強さはプロテクターでより強調される。ヘッドランプは3連のL字型LEDで構成されたデイタイムライトと立体的な3眼プロジェクター式メインヘッドライトが組み合わされ、鋭さと逞しさを両立させた。

ボディサイドは水平基調とされ、ドアの厚みを演出する張りのある大きな面とシャープに張り出したフェンダー造形とのコントラストで引き締めた。クルマ全体の塊のなかに、あたかも削り取られたかのようなシャープなエグリも加えることで、力強さと三菱の持つシャープネスを融合させている。

計算で導き出されたエクステリア

どこから見ても塊感の強いトライトンだが、実はそのエクステリアは空力を強く意識して作られている。
一般的に、分厚く角ばったボディよりも、薄く流線型のボディのほうが空気抵抗が少なく、そのぶん燃費的にも有利になる。経済性のニーズが高い昨今、SUVなどのカテゴリーではそれらしく見えるシルエットと空力性能は、エクステリアをつくるうえでの課題のひとつだ。ピックアップのトライトンも例外ではなかった。

トライトンのプログラムデザインダイレクターを務めた吉峰典彦氏は、開発において厳しい燃費基準を念頭に、エアロダイナミクスを「めちゃくちゃ意識しました」と明かした。

フロントマスクはクルマ全体の印象を左右するまさに顔。デザインを構成する上で大事な部分であるが、それと同時に最初に空気にぶつかり、後方への気流を決める空力的にも重要なパートでもある。いかつい顔をしたトライトンだが、その顔つきは計算に裏打ちされている。

ノーズからボンネットにかけての形状や角度はドラッグを減らすよう計算で導き出された角度とされた。

「フロントの面が立っているところと、他の面につながる傾斜になっている部分の角度などは計算していて、気流が剥離しない(抵抗を作らない)ようなベストな形状を作っていきました。また、エグリなどもあまり入れすぎると剥離してしまうので、空力特性的にもいいポジションなども考えています」

また、キャビンや荷台の形状もドラッグをなるべく低減するよう作られた。
キャビンは後方にやや絞り込むように整形されているほか、ルーフからの気流がリヤゲートへ流れ落ちるよう、ルーフ後端とリヤゲート頂点のポイントを調整した。しかし、空力を意識すれば、そのぶんピックアップの特徴である荷台の使い勝手にも影響してくる。

キャビンからテールにかけての気流のイメージ。エアロボディは新型トライトンの売りのひとつだ。

「空力と普段の使い勝手のバランスを取るために、荷台の幅や荷箱底面の高さを適正化しました。スポーツカーのテールを作るときと同じようにやるのではなくって、キャビンなどほかの部分との複合技を使ったイメージです」

GSRにはスタイリングバーなどが装着される。ちなみに、タイ仕様ではリアゲートにスポイラーも装着可能で、より空力性能を高めているという。

トライトンは上級仕様の「GSR」とベーシックな「GLS」の2グレード構成で展開される。前者にはフェンダーアーチモールやスタイリングバーなどのエクステリアアクセサリーが標準装備されるが、素の状態である後者こそが「空力訴求モデル」だと吉峰氏は表現する。

吉峰氏が「空力訴求モデル」と話したGLS。スタイリングバーなどが装着されていないぶん、ドラッグは少なそうだ。

「トライトンの開発は、小さいモデルから1/1スケールまで、ちゃんと風洞モデルまで作って行いました。デザインするときも、パソコンのなかで完結するんじゃなくて、実際にクルマに乗って、それで絵を描くようにしていますし、うちの若いスタッフにもそうするように言っています。実際、高速域でトライトンを走らせるとハンドリング性はいいですし、安定しています。ぜひ皆さんにご試乗いただければと思います」

三菱トライトン 主要諸元(一部抜粋)
全長×全幅×全高5320mm×1865mm×1795mm
ホイールベース3130mm
トレッド 前/後1570mm / 1565mm
最低地上高220mm
最小回転半径6.2m
車両重量2080kg
室内 長×幅×高1770mm×1540mm×1175mm
乗車定員5名
荷箱 長×幅×高1480mm×1530mm×525mm
荷台高820mm
サスペンション 前/後ダブルウィッシュボーン式独立懸架コイルスプリング/リーフスプリング式リジッド
ブレーキ形式 前/後ベンチレーテッドディスク/リーディングトレーリング式ドラム
ステアリング形式ラック&ピニオン(電動パワーステアリング)
タイヤ&ホイール265/60 R18

エンジン型式4N16 DOHC16バルブ4気筒 コモンレール式DI-D インタークーラー付ターボチャージャー
排気量2439cc
内径×工程86.0mm×105.0mm
最高出力150kW(204PS)/3500rpm
最大トルク470N・m(47.9kgf・m)/1500-2750rpm
使用燃料軽油
タンク容量75L
燃料消費率WLTCモード:11.3km/L
市街地モード:8.5km/L
郊外モード:11.4km/L
高速道路モード:13.0km/L"
トランスミッション6速スポーツモードAT
駆動方式4WD(スーパーセレクト4WD-II)

価格498万800円(GLS)/540万1000円(GSR)

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著者プロフィール

上坂元 宏樹 近影

上坂元 宏樹

メジャーリーグなどアメリカンスポーツ関連ニュースの翻訳業務を経験した後、2016年10月にモータースポー…