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チューニング系ブランドが多いエリアに似合うルノーとアルピーヌ
東京オートサロンに通い慣れていれば、会場マップを見ずとも「どこに、どんなブランドのブースがあるのか」おおよその見当がつくかもしれない。たとえば、伝統的に西ゲートに近いあたりのエリアには、ゴリゴリのチューニングを行うブランドがブースを並べている。
そんな西ホールの中央付近にルノー/アルピーヌのブースがあるのもお馴染みだ。
すっかり溶け込んでいるのは、輸入車ブランドの中でも、もっとも日本的なチューニングマインドに親和性があるからだろう。
なにしろ、歴代のルノー・メガーヌR.S.は市販車FF最速のタイトルをホンダ・シビックタイプRと競い合っている欧州ホットハッチの代表格。欧州のスポーツカーというと数字よりもフィーリングで語られることも多いが、メガーヌR.S.はガンガンに数字を追い求めてきた。車名の「R.S.」とはルノーのワークスブランド「ルノースポール」の略称である。モータースポーツ同様、市販車でもライバルに負けることをヨシとするはずはない。
さて、モータースポーツやハイパフォーマンスモデルのエンジニアリングを担ってきたルノースポールだが、ルノー全体のリブランディングにあわせて、その役割をアルピーヌに集約することになったことは、ご存知の通り。すでにモータースポーツではF1コンストラクターの名称がルノースポールからアルピーヌへと変わって久しい。
市販車についてはバトンタッチの過渡期といえ、前述したメガーヌR.S.とアルピーヌA110Rという両ブランドのホットモデルがオーバーラップしている。
今年の東京オートサロンでルノー/アルピーヌのブースに、メガーヌR.S.のファイナルモデルである「ウルティム」と、A110のハイパフォーマンス版である「A110Rチュリニ」の2台が揃い踏みしたのは2024年というタイミングでの必然といえるかもしれない。
エンジンの最高出力は300馬力で同じ、最大トルクはメガーヌ優位
メガーヌはフロントにエンジンを横置きするFF(前輪駆動)、A110はミッドシップにエンジンを同じく横置きするMR(後輪駆動)とレイアウトは真逆となっているが、エンジン自体は総排気量1798ccのガソリン直噴4気筒ターボと共通だったりする。しかも最高出力は221kW(300PS)と同一なのである。
とはいえ、すべてのスペックが共通というわけではない。最高出力は同じだが、発生回転はメガーヌR.S.が6000rpmなのに対して、A110Rは6300rpmと若干高めとなっている。
逆に、最大トルクのスペックはメガーヌR.S.が420Nm/3200rpm、A110Rは340Nm/2400rpmと、メガーヌR.S.が上回る。トランスミッションもメガーヌR.S.は6速AT、A110Rは7速ATと異なっている。
軽量ボディのミッドシップ、A110Rは圧倒的な加速性能を持つ
最大トルクの違いから、数字的にはメガーヌR.S.のほうが加速性能に優れていると思うかもしれないが、メーカー発表の加速性能を見るとA110Rが優位だ。0-100km/h加速の数値は、メガーヌR.S.が5.7秒、A110Rは4.0秒と圧倒的に速い。
その理由は車重の違いにあるといえるだろう。アルピーヌA110Rチュリニの車両重量は、わずか1100kgなのだ。メガーヌR.S.の1470kgという重量もCセグメントハッチバックとしてはかなり軽い部類になるが、2シーターミッドシップのピュアスポーツカーには敵わないといったところだろうか。
しかしながら、もっとも異なるのは価格だ。
今回の東京オートサロンで展示されたA110Rチュリニの車両価格は1550万円で、オプションカラーの「ブルーレーシングマット」は110万円。合計すると車両だけで1660万円だ。
一方、メガーヌR.S.ウルティムの価格は659万円で、ボディカラー「ジョンシリウスメタリック」のエクストラコストは18万円。合計しても677万円、A110Rチュリニとの価格差は983万円もある。
これだけの価格差を考えれば、同じようなエンジンを積む2台においてA110Rが速くなければ、実際に購入したユーザーが許さないだろう。もっともルノーのファンであれば、この2台をやみくもに比べるのではなく、仲良くガレージに並べるのが理想かもしれない…。