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日産が実施するリフレッシュ・カスタマイズを施した中古車のトライアル販売
物価の高騰や自動車価格の上昇する一方で所得は伸び悩み、若いユーザーが新車を購入するハードルは年々高くなっている。一方で、SDGsやエコ意識からモノを大切にする風潮も高まっている。そのような状況から、中古車の魅力を向上する取り組みとして、日産は認定中古車の内外装をリフレッシュするとともにカスタマイズを施した車両を販売する試みを始めた。
20代〜30代のユーザーの50%はクルマの購入時に中古車を検討しており、そうした若いユーザーが魅力を感じる中古車を日産車へのエントリーモデルとして用意することで、将来的なロイヤルカスタマー=日産ファンを増やしくいく試みでもある。
また、キューブやマーチなど生産終了したものの根強いファンも多く中古市場での流通も多い車種をベースとすることでリフレッシュ・カスタムを施しても価格を抑えられるという面もある。
そのトライアル第一弾として、2023年の『東京オートサロン2023』に参考出品した三代目キューブをベースに製作された「CUBE Refreshed&Retro CONCEPT」を「CUBE Retro Renovation」として限定販売する。
「CUBE Refreshed&Retro CONCEPT」は『東京オートサロン2023』での反響も大きかったことから、奈良日産の協力で事業化に向けてのテストケースとして販売に至ったという。
このテストマーケティングを通じて2024年度中に事業化への具体的な内容(物流や販売、ブランディング)を検討し、事業化を進めていく予定となっている。
「キューブ・レトロ・リノベーション」とは?
今回販売される「CUBE Retro Renovation(キューブ・レトロ・リノベーション)」は『東京オートサロン2023』に出品されたキューブのカスタムカー「CUBE Refreshed&Retro CONCEPT(キューブ・リフレッシュ&レトロコンセプト)」をもとにしたもので、日産キューブの認定中古車をベースに、内外装をリフレッシュし、カスタマイズパーツを装着して販売される。
ベースとなるキューブは2008年から2020年に販売された三代目モデル。販売終了から約4年が経過しているが、そのファニーなスタイルや余裕のある室内空間など、今も若いユーザー層を中心に人気があることから白羽の矢が立った。
ユーザーはまず奈良日産が選りすぐったベースとなる認定中古車を選び、そこに予算や好みに応じてリフレッシュとカスタムを施していく半オーダーメイドなシステムになっている。ベースとなる認定中古車は、2016年以降のモデルで走行距離は7万km以下の個体を用意したいと考えているそうだ。
販売においては「リフレッシュパッケージ」と「カスタムパッケージ」を軸に、それぞれリフレッシュ/カスタム内容により「エントリー」「スタンダード」「プレミアム」が用意される。ユーザーは、そのパッケージを自由に組み合わせることができるのはもちろん、どちらかのパッケージを選ぶことができるし、パッケージの内容も取捨選択が可能なのだ。加えて、ユーザーの希望やクルマに応じて個別のオプションも用意している。
リフレッシュパッケージ | 内容 | 参考価格 (工賃込み) |
エントリー | ワイパーリフィル、バッテリー等の消耗品交換 カーペット交換 | 7万4385円 |
スタンダード | エントリー+ コーティングパック ワイパーアーム交換 ガラスランラバー交換 ほか | 27万2595円 |
プレミアム | スタンダード+ ヘッドライト交換 運転席スイッチ類交換 カウルトップ交換 他 | 39万1776円 |
個別オプション | ドア内張り プロテクター類 など | – |
カスタムパッケージ | 内容 | 参考価格 (工賃込み) |
エントリー | ホイールカバー シートカバー | 10万6430円 |
スタンダード | エントリー+ 2トーンボディステッカー(グレー) グリル | 57万 3698円 |
プレミアム | スタンダード+ ステッカー(リヤウインドウ、ボディサイド) インテリア加飾 | 75万764円 |
個別オプション | ベースキャリア&ルーフラック(TERZO) | 13万9800円 |
上記が用意されるパッケージだが、このパッケージを選択・組み合わせて購入することができる。また、ベースとなる認定中古車の仕様も異なるため、20台が全て異なる仕様になり、価格も変わってくる。
基本的な価格としては
ベース中古車価格+カスタムパッケージ+リフレッシュパッケージ+個別オプション+諸経費=支払い総額
となる。
一例としてカスタムパッケージとリフレッシュパッケージをスタンダードとした場合、
ベース中古車両(70万円)+カスタムパッケージ(スタンダード:57万3698円)+リフレッシュパッケージ(スタンダード:27万2595円)+個別オプション(なし:0円)+諸経費(13万9000円)=168万5293円
となる。
また、今回の取材で用意された個体はいずれもプレミアムで、個別オプション(ベースキャリア&ルーフラック)等を加えて、ほぼ『東京オートサロン2023』に展示された「CUBE Refreshed&Retro CONCEPT」が再現され、約180万円になるそうだ。
この個体はもちろん販売される20台のうちの1台で、他にも奈良日産がコーディネートしたパッケージモデルが5台ほど用意されるという。
認定中古車選びから始めてフルオーダーするもよし、コーディネートモデルをそのまま購入するもよし、コーディネートモデルにさらにオーダーを加えるもよし。
すでに用意されているモデルであれば即納可能だが、オーダーモデルになるとパッケージの内容により3週間から6週間の納期がかかるという。気になるようであれば早めに奈良日産に問い合わせるのが良いだろう。
CUBE Retro Renovationのリフレッシュポイントの例
今回の取材に用意された「CUBE Retro Renovation」のリフレッシュポイントは以下のとおり。目に触れやすいところや手の触れるところ、傷つきやすいところを中心に内外装を新品部品に交換するなどして、面目を一新している。
CUBE Retro Renovationのカスタムポイント
取材車の「CUBE Retro Renovation」はカスタムパッケージはプレミアム。さらに個別オプションとしてベースキャリア&ルーフラックを装着している。
20台という台数限定のモデルではあるが、カスタム内容にシリアルナンバーなどは特にないそうだ。ただし、オリジナルキーケースを用意しているという。
既存所有車両や他モデルへの展開も視野に
今回のトライアルでは三代目キューブの認定中古車をベースにクルマ自体を販売する形をとっているが、将来的にはユーザーの既存所有車両をリフレッシュ・カスタマイズすることも考慮されている。
『東京オートサロン2023』のキューブに続き、『東京オートサロン2024』ではマーチをベースとした「MARCH Patissier CONCEPT」を参考出品している。反響次第ではこのモデルも販売されることにかもしれない。
事業化の展開次第ではこれら2車種以外のモデルへの展開の可能性も言及された。ただし、メーカーが部品を安定供給できることが大前提なので、あまり古いモデルやマイナーなモデルが対象になる可能性は極めて低いのは、昨今のネオクラシックブームを考えると少々残念に思える。
とはいえ中古車を購入する際に、リフレッシュされて綺麗なったモデルや、他にはないカスタムを施されたモデルが選べるのであれば非常に魅力的だし、長年所有する愛車をリフレッシュしたりカスタムできる……しかもメーカーのサポートで……のはとてもありがたいことだ。ぜひ、おのトライアルを通じて事業化を実現してほしい。