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特別仕様シャモニー(CHAMONIX)のカッコ良さ
「デリカD:5ってこんなにカッコ良かったっけ?」と、二度見三度見どころか、乗り降りする度に何度も見入ってしまった。気を引いた理由のひとつは、このクルマが特別仕様車のCHAMONIX(シャモニー)だったからかもしれない。
2023年11月24日に発売されたデリカD:5 CHAMONIXは、最上級のPグレードをベースに専用の外装・内装デザインを施した特別仕様車だ。エクステリアでは、フロントグリル、ポジションランプガーニッシュ、フォグランプベゼル、アウタードアハンドルなどをブラックマイカで統一。18インチアルミホイールはブラック塗装となる。また、テールゲートに配したCHAMONIXのロゴは雪山に生える針葉樹をイメージした専用のグリーンを採用している。
試乗車はディーラーオプションの「CHAMONIXコンプリートパッケージ」を装着しており、専用色のグリーンを採用したドアミラーカバーやエンジンフードエンブレムに加え、カモフラージュ柄のボディサイドデカールを組み合わせてアウトドア色を高めている。
インテリアでは、アウトドアアクティビティでの使い勝手を考慮し、撥水機能を付加したスエード調素材と合成皮革の専用コンビネーション生地を採用したシートを採用。インストルメントパネルとドアトリムには、シートと同様にシルバーステッチをあしらっている。CHAMONIXの発売と同時に施された一部商品改良により、PグレードとCHAMONIXはアクセルペダルとブレーキペダルがアルミ化された。
雪上で見せた4WD性能
アスファルト路面のうえで「カッコイイなぁ」と感心したのはまだ序の口だった。雪の上で見たデリカD:5 CHAMONIXは文字どおり、光り輝いて見えた。CHAMONIXの名称はそもそも、西ヨーロッパ最高峰モンブランの麓にあるフランスのスキーリゾート地に由来する。スキーやスノーボードのウエアやギヤに身を包んだ人たちが雪の上で映えるのと同じで、雪山の世界をイメージしたCHAMONIXが雪景色のなかで輝いて見えるのは当然だ。さらに言えば、輝いて見えるように仕立てた三菱自動車に脱帽である。
カッコイイだけの見かけ倒しでないことも、充分に確認できた。デリカD:5 CHAMONIXほど、市街地からスキーリゾートへのロングドライブに適した多人数乗車の頼もしいクルマはない。スキーやスノボに例えれば、このクルマの機動性の高さは雪原を自由自在に動き回れるプロ級の腕前である。
エンジンは4N14型の2.2L直列4気筒ディーゼルを搭載。最高出力は107kW(145ps)/3500rpm、最大トルクは380Nm/2000rpmを発生する。組み合わせるトランスミッションは8速ATだ。パワートレーンはフロントに横置きに搭載し前輪を駆動する2WD(FF)が基本だが、ダイヤルスイッチで4WDに切り換えることができる。
4WDユニットはリヤデフ前に搭載する電子制御カップリングを用いたもので、ドライバー操作や車両挙動をもとに後輪への伝達トルクを決定し、制御する。センターコンソールにあるシフトレバー横にダイヤルスイッチがあり、2WDと4WD AUTO、4WD LOCKの3種類を選択することができる。
2WDは前輪駆動(FF)のモードで、三菱自動車の説明によれば「燃費に優れた軽快な走りを実現」する。4WD AUTOは路面状況や走行条件に応じて前後輪への駆動力を常に適切に配分。「横風の強い高速道路や、濡れた路面などを通過する際も、安定した走りが得られる」と説明する。4WD LOCKはより積極的に後輪への駆動力配分を行うモードで、「悪路走行や雪道、登坂路などの滑りやすい路面状況において優れた走破性を発揮」する。
デリカD:5の4WDは、ヨーレートセンサーや操舵角、エンジントルクなどから車両の旋回運動を精度高く検知し、前後輪への駆動力配分を最適化(ヨーレートフィードバック制御)。ステアリング操作に対してリニアで忠実な車両挙動を実現する。また、トラクションコントロールはオフロード走破性を向上させるチューニングがなされている。4輪のタイヤ能力をバランス良く最大限に発生させる、三菱独自のAWC(オールホイールコントロール)のコンセプトは、デリカD:5にも存分に生かされている。安心・快適な走りの源泉だ。
車外で聞くアイドリング音は勇ましくていかにもディーゼルエンジンらしいが、ひとたび車内に入ると、デリカD:5は静粛性の高い快適な移動空間であることを実感する。低中車速で加速するシーンではディーゼル特有の音が耳に届くが、頼もしさを感じこそすれ、騒々しさとは無縁だ。ちなみに、100km/h走行時のエンジン回転数は1500rpm程度と低く、19年のモデルチェンジで6速から8速に多段化された恩恵を感じる。高速巡航ではエンジン音よりも風切り音やロードノイズのほうが支配的だ。
エンジンは発進加速、中間加速、高速でのサービスエリアから本線への合流のどのシーンを取り上げても力強く、頼もしい(試乗時は成人男性3名+撮影機材だった)。高速道路では4WD AUTOを選択すると後輪にもテンションが掛かった状態になり、直進安定性が高まって安心感と快適性が高まる。ロングドライブ時の疲労軽減にもつながるので試してみるといいだろう。
高速道路を降り、雪山を目指して一般道をたどっていくと、次第に道幅は狭くなっていく。デリカD:5は3列シートを備えた全長4800mmのミニバンだが、運転していて大きさを意識しないのは、視界の良さが理由のひとつだと感じた。フロントウインドウによる視界の切り取りが直線的のため見切りがいい。
それに、このクラスとしてはスリムな1795mmの全幅が効いている。デリカD:5よりもはるかにコンパクトなクルマでさえ1800mmを超える全幅が珍しくない状況で、1795mmの全幅は明確な美点だ。積雪地では道の脇に雪かきした雪のかたまりが残っていることもあり、ただでさえ狭い道がさらに狭くなっているところがある。そんな状況では、1800mm以下の全幅がありがたい。
じゃあ室内は窮屈かというとそんなことはなく、スクエアな断面を採用しているおかげもあって広々としている。2列目シートに座ったときの景色は、横長大面積のサイドウインドウを含んだ景色の流れが、車窓からの眺望をウリにする特急列車に乗ったときのよう。カントリーサイドへのロングドライブでは完全に特等席である。
3列目シートの居心地はまったく期待していなかったのだが、恐れ入った。身長184cmの筆者がフツーに座れる。座面とシートバックのクッションもしっかりしているので、長時間のドライブでも快適に過ごせそうだ。2列目シートがセパレートしていて中央にウォークスルーできるスペースがあるので、乗り降りに難儀しないのもいい。
一面の銀世界では4WDのありがたみを感じる。実のところ、スタッドレスタイヤを履いていれば2WDで走れないことはないのだが、4WDで走ると予想外の小さな挙動の乱れが抑えられ、安心感が断然違う。雪道かつ登坂路で威力を発揮するのは4WD LOCKだ。何ら気を使うことなく、グイグイ走ることができる。
つまり、オールマイティ。デリカD:5 CHAMONIXはファッションセンスが良くて、力持ちで、運動神経も抜群な、非の打ち所がないアスリートのようなミニバンだ。今回の534kmのロングドライブで、WLTCモード燃費を上回る13.7km/Lの燃費をマークした。すっかり惚れ込んでしまった。
デリカD:5シャモニー(コンプリートパッケージ装着車) 全長×全幅×全高:4800mm×1795mm×1875mm ホイールベース:2850mm 車重:1970kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式 マルチリンク式 駆動方式:4WD エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ エンジン型式:4N14型 排気量:2267cc ボア×ストローク:86.0mm×97.6mm 圧縮比:14.4 最高出力:145ps(107kW)/3500rpm 最大トルク:380Nm/2000rpm 過給機:ターボ 燃料供給:コモンレール式筒内燃料直接噴射 使用燃料:軽油 燃料タンク容量:64L トランスミッション:8速AT WLTCモード燃費:12.6km/ℓ 市街地モード10.1km/ℓ 郊外モード12.6km/ℓ 高速道路モード14.1km/ℓ 車両価格:491万6670円(電動サイドステップ装着車)