現在のポルシェの経営を支えているのが、カイエンやマカンであることは充分に理解しているが、それでもポルシェのアイコンといえば、RRのスポーツカー、「911」である。
上の記事で、サラリーマンの平均給与(民間平均給与)の推移とメルセデス・ベンツC200セダンの価格の関係を調べてみた。今度は、クルマ好きの憧れ「ポルシェ911」についてだ。
まずは、こちらのグラフから。
これは、1997年から2020年の民間平均給与の推移である(データは国税庁給与実態統計調査による)。1997年の467万円をピークに下がり続け、リーマンショック後の2009年には406万円に、その後やや持ち直したが、2020年は433万円だった。
では、911の価格はどう変わっただろうか?
1997年の「993型911カレラ」の車両価格は910万円だった。この年の平均給与所得は467万円。つまり、平均給与所得の1.95倍で素の911カレラが買えたわけだ。
同じ年の日産スカイラインGT-R(R33型)の車両価格は485万5000円だった。ついでにいうと、トヨタ・ソアラの最上級グレード「ソアラ3.0GT Gパッケージ」の価格が345万円。1997年当時の467万円とはそういう価値があったわけだ。
21世紀に入った2001年、911は「996型」にモデルチェンジして、素のカレラの価格は990万円になった。ギリギリ1000万円未満である。同じ頃のトヨタ・スープラRZ(A80型)の価格は448万円だった。平均給与所得が454万円だから、スープラRZと平均給与所得は同じくらい。
911は、平均給与所得の2.18倍になった。
これ以降、素の911の価格は上昇を続け、2019年の「992型(つまり最新型)」では、ついに平均給与所得の3倍を突破。いまや3.23倍となってしまった。
ポルシェ911に限らず、スーパーカーと呼ばれるスポーツカーはおしなべて同じ価格上昇の傾向にある。
V8ミッドシップ・フェラーリは
1999年 フェラーリ360モデナ:1645万円
2021年 フェラーリF8トリブート:3328万円
で2.0倍
アメリカン・スポーツの雄であるコルベットは
1999年 シボレー・コルベット:595万円
2021年 シボレー・コルベット:1180万円
で1.98倍だからほぼ2倍。
となると
2000年 ポルシェ911カレラ:990万円
2021年 ポルシェ911カレラ:1429万円
は1.44倍だから、ポルシェはそれほど価格が上がってないとも言える。
問題なのは、この失われた20年間の間に、我々の給料がちっとも上がってない(下がってる!)ということだ。ほかの先進諸外国は着実に収入も増えている。
1990年代は、クルマ好きが頑張って働いたら、素の911カレラ(の程度の良い中古)くらいは手に入りそうな予感がしていたが、それもいまや夢のまた夢(中古の911の価格高騰もあるけれど)。ポストコロナの政治と経済が、上向きのスパイラルになっていくことを、切に願う。そのためにも、選挙に行かなくては。