ダイハツの不正問題で型式取消処分になったグランマックスってどんなクルマ? トヨタ・タウンエースとマツダ・ボンゴもOEMするクラス唯一の商用車

ダイハツはこのたびの認証不正問題について、2024年12月20日に第三者委員会の調査報告書を受領し、国交省へ報告。報告書内容の事実確認のため国交省による立入検査を受けてきた。さらに2024年1月16日、国交相から是正命令を受領。続く1月26日には3車種の型式取消処分が発表された。対象となった3車種はダイハツ・グランマックス、トヨタ・タウンエース、マツダ・ボンゴ。タウンエースやボンゴは古くからある車種名だが、あまり耳慣れないグランマックスとはどんなクルマなのだろうか?他の2車種との関係は?

ダイハツの「グランマックス」は、ワンボックスボディとトラックボディを設定する5ナンバーサイズ/1.5Lクラスの商用車だ。ダイハツブランドではグランマックスとして販売されるが、OEMとして供給するトヨタ「タウンエース」とマツダ「ボンゴ」の方が著名だ。

ダイハツ・グランマックスカーゴGL

生産はインドネシアのアストラ・ダイハツ・モーターで行なわれており、2008年から日本に導入されている。その際に、生産終了となったタウンエース、ライトエース(2020年まで)として、トヨタブランドも担うことになった。
さらに、このクラスでは日産バネットバン/トラックが2020年に生産終了しこともあり、マツダ・ボンゴもOEM元がバネットからグランマックスに変更された。

ダイハツ・グランマックストラックGL

日産バネットバン/トラックの生産終了により、日産の商用バンラインアップはバネットよりやや大きなNV200とさらに大きなNV350となり、このクラスの商用車はサイズ的に価格的にもグランマックス/タウンエース/ボンゴの3車種(実質1車種)のみという状況だ。加えて、NV200はトラックのラインアップがないこともあり、特にトラックでは他に選択肢がない。

ダイハツ・グランマックスカーゴ
トヨタ・タウンエースバン
マツダ・ボンゴバン
ダイハツ・グランマックストラック
トヨタ・タウンエーストラック
マツダ・ボンゴトラック
メーカーダイハツ/トヨタ/マツダ日産
車名グランマックス/タウンエース/ボンゴNV200
全長4065mm4400mm
全幅1665mm1695mm
全高1930mm1855mm
ホイールベース2650mm2725mm
最大積載量750kg(FR)/700kg(4WD)650kg
エンジン2NR-VE型
1496cc水冷直列4気筒(ガソリン)
HR16DE型
1597cc水冷直列4気筒(ガソリン)
最高出力97ps/6000rpm113ps/5600rpm
最大トルク13.7kgm/4400rpm15.3kgm/4000rpm
トランスミッション4速AT/5速MTCVT(FF)/4速AT(4WD)
駆動方式FR/4WDFF/4WD
価格197万5000円〜234万7000円(ダイハツ)
181万9000円〜234万7000円(トヨタ)
182万2700円〜220万3300円(マツダ)
221万4300円〜279万8400円
バン(5名乗車可)で比較
日産NV200。2019年までは三菱自動車でもデリカD:3(バン)としてOEM販売されていた。実はNV200もグランマックス/タウンエース/ボンゴ以上、ハイエース/NV350以下のクラス(2.0L未満・5ナンバーサイズ)では唯一。

年間6000台販売、累計生産台数2万4000台の独占市場

グランマックス/タウンエース/ボンゴは2020年に現行モデルにマイナーチェンジされてから約2万4000台を販売しており、2023年の販売台数は約6000台だという。この販売台数は月間ベースでも500台/月とそれほど多いわけではない。

マツダ・ボンゴトラック

しかし、このクラスは軽バン/軽トラックでは積載量が足りず、かといってハイエースやNV350、NV200ではサイズが大きすぎるという需要がある。さらに前述の通り、トラックともなるとハイエースやNV系にもラインアップがなく、1.0t〜1.5tクラスのまさに「トラック※」になってしまうため、例え普通免許で運転できるとしてもユーザーの敷居がぐんと上がってしまう。
(※トヨタ・ダイナ、日野デュトロ、いすゞ・エルフ、マツダ・タイタン、日産アトラス)

タウンエースにはトヨタ車体による冷凍車2モデルも設定。
同じくパワーリフト車も用意している。

特にタウンエースは冷凍車(中温冷凍車/クーリング車)やパワーリフト車をラインアップ。幅広い架装も可能になっており、多くの需要に応えてきた。また、ベース価格も抑えられるため、個人・法人問わず事業者にはありがたい存在なのだ。

型式認定は再取得されるのか?またその時期は?

今回の不正は、衝突安全試験において安全装置(エアバッグ)が通常の行程で作動するのではなく、タイマーにより作動させていたということがダイハツより説明されている。この試験の”ズル”が悪質なものとして、型式取消という処分に至った。しかし、量産車での技術実証試験では安全基準への適合が確認されており、既存車の使用や車検等については問題ないとも発表されている。

ダイハツが公開した技術実証試験の様子。

ダイハツではグランマックス/タウンエース/ボンゴは他に無い、代わりの効かない重要な車種と認識しており、型式認定の再取得を目指しているという。
しかし、現状では国土交通省との今後の展開について話し合いを進めている段階であり、その時期については未定。ダイハツでは現在も全車種で生産を停止しており、新車販売については受注が停止されている。生産が再開されたとしても、最悪の場合、グランマックス/タウンエース/ボンゴの型式認定が再取得できないという可能性もゼロではなく、今後の動静に注目したい。

アジアでも需要のある1.5Lクラスワンボックスバン/トラック

グランマックスがインドネシアのアストラ・ダイハツ・モーターで生産されているように、アジア地域でもこのクラスのバン/トラックは幅広く販売されている。
スズキもアジア市場では「キャリイ」の車名で同クラスのトラックを販売しており、もしグランマックス/タウンエース/ボンゴが型式認定の再取得ができず販売再開できなかったとしたら、日本でのこのクラスの需要に応えるために「キャリイ」を日本の規格に適合させて導入される可能性はあるだろうか?

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スズキの看板車種である「キャリイ」は、ロングセラーモデルであることは有名だが、同時に世界戦略車でもある。しかし、定番軽トラックのひとつである日本モデルとの共通点はトラックであることだけ。デザインやサイズも全く異なる別物だ。簡単にいえば"ビッグ"なキャリイなのだ。タイ・バンコクで開催された「モーターエキスポ2023」で、海外版キャリイの実車をチェックしてみた。 REPORT&PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

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