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「 ヒョンデ・コナの○」BEVにありがちな、酔いを誘うような挙動が少ない点
横浜のみなとみらいにR&Dセンターを設け、日本の四季や多様な道路環境に合う日本独自のドライブモードを設定するなど、再上陸を果たしたヒョンデの本気度はかなり高く感じられる。IONIQ 5もNEXOも右ウインカー化されていて、KONAも当然、右ウインカーになる。筆者は、IONIQ 5に一度試乗したことがあるだけだが、あまり見慣れない内外装デザインのテイストは別にしても、走りやパッケージングなど、クルマとしての基本性能の高さは確認済みだった。
現状では、インフラの面から多くの人にとってFCEVよりもBEVが現実的な中、IONIQ 5の全長4635×全幅1890×全高1645mmというボディサイズは、やや大きめ。全幅が1.9mに迫るとなると、駐車場事情も含めて選択肢から外れることもあるだろう。
今回のお題であるKONA(ハワイの地名から命名)は、全長4355×全幅1825×全高1590mmと、ふたまわりくらい小さい。全幅はKONAの方がワイドだが、全長はホンダ・ヴェゼル程度。
最小回転半径は5.4mで、5.99m(いずれも自社測定値)のIONIQ 5よりも断然取り回ししやすい。なお、日本ではBEVのみとなっているが、海外ではガソリンターボやガソリンハイブリッドも設定されているそうで、着座位置などはこうしたICEと同等だという。
なお、KONAは、電力量48.6kWhの「Casual」、64.8kWhの「Voyage」、「Lounge」、「Lounge Two-tone」が設定されている。試乗したのは、64.8kWhの「Lounge」で、150PS(204PS)/255Nmというスペック。一充電あたりの航続距離は、541km(WLTCモード/自社測定値)となっている。
日本の交通事情に合わせて開発されたという「ノーマル」モードから走り出す。パワステの手応えは重めで、ストップ&ゴーを繰り返す街中でもスムーズな発進が可能で、減速時の姿勢もいい。エンジン車からBEVに乗り替えると、加減速のフィーリングがかなり違うこと、急加速と急減速でドライバーでさえ少し酔いそうになるモデルも少なくない。KONAの美点は、従来のエンジン車に似たような加速、減速フィールが得られること。そのほか、乗り心地も比較的ソフトで、BEVにありがちな中低速域での揺すぶられるようなシーンは少なかった。
「スポーツ」モードにすると高速道路でも容易に流れをリードできる加速感が得られる一方で、過剰すぎる感覚もなく運転しやすい。街乗りから高速道路まで普通に乗る分には、「エコ」でも不足は抱かせなかった。そのほか、雪上走行に向く「SNOW」も用意されている。加減速のマナーの良さからすると、スタッドレスタイヤを履けば、雪上でも安心して走行できそうだ。
「ヒョンデ・コナの△」回生レベルセレクターの左右の位置
回生はステアリング裏のパドルで変更可能で、左がプラス(回生力が強くなる)、右がマイナス(回生力が弱くなる)になっている。なお、ステアリングスイッチも左がアダプティブクルーズコントロールや車線維持などのADAS系で、右がオーディオやハンズフリー通話などで、多くの日本車とは逆になっている。回生用パドルのプラスとマイナスも逆だ、逆のモデルが多いような気もするが、慣れれば操作で戸惑うことはなかった。
最も強い回生からコースティング(滑走)まで4段階から選択可能だ。iペダルは、いわゆるワンペダルモードになり、停止まで可能。スマート回生システム(オート)にすれば、回生レベルを前走車との車間距離を自動で保ちながら調整してくれる。なお、メルセデス・ベンツも「D Auto」という似たような回生モードを採用している。
最近は、いざという時にドライバーがブレーキを踏まなくなるおそれがあるなど、安全面などから回生ブレーキ(ワンペダル)で完全停止させるEVやHVなどが少数派になっている。ペダル踏み替えの少なさなどの利点も含め、賛否両論あるものの、安全面からすると最後はメカブレーキで踏ませるのがベターだと思う。じつは、操作性の面も含めて初めてでも戸惑うことはなく、輸入車特有のユーザーインターフェイスの違い(考え方など)に直面することはあまりないだろう。
「ヒョンデ・コナの×」120km/h程度での静粛性
街中での静粛性や乗り心地、操舵に対する車両の反応など、走り全般の印象は良好そのものだが、新東名高速の120km/h区間で走らせると、上限速度では風切り音、ロードノイズともにやや高めに侵入してくる。
また、街中であまり感じさせなかったヨーイングも高速道路での車線変更時などに若干大きめになる印象。とはいえ、速度上限100km/h区間であれば、遮音性も走行安定性にも不満はほとんどなく、動的質感のレベルも想像以上に高かった。
なお、KONAは、466Lの荷室容量を備え、後席の足元、頭上空間ともに十分な余裕が残されているなど、大人4人が無理なく座れるパッケージングに加えて、冒頭で紹介した取り回しのしやすさも兼ねている。
さらに、視認しやすいARナビや外部給電機能の「V2L(Vehicle to Load)」によりアウトドアや災害時でも走る電源としても使える。衝突被害軽減ブレーキをはじめとした先進安全装備も充実している。
価格は399万3000円〜489万5000円で、65万円のCEV補助金も受けられる。日本メーカーは、まだEV自体が少なく、こうしたファミリーユースで使える手頃なEVも多くない。BEVに興味がある層にとって魅力的な選択肢になり得るだろう。