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「思い出の詰まった愛車に乗り続けたい」トヨタが進める復刻パーツプロジェクト
TOYOTA GAZOO Racingにより、2019年にプロジェクト発足が公表され、2020年より受注が開始された「GRヘリテージパーツ」は2024年1月時点で、40系ランドクルーザー、(1960〜1984年)、2000GT(1967〜1970年)、AE86型カローラレビン/スプリンタートレノ(1983〜1987年)、A70系スープラ(1986〜1993年)、A80系スープラ(1993〜2002年)の計5車種が展開されている。
この「GRヘリテージパーツ」プロジェクトでは、各車のユーザーから復刻してほしい部品のリクエストを募るほか、サードパーティの市場動向を分析。長く乗り続けるうえで必要不可欠な、車検の合否を左右する保安部品かつ、自動車メーカーでなければ作りにくい部品から優先的に、復刻が進められてきた。
課題は“型”のない部品をイチから作り直す製造コスト
だが今回のオートサロンでは、80スープラの「PAD SUB-ASSY, INSTRUMENT PANEL SAFETY」(インパネ天面の合皮)、「PANEL ASSY, INSTRUMENT CLUSTER FINISH(前期)」(メーターユニットパネル上部のひさし部分)、「PANEL ASSY, INSTRUMENT CLUSTER FINISH, CTR(前期)」「同(後期)」(メーターユニットパネル中央のフィニッシャー。前期は丸型3連、後期は丸型5連)といった、車検の合否には直結しないインパネ関連の部品が、企画検討中あるいは開発中のものとして参考出品されていた。
こうした方針転換の背景には何があるのだろうか? トヨタガズーレーシングカンパニーの説明員に聞いてみると…。
「ユーザーさんからのご要望が余りにも多いからですね。それに前向きに応えていく姿勢をPRする意味でも、今回参考出品しました」
と、その理由を極めて明快に答えてくれた。
だが、それだけ声が大きいということは、80スープラ特有の症状として劣化しやすい傾向にあるのだろうか?
「インパネの上部、メーターまわりはドライバーが普段最も目にする部位ですので、経年変化が目立ち、気になりやすいというのが大きいですね。しかも修理は容易ではありません。加えて中央のフィニッシャーは、メーター交換などのために脱着した際、ツメが折れてしまい、再度装着できなくケースもままあるようです」
となれば、すぐにでも発売されることを期待したくなるものだが…。
「問題は、部品を製造するための型がもうないものは作り直す必要があり、その製作・維持コストがかかることです。型を無尽蔵に作り続ければ、たちまち型の博物館ができてしまいますから(苦笑)。その結果、製造原価が高くなり、ユーザーの手に届かない価格になってしまえばお買い求めいただけませんので、ビジネスとして成立しません。ですから、ユーザーの方にご納得いただける単価にまでいかに下げられるかが、まずクリアすべき課題になります」
なおメータークラスターに関しては、2024年2月以降発売予定であることが「GRヘリテージパーツ」webサイトで告知されている。またオートサロン会場には「トノーカバーASSY」も展示されており、こちらはすでに発売中だ。
そのほか「BELT ASSY, OUTSIDE AND BUCKLE SIDE」(シートベルトASSY)も「PAD SUB-ASSY, INSTRUMENT PANEL SAFETY」と同様に「企画検討中」の部品として参考出品されていたが、復刻の実現を願ってやまない。