ピックアップトラックブーム到来!? 三菱トライトン発売に続け! いすゞには新型「D-MAX」を日本市場に導入してほしい!!

三菱トライトンの再導入で、注目が高まっている国産ピックアップトラック。日本でも、トヨタハイラックスとの選択が可能となったことは朗報だ。しかし、世界では、他にも活躍する日本のピックアップトラックがある。そのひとつが、いすゞD-MAXだ。タイでは圧倒的な人気を誇り、2022年度のピックアップトラックカテゴリーでのシェアは45%にも上ったという。そんなD-MAXが、2023年10月にビッグマイナーチェンジを実施した。2023年12月に開催された「バンコクモーターエキスポ2023」での実車確認新型で感じたD-MAXの特徴と魅力をお届けしよう。
REPORT&PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

カッコよさはそのままに!
ルックスと先進機能を強化したビッグマイナーチェンジ

いすゞD-MAXは、2002年に同社のピックアップトラック「ファイター(2WD)」と「ロデオ(4WD)」の後継車として誕生。三代目となる現行型は2019年10月デビューだ。

D-MAX(2019)

SUVのようなスポーティかつ力強いフロントマスクが与えられ、LEDライトやインフォテイメントシステムなど最新技術も積極的に採用。高性能な3.0Lディーゼルターボエンジンを新開発し、高出力化と低燃費化を図るなどパワートレインも進化させ、乗り心地についても向上を図っている。
つまり、全面的に現代化と乗用性能を磨いたのが、現行型なのだ。

D-MAX V-CROSS(2023)

よりアグレッシブでスポーティになったエクステリア

今回のビッグマイナーチェンジでは、前後マスクのデザインを一新。新モデルのコンセプトである「剛」(STRONG&AGGRESSIVE)、「駆」(SPORTY)、「進」(FUTURISTIC & DIGITAL)を表現したという。
フロントマスクでは、ボンネット中央部にパワードームを追加。フロントグリルのデザインも変更され、よりワイドで立体的な形状としたほか、グリル内のメッキパーツもよりシャープになっている。

D-MAXのフロントグリル(V-CROSS)

またフロントサイドにあるロアグリルもトライアングル形状となった。ヘッドライトも変更され、デイライトの配置が下側から上側となり、大きく印象を変えている。その結果、より力強さとスポーティさが高められている。
またフロント部ほどの設計変更はないものの、リヤテールランプの形状が改めら、縦目角型の片側2連装から片側3連装となり、L字のキャラクターラインも加わっている。

D-MAX V-CROSS

上質感を高め装備を充実させたインテリア

D-MAX(V-CROSS)のダッシュボード。

もちろん、インテリアにも手を加えている。
まずはコクピットだが、ダッシュボードデザインこそ受け継いでいるものの、インフォメーションシステムとトランスミッション付近のデザインを変更している。

D-MAX(V-CROSS)の運転席まわり。乗用車と遜色無いデザインだ。パーキングブレーキはレバー式となる。
シフトレバーを中心に主にドライブ系のスイッチを配置したセンターコンソール。写真右のダイヤルが2WDと4WDのモードセレクト。

最大の目玉は、進化したインフォメーションシステムだ。7インチ及び9インチのタッチスクリーンには、新たにダイヤルスイッチを追加することで、操作性を向上させた。

タッチスクリーンを採用したインフォテインメントシステム。ディスプレイは7インチと9インチが用意され、画面の下にはタッチ式のスイッチ、その左右にダイヤルスイッチが配置される。

さらに上位仕様では、メーターパネルを一新。スピードメーターを中央配置し、その内部に7インチのインフォテイメントディスプレイを追加している。

D-MAX(V-CROSS)のメーター。左から回転計、速度計、水温計と燃料計の配置。速度計の中心はカラーディスプレイだ。

この他では、上位モデルのトリムやシート生地にミウラ折りパターンをモチーフとしたデザインを取り入れることで、モダンさと高級感を表現したとしている。

D-MAX(V-CROSS)のフロントシート。
D-MAX(V-CROSS)のリヤシート。

4WDの走行性能だけでなく先進安全運転支援機能も強化

メカニズムでは、4WD車の走行性能や新世代のステレオカメラによる先進の安全運転支援機能の強化が図られた。まさにSUVのような乗用性能と安全性能を持ち合わせるピックアップトラックに進化させている。

D-MAX(V-CROSS)に搭載される4JJ3-TCX型3.0DDiブルーパワーエンジン。

パワートレインは、変更はなし。姉妹車であるMU-X同様に、全車が直列4気筒クリーンディーゼルターボエンジンを搭載する。
RWD専用となる1.9Lエンジンは、最高出力150ps、最大トルク350Nmを。RWDと4WDのいずれも選択可能な3.0Lエンジンは、最高出力190ps、最大トルク450Nmをそれぞれ発揮するのも同様だ。
トランスミッションはトラックらしく6速MTが基本となり、一部グレードに6速ATが用意されている。駆動方式もFRが基本で、シリーズ内で 4WD仕様となるのは「V-CROSS」のみである。

D-MAXの中でも乗用SUVテイストが強い上級グレードの「V-CROSS」。
4WDはデフロック機構やラフロードモードが用意されるほか、インフォテインメントシステムには傾斜計も用意される。

シングルキャブ・スペースキャブ・クルーキャブの3ボディ

5名乗車の4ドアモデル「クルーキャブ」。最低地上高を増したハイランダー仕様(写真左側)には、サイドステップが備わる

ボディタイプは、最もスタンダードなシングルキャブ「レギュラーキャブ」を始め、フロントシート後ろのスペースを拡大して観音開きドアを与えたエクステンドキャブ「スペースキャブ」、後席付の 5名乗車が可能なダブルキャブ「クルーキャブ」を用意する。最もスタンダードなレギュラーキャブを除き、スペースキャブとクルーキャブには、上位モデルの設定もある。

2ドアベースの観音開き仕様で2名乗車となる「スペースキャブ」。
スペースキャブはシート後方に広めのエクステンドスペースを儲けている。
スペースキャブ。シングルキャブに次ぐ大きめの荷台が持ち味だ。
スペースキャブの展示車両は6速MTだった。装備もシンプル。

豪華仕様の「V-CROSS」とスポーティモデル「Xシリーズ」

V-CROSSのカスタム車。タイにも拠点を持つオーストラリアのカスタムブランド「TJM4×4」が手掛けたもの。

今回の主役は、やはり、4WDの最上級モデル「V-CROSS」だ。内装の仕上げや装備は、姉妹車のSUV「MU-X」に近いものとなるが、エクステリアデザインに加え、インテリアでも、シート表皮やドアトリムなどで差別化を図る。より力強い顔つきやピックアップスタイルがワイルドでカッコ良い。

いすゞ・ミューに新型が登場!? 海外で人気のピックアップ「D-MAX」をベースにしたSUV「MU-X」をチェック! 日本で買えないのが残念すぎる

かつてはこだわり満載の個性的な乗用車を送り出し、コアなファンを抱えていたいすゞ自動車だが、2002年にSUVを含め日本での乗用車販売から撤退してしまったことは、皆さんもご存じの通り。現在は、日本を代表する商用車メーカーのひとつとして国内外で活躍しているが、海外市場においては、今もSUVを作り続けている。その名には、かつて日本では販売されていたモデルを彷彿させる名が与えられている。そのいすゞ最新SUV「MU-X」を、タイ・バンコクのモーターショー「モーターエキスポ2023」でチェックした。 REPORT&PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

V-CROSSのダブルキャブだと、3人掛けの後席が備わる。前席同様にレザーのコンビシートとなり、作りもしっかり。ただ足元こそゆとりがあるが、リクライニング機能はない。
さらにリヤサスペンションも積載性を重視し、リーフスプリングとなることを考慮すると、やはりストイックな存在といえる。まさに”漢のクルマ”って奴である。

最新情報もお伝えしよう。2024年1月30日に、新たな仲間となるチョイ悪なドレスアップ仕様「Xシリーズ」が加わった。Xシリーズは、手頃さとカッコよさを追求したモデルのため、V-CROSSのような豪華仕様ではなく、エンジンも1.9Lのみとなるが、レッドトーンの専用メーターパネルデザインや新採用となる8インチのインフォメーションシステム、プレミアムスポーツシートなど魅力的なアイテムが備わっている。

「Xシリーズ」のカタログより抜粋。レッドメタリックのフロントグリルとエアロがイケている。(ISUZU Thailand)

ドレスアップモデルのためFR専用となり、ボディ仕様は標準スタイルの「スピード」と、最低地上高を増したクロスオーバースタイルの「ハイランダー」を用意。キャビンスタイルは、「スペースキャブ」と「クルーキャブ」のふたつから選択可能だ。

「Xシリーズ」のカタログより抜粋。このスタイルなら、敢えてMTを選びたくなる!?(ISUZU Thailand)

こいつは、愛車をビジネスとプライベートで共用する若いユーザーをターゲットとした遊び心のある仕様なのだ。タイの豊かなピックアップトラック文化を象徴する存在ともいえよう。

D-MAX「Xシリーズ」のオフィシャルプロモーションムービー。

タイでの現地価格は? 日本円に換算すると……

最後に価格を見ていこう。今回は、日本で販売されるピックアップトラックに最も近いV-CROSSと新モデル「Xシリーズ」を取り上げる。

V-CROSSが91万7000バーツ(3.0Lディーゼル2ドアスペースキャブZグレードMT車)~125万7000バーツ(3.0Lディーゼル4ドアクルーキャブMグレードAT車)なので、日本円では約382万円~約524万円となる。
Xシリーズが75万5000バーツ(スピード2ドアスペースキャブMT車)~102万4000バーツ(4ドアクルーキャブMT車)なので、日本円では約315万円~約427万円となる。
(1円=4.17バーツ換算/2024年1月上旬時点)

V-CROSSクルーキャブ。

仮にV-CROSSを日本導入するならば、新型トライトン同様の価格となるだろうが、FRのドレスアップ仕様「Xシリーズ」ならば、より現実的な価格が期待できそう。もちろん、キャブオーバートラックとバスのみとしているいすゞから、ピックアップトラックを再導入させることは非現実的な願いとなることが寂しい限り。
ただ、このようなストリートスタイル仕様をメーカー自ら用意することからも、D-MAXのタイでの人気の高さが伺え、嬉しくなる。今後も彼の地での活躍を期待したい。

D-MAXクルーキャブ

D-MAXフォトギャラリー(バンコクモーターエキスポ)

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…