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いまどきのキャンピングカーにはエアコン搭載がマストな時代
ここ2、3年のキャンピングカー市場のムーブメントと言えば、やはり車中泊用クーラーの広まりではないだろうか。パーキングクーラーとも言われるこの装備は、駐車時にサブバッテリーや外部電源を使って動かす冷房のことである。
周知の通り、昨今の日本の夏は“沸騰状態”に入ったと言われており、気温が40℃近くになることがざらだ。そんな気温下で車中泊をすれば、当然熱中症になる恐れがある。これまでも駐車時に使うエアコンやクーラーは流通していたが、オートキャンプは涼しい高原や海辺でするからファンがあれば大丈夫というユーザーが少なくなかった。
しかし、この異常気象によって高原でも夜間30℃以上という場合もあり、熱中症が心配されるような事態になっている。キャンピングカーの宿泊施設「RVパーク」では、パーキングクーラーを装備していない車両は使用お断りといった場所でも出てくる始末で、冬場のFFヒーターと共に、もはや日本のキャンピングカーにはクーラーが必需品となりつつあるのである。
3種類の電源を使うことができるパーキングクーラーが登場
パーキングクーラーにはいくつかの種類があり、12Vで動く車載用、100Vで動く家庭用エアコンのいずれかを装備するのが一般的になっている。一般論として言えば、車載用はコンパクトで車両への取り付けがしやすいが、家庭用は熱交換(室外機)の取り回しに工夫が必要となる。逆に性能的には家庭用の方が優れており、エアコンであれば暖房としても使える利点がある。
かつて家庭用エアコンはキャブコンのような大型の車両に取り付けることが多かったが、昨今は室外機の取り付け場所を車両床下などにすることで、バンコンにも装着されるようになった。また、後部横の窓をアクリルパネルに交換して、その裏にエアコンを取り付ける車両も出てきている。
先だって開催された「ジャパンキャンピングカーショー2024」で注目を集めていたのが、フロットモビールが発表したパーキングクーラーだ。同社製のタウンエースをベースにしたバンコン「シュピーレン」用としてリリースされたものだが、これはかのデンソーと共同で開発したものになる。
非常にコンパクトで、車内への張り出しが少ない。また廃熱口は車両下部にわずかに張り出すだけなので、取り付け後も愛車の見た目が大きく変わらないのも美点だ。キンキンに冷えた冷風が出るというわけではないが、扇風機と併用すれば寝苦しい熱帯夜をやり過ごすことは十分に可能だ。
このエアコンの美点は、3種類の電源を使うことができる点である。一つ目はサブバッテリー、2つ目はオートキャンプ場にある100V外部電源、そして3つ目はポータブル電源に接続して使うことができるのである。昨今は1000W以上のポータブル電源がスタンダードになっており、また値段もこなれてきた。もちろんサブバッテリーは必需品だが、仮にこれがエンプティになった場合でも、ポータブル電源で継続して使えるのは実に嬉しい。
どのように電源を確保するかが、パーキングクーラー導入のキモになる
夏場を快適にしてくれるパーキングクーラーだが、問題点も理解しておく必要がある。まずどんなサブバッテリーを積んでいるかによって稼動時間も変わってくるが、ものによっては2時間程度の場合もある。しかし、子どものいる家庭であれば、やはり7時間以上は使いたいし、外部電源がある場所でいつも車中泊できるとは限らない。
昨今はサブバッテリーにリチウムイオンバッテリーを使うことがスタンダードになりつつあるが、充電システムの安全性や耐久性の点を考えると、まだ様子見というビルダーもいる。ただリチウムイオンバッテリーの装備で、パーキングクーラーを10時間以上稼動させることに成功したビルダーがいることもたしかだ。
ただし、リチウムイオンバッテリーは充電システムによっては満充電にするのに時間がかかり、さらには夏場の充電器の熱問題、大容量電流の充電器と家電との併用の問題なども出てくる。つまり、酷暑の中でエアコンを使って連泊するというのは、実はよほど考えて電装系システムを組まないと使い物にならない場合があるということだ。ユーザーの声を拝見すると、エアコンを使いながら充電し、さらに家電を使うと充電スポットのブレイカーが落ちまくったという話もある。
今乗っている愛車にエアコンやクーラーを取り付けるのは簡単だが、現状のサブバッテリーや充電器をすべて見直す必要もあるかもしれないし、場合によっては車内のコンセントさえもアンペア数の高いものに交換する必要が出てくる可能性があるということだ。
とは言え、もはやパーキングクーラーの装備は必須と言える。各ビルダーの造詣も深くなっているのでさらに進化しそうだが、愛車を購入検討する場合はオプションの電装系選びも熟考した方が良さそうだ。