元F1ドライバー佐藤琢磨がHRCのエグゼクティブ・アドバイザーに就任! 四輪レース強化への思いとともに内燃機関へのコダワリも吐露?

HRCといえばかつてはホンダの二輪モータースポーツ活動を担う組織だったが、2022年からは国内外の四輪モータースポーツ活動も行っている。2024年シーズン開幕を前にしてHRCは、日本が誇るレジェンドドライバーである佐藤琢磨が同社のエグゼクティブ・アドバイザーに就任することを明かした。


ホンダのモータースポーツ活動を担っている株式会社ホンダ・レーシング(HRC)が、現役レーシングドライバーの佐藤琢磨とアドバイザリー契約を締結し、エグゼクティブ・アドバイザーに迎えることを明らかにした。

HRCは現在、日本国内外におけるホンダのモータースポーツ活動を行っている。四輪競技にも活動範囲を広げて3年目となる2024年、HRCは四輪領域での飛躍を狙いエグゼクティブ・アドバイザーという職を設けた。
同職の役割は、国内外のドライバー育成戦略やプログラムの策定、レースの参戦計画や運営体制など、四輪レース活動全体に対し、助言・サポートとなる。また、HRCは同ブランドによる商品の展開を目指しているが、琢磨はトップレーシングドライバーとしての知見を活かして開発に携わることになるという。

2020年に2度目のインディ500制覇を果たした佐藤琢磨

琢磨は1997年、鈴鹿レーシングスクールフォーミュラ(SRS-F/現在のホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿=HRS)を首席で卒業。2001年にイギリスF3選手権に参戦すると、翌2002年にジョーダンからF1デビューを果たした。F1ではBARホンダからのエントリーとなった2004年、第9戦アメリカGPで3位表彰台を獲得するなど活躍。2010年にアメリカのトップフォーミュラシリーズであるインディカーに活動の場を移すと、世界三大レースに数えられるインディ500を2017年と2020年に制覇し、モータースポーツの歴史に名を残した。
現在はHRSのプリンシパル(校長)として若手ドライバーの育成に携わる一方、ドライバーとしても現役であり、2024年は古巣であるレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングから、インディ500に参戦することが発表されている。

2020年に2度目のインディ500制覇を果たした佐藤琢磨

琢磨のエグゼクティブ・アドバイザー就任に際し、HRCの渡辺康治 代表取締役社長は琢磨のキャリアの歩みにも触れつつ次のようにコメントした。
「ホンダとのつながりはスクール時代に始まり、F1参戦やインディ500の優勝といったこの上ない喜びも、また世界最高峰を戦うなかで乗り越えてきた苦しい時代もホンダともにありました。スクールも含めて実に27年になります。そのなかで強調したいのは、決してホンダが用意したレールの上を歩んできたわけでなく、夢の実現を自らの突破力で切り開いてきた点です」
「琢磨さんが“ノーアタック・ノーチャンス”と掲げているように、常に夢を持ち、挑戦し続ける姿はHRCの活動との共通点であり、大変重要な点であるというふうに考えております」
「こういった観点で、琢磨さんはHRCの四輪レースの強化に当たって欠かせない存在だという思いで、エグゼクティブ・アドバイザーへの就任をお願いして、快諾をいただきました」

HRCの渡辺康治 代表取締役社長(左)と握手を交わす佐藤琢磨(右)

一方の琢磨は、エグゼクティブ・アドバイザーとしての具体的な活動については今後協議しながら固めていく方針であることを明かしつつ今後の展望を語った。
「私自身の活動は2024年も、インディ500への挑戦を含め、ひとりのレーシングドライバーとして可能な限り挑戦は続けていきたいという思いで、HRCさんにもご承諾いただきました。その一方で、2019年から務めさせていただいているHRSのプリンシパルとして、若手ドライバーとこれからのホンダ、未来について考えるようになりました。育成に携わらせていただいているなかで、自分のこれまでの経験をHRC、とくに四輪レース活動の強化に対して共感していただき、私自身できることはすべてお手伝いをさせていただくという思いでいます」
「今は思いだけではどうすることもできない非常に難しい時代になっていますが、HRCとしてサポートできるところ、私がひとりのレーシングドライバーとして若手と向き合い、彼らが今後自立して世界に羽ばたいていくのを、気持ちだけではなく応援したい。そこをHRCさんと一緒にやっていきたいと思います」
「今後はHRCとして活動していく際に、これまで欧州ならびに北米で培ってきた経験を存分に活かして、最大限のサポートをして、HRCの四輪モータースポーツの強化に100%の力でお手伝いをさせていただきたいという思いです」

また、HRCブランドの商品開発については、昨今の状況を踏まえて「EV化という方向にいくのはもちろんなのですが……」と前置きしつつ、「やはり走る楽しさ、それからカーボンニュートラルが前提になりますが、やっぱり自分としては内燃機関、エンジンですよね」と、率直な思いを吐露。
「気持ちよさと高回転・ハイパワーというところは、HRCブランドならではというところを一緒にできれば。これは僕の個人的な希望なので、まだエンジニアさんたちとは話していないのですが(笑)、そういうことが可能になれば楽しいなと思います。若者たちがクルマを所有するのが難しい時代になっていますけど、それをなるべく身近な存在でお届けできるプランニングができればなと考えています」

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