クラウンスポーツRS(PHEV)は外から見てカッコ良く、乗り込んでカッコイイ。もちろん運転も楽しい

トヨタ クラウン スポーツ RS(2.5Lプラグインハイブリッド車)
シリーズ随一のスポーツ性を誇るクラウンスポーツ。そのなかでも、RSを名乗るPHEVモデルは、一際スポーティな仕上がりだ。レッドのブレーキキャリパー(対向6ピストン)が心躍らせる。クラウンスポーツRS(PHEV)に公道試乗した。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:Motor-Fan

システム出力306psのPHEVパワートレーン

ボディ色はブラック×アッシュ(5万5000円のオプションカラー)

トヨタ・クラウンには4つのボディタイプがある。クロスオーバーとセダン、スポーツ、それにエステート(2024年央以降発売予定)だ。ボディタイプを4つ用意したのは、多様化するユーザーのライフスタイルやライフステージに応えるため。セダンが快適性を重視した一方、スポーツは操る楽しさをより重視して作り込まれている。

パワートレーンも多様化に応える形で多くのタイプを設定している。クロスオーバーは2.5Lハイブリッド車と2.4Lターボ・ハイブリッド車を設定。セダンは2.5Lハイブリッド車と燃料電池車(FCEV)。スポーツは2.5Lハイブリッド車とプラグインハイブリッド車(PHEV)を設定する。

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今回は2.5Lハイブリッド車の発売に遅れること約2ヵ月、2023年12月に発売されたスポーツのPHEVに試乗した。

PHEVの特徴は、2.5Lハイブリッド車と同じ2.5L直列4気筒自然吸気エンジン(A25A-FXS型)を搭載しながら、大容量(18.1kWh)の電池を積むことで、しっかりとモーターで加速する出力を出せること。アクセルペダルを踏んだ直後に一気にトルクが立ち上がるレスポンスの良さとシームレスな加速がPHEVの身上だ。

誤解されがちだが、高出力のモーターを搭載すれば、自動的に高い出力が発揮できるわけではない。モーターの性能に見合ったバッテリー出力とセットでなければ、高い出力を発生することはできない。バッテリー出力は容量に比例するため、大きな出力を発生させようとした場合、ある程度の容量が不可欠になる。

それでも足りない分はエンジンを始動して発電し、電力を補うことになる。バッテリー出力が大きければそのぶんエンジンの出番は少なくて済み、モーター駆動特有の静かな走りが堪能できる。2.5Lハイブリッド車、PHEVとも、リヤに最高出力40kW、最大トルク121Nmのモーターを搭載する4WDだ。

エンジン形式:直列4気筒DOHC エンジン型式:A25A-FXS 排気量:2487cc ボア×ストローク:87.5mm×103.4mm 圧縮比:- 最高出力:177ps(130kW)/6000rpm 最大トルク:219Nm/3600rpm 過給機:× 燃料供給:DI+PFI(D-4S) 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:55ℓ

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エンジンは横置き

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燃料はレギュラーガソリン

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燃料供給はPFi(ポート噴射)とDI(筒内燃料直接噴射)を併用するD-4S

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フロント 5NM型交流同期モーター  最高出力182ps(134kW)  最大トルク270Nm

システム最高出力は2.5Lハイブリッド車の172kW(234ps)に対し、PHEVは225kW(306ps)を発生する。PHEVは2.5Lハイブリッド車より220kg重い(車両重量2030kg)ので、システム最高出力の差がそのまま加速力に反映されるわけではないが、パワフルなパワーソースを積んでいることに違いはない。アクセルペダルをべた踏みしても首がのけぞるほどの強烈な加速を披露するわけではないが、スポーツの名に恥じないだけのダッシュ力を披露する。あくまでも上品さを失わない範囲で。

リヤモーター 4NM型交流同期モーター  最高出力54ps(40kW)  最大トルク121Nm 見えているのはDRS(リヤステアシステム)

PHEVの良さは、日常使いでは電気自動車(BEV)と同等の使い勝手が享受できることだ。カタログに載るEV走行換算距離は90kmなので、日常のほとんどはEV走行でカバーするだけの実力を備えている。アクセルを床まで踏み込むような加速をすると、出力を補うためにエンジンが始動するが、音も振動もよく抑えられているので、快適な走りを損なうことはない。

クラウンスポーツPHEVは急速充電(CHAdeMO)に対応している。

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左が普通充電(200V)右がCHAdeMO急速充電口

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左が普通充電(200V)右がCHAdeMO急速充電口

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給電口は右リヤにある

クラウン・スポーツPHEVの特徴は、普通充電だけでなく急速充電に対応していることだ。新型プリウスにもPHEVの設定はあるが、プリウスPHEVは普通充電にしか対応していない。聞けば、インフラの整備状況が影響しているという。高速道路のサービスエリアや商業施設などにある急速充電器はBEVユーザーを優先したいとの考えから、PHEVへの急速充電の対応は控えていたのだという。

ところがインフラが整ってきたこともあるし、ユーザーからの要望もあり、クラウン・スポーツPHEVでは急速充電のインレットを標準装備とした。住宅や電気製品に電力を供給するV2Hにも対応する(別売りの外部充電器が必要)。

RSのスポーツネスは外観からも見てとれる

全長×全幅×全高:4720mm×1880mm×1570mm ホイールベース:2770mm
トレッド:F1605mm/R1615mm 最低地上高:155mm
車両重量:2040kg 前軸軸重1150kg 後軸軸重890kg(車検証上)

クラウン・スポーツは車名が表すとおり、クラウンのラインアップのなかでスポーツ色が最も濃いボディタイプだ。PHEVは2.5Lハイブリッド車にも増してスポーツ色が高められている。PHEV専用のアイテムによって、クルマに乗り込む際に「スポーツ」がより色濃く感じられる仕掛けだ。

マットブラック塗装のPHEV専用ホイールからは(2.5Lハイブリッド車はグロスブラック塗装)、赤く塗装されたアルミキャリパーが覗く。「OP-6」は、「対向6ピストン」の意味だ。もちろん色だけが特色ではなく、ストッピングパワーが高められている。

フロントブレーキは対向6ピストンのアルミキャリパー
キャリパーには「OP-6」(対向6ピストンの意味)と書かれている。

ドアを開けると、ブラックで統一された運転席の向こうに、鮮やかなレッドの内装が目に入る。クルマに近づき、運転席に乗り込むまでのシーンで高揚感をもたらす演出だ。センターコンソールやダッシュボード、ドアトリムに配された表皮にはラスターという光輝剤を入れ、光沢と陰影の両立を図ったという。クラウン・スポーツの世界観にふさわしい、上品な色合い、風合いだと感じた。

内装色はブラック&センシュアルレッド

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ステアリングホイールにはレッドのステッチ+ディンプル加工が施されている。PHEVにはパドルシフトが付く

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赤の差し色は随所に入っており、ディンプル加飾のステアリングにはかがり縫いの赤ステッチが施されており、シートにも赤ステッチが入っている。シートベルトは後席も含めて赤で統一。シフトノブはブラックのディンプル加飾となる。

PHEVを選択すると自動的に赤内装となり、ほかのカラーは選べない。割り切った設定だ。センスのいい仕立てであり、筆者は好意的に受け止めた。

機能面ではダンパー(ショックアブソーバー)の減衰力を可変制御するAVS(Adaptive Variable Suspension system)を標準装備するのが、2.5Lハイブリッド車との違い。ドライブモードセレクトでSPORTを選択した場合は、電動パワーステアリングの制御だけでなく、AVSの制御も「スポーツ制御」に切り替わる。

実はスウィングバルブを使った2.5Lハイブリッド車のダンパーも出来が良く、しなやかな乗り味と動きを作り出す。AVSはクラウン・スポーツが持つしなやかな乗り味はそのままに、よりスポーツ性を感じさせる制御を付加した印象。持ち前のしなやかさを失わずに、SPORT選択時は引き締まった乗り味を提供する。

クラウンスポーツPHEVは外から見てカッコ良く、乗り込んでカッコイイ。走らせると、静かでスムーズでしなやかで、運転が楽しくなる。同じスポーツでも、2.5Lハイブリッド車とは心の弾み具合が違う。

タイヤ:235/45R21
ミシュランのe-PRIMACY
フロントサスペンションはマクファーソンストラット式
リヤサスペンションはマルチリンク式

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後席は左右シートヒーターを装備。これはPHEV専用装備だ。
RS専用装備のスポーツシート。前席はシートヒーター(3段階温度設定)とベンチレーションを装備
トヨタ クラウン スポーツ RS(2.5Lプラグインハイブリッド車)
全長×全幅×全高:4720mm×1880mm×1570mm
ホイールベース:2770mm
車重:2030kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:A25A-FXS
排気量:2487cc
ボア×ストローク:87.5mm×103.4mm
圧縮比:-
最高出力:177ps(130kW)/6000rpm
最大トルク:219Nm/3600rpm
過給機:×
燃料供給:DI+PFI(D-4S)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:55ℓ
モーター:
フロント 5NM型交流同期モーター
 最高出力182ps(134kW)
 最大トルク270Nm
リヤモーター 4NM型交流同期モーター
 最高出力54ps(40kW)
 最大トルク121Nm

駆動方式:4WD(E-Four)
WLTCモード燃費:20.3km/L
 市街地モード17.5km/L
 郊外モード21.5km/L
 高速道路モード21.0km/L
充電電力使用時走行距離90km
車両価格:765万円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…