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なぜ「空母化」が必要とされるのか?
2018年末に閣議決定された防衛大綱・中期防衛力整備計画で、「いずも」型護衛艦2隻(「いずも」「かが」)にF-35B戦闘機を搭載・運用を可能とする「空母化」を打ち出した。
2015年に1番艦が就役した「いずも」型護衛艦は、1970~80年代の「はるな」/「しらね」型、そして2009年就役の「ひゅうが」型に続くヘリコプター搭載護衛艦(DDH)である。DDHは、もともと海上自衛隊の重視する対潜能力向上のため、対潜ヘリコプターの運用能力を高める目的で登場した艦種であり、冷戦後には災害救援・人道支援なども視野に入れた多用途艦的な役割が期待されるようになった。「ひゅうが」型より全通甲板を採用し、ヘリの運用能力が拡大されている。
「いずも」型では前級「ひゅうが」型を上回る5機同時のヘリ離発着艦能力を持ち、ヘリ空母として高い能力を有していた。船体は引き続き全通甲板となったが、全長は248mの巨艦となり、他国の軽空母に匹敵する規模となった。そのため、はやくから「空母化」の噂は絶えなかったが、防衛省は繰り返し否定してきた。
しかし、2010年代を通して中国の海軍力は急成長し、東シナ海はもちろん、西太平洋での活動も常態化したことから、政府は南西諸島防衛のため、戦闘機部隊の展開能力を支える基盤として「いずも」型へのF-35B戦闘機運用能力付与を決定するに至った。
海上自衛隊初の「空母」部隊がもうすぐ誕生する
改装は1番艦「いずも」から開始された。2020年、「いずも」はF-35B着陸時の排気熱対策である甲板の耐熱強化などを施すため第1次改修を受け、今年2024年には発艦の安全確保のため艦首を広げるための第2次改修を受ける予定だ。「かが」では、これら改修をまとめて2021~23年に実施。冒頭で紹介したように、矩形の艦首を備えた姿となって帰ってきた。
F-35Bは、アメリカ海兵隊が運用している短距離離陸・垂直着陸(STOVL)型戦闘機であり、海兵隊部隊の母艦である「ワスプ」級や「アメリカ」級強襲揚陸艦で運用されている。「ワスプ」級、「アメリカ」級とも全長257mで、「いずも」型とほぼ同じであり、この点からもF-35Bの離着陸に問題がないことがわかる。すでに「いずも」では、第1次改修ののちアメリカ海兵隊のF-35Bによる発着艦試験が行われている。
また、搭載されるF-35B部隊(航空自衛隊所属)は今年2024年に宮崎県新田原基地で発足する予定であり、海上自衛隊にとって初となる「空母」部隊の誕生は目前まで迫っている。