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アストンマーティン・レーシングが精巧に組み上げたパフォーマンスモデル
ヴァンテージGT3と同様に、新しいヴァンテージGT4は、アストンマーティン・レーシング(AMR)によって設計、エンジニアリング、製造されている。2005年以来、アストンマーティンの公式GTレーシング・パートナーであるAMRは、伝説的なDBR9以来、すべての市販車ベースのアストンマーティンGTレーシングカーを手がけている。20年に渡って積み上げられたノウハウは新型ヴァンテージGT4に直接反映されている。アストンマーティン・ヴァンテージGT4プログラムは、複数のタイトルを獲得した現行GT4レーサーをベースに構築されており、新型ヴァンテージのロードカーに適用された開発を利用して、最新世代のレースカーでさらなる性能向上を達成している。
厳格なレギュレーションにより、GT4ヴァンテージは市販車の兄弟車と非常に近い状態を維持しており、レースカーはロードカーの構造およびメカニカルアーキテクチャの約80%を共有している。その中心となっているのが、ボンディングされたアルミニウム製シャシーで、ボディワークが取り付けられる前に、厳しい安全要件を満たすためのフルカスタム・ロールケージが装着される。この特注ソフトウェアは、8速トランスミッションをオートモードなしの6速パドルシフトに「変換」し、巡航速度での燃費を向上させるために7速と8速のオーバードライブ比をロックアウトする。
電子制御システムの変更は、主にエンジンのマネージメントとターボ制御システムを正確に制御し、GT4選手権主催者が定める厳格なバランス・オブ・パフォーマンス基準を満たすために行われた。また、ギアシフトを最適化し、モータースポーツ特有のトラクションコントロールを作動させるためにも採用されている。ヴァンテージGT4のコックピットには、ロードカーの計器ビジュアルに代わる最新のボッシュ製DDU11ディスプレイも装備されている。
市販ロードカーをベースにレギュレーションに最適化されたボディエレメント
シャシーの変更もレギュレーションによるものだ。インボード・サスペンションの取り付けポイントは市販ロードカーと同じで、サスペンション・リンケージに若干の変更が認められている。これは、レーシング用途に適したキャンバー範囲を確保するためであり、また、新型ロードカーに装着される21インチホイールよりも大幅に小さい18インチ径のホイール&タイヤパッケージに適合させるためである。ヴァンテージGT4は、AMR仕様の新しい特注鍛造アルミホイールを使用している。
ヴァンテージGT4のボディパネルの大部分は一般的な生産品で構成されている。ボンネットは例外で、エアアウトレットを組み込むことができ、持続可能な天然亜麻繊維の複合材で作られ、コルクの芯材で補強されている。GT4レギュレーションでは、エアロダイナミクスの変更も制限付きで認められており、新型ヴァンテージGT4では、フロントスプリッターの大型化と新しいリアウイングが追加されている。その結果、従来のヴァンテージGT4に比べてダウンフォースが増加し、空気抵抗が減少している。
また、エアフロー・マネージメント、特にエンジンとブレーキへの冷却空気にも注意が払われている。どちらも新型ヴァンテージのデザインから恩恵を受けており、ラジエターの開口部が大きくなったことで、エンジンの冷却システムにより大量の空気が流れるようになった。また、ブレーキへのダクトエアも大幅に増加した。これらの改良は、リアウイング上のエアフローを乱すことなく達成された。