フィアットの世界観を体現した遊べるミニバン「フィアット・ドブロ」【最新ミニバン 車種別解説 FIAT DOBLO】

ヨーロッパの小型商用車のフィアット版が「ドブロ」。1.5ℓディーゼルエンジンに2列5人と3列7人定員の二つのグレードが用意され選択肢は至ってシンプル。装備もシンプルながら厳選され、同サイズのヨーロッパ発のミニバンよりも価格は抑えめ。インテリアは黒で統一され、荷室の開口部はスクエアで実用性は高い。素直でキビキビとした操縦性も好感触。
REPORT:岡本幸一郎(本文)/遠藤正賢(写真解説) PHOTO:中野幸次 MODEL:平岡明純

装備を厳選して低価格を実現 ディーゼルターボで走り軽快

欧州にはフルゴネットと呼ばれる小型商用車があり、そのフィアット版がドブロとなる。2代目までは自社で開発していたが、ステランティスの始動に伴い、現行となる3代目からはステランティスグループの一員として共同開発され、スペインで生産されることとなった。

エクステリア

前後バンパーに加え前後ドア下部の大型モール「エアバンプ」も無塗装かつフラットな形状でプロのツール感を強調。リヤゲートはガラスのみの開閉もできる。
無塗装樹脂の範囲が広いバンパーとフラットな形状のランプ・グリルをもつフロントマスクはドブロならでは。側面とリヤまわりは、バンパーモール加飾の有無とエンブレムを除けばシトロエン・ベルランゴと同様だ。手動式のリヤゲートは地上高1980㎜まで開くものの、地上高1720㎜まで垂れ下がるストラップが備わっており、背の低い女性でも開閉はしやすい。

日本既導入モデルでは、シトロエン・ベルランゴ、プジョー・リフターと兄弟車種となる。2代目までは日本未導入だったところ、日本市場における欧州製トールワゴンの市場拡大を受けて、この3代目から初めて正規導入される運びとなった。欧州ではBEV仕様がメインで、商用バンも設定されているが、日本導入モデルはベルランゴやリフターの日本仕様と同じ1.5ℓ BlueHDiディーゼルターボエンジンと8速ATを搭載した乗用車仕様となり、2列シート5人乗りと、3列シート7人乗りの「ドブロマキシ」をラインナップする。なお、乗用車仕様でディーゼルエンジンを搭載したドブロは日本専用モデルとなる。

乗降性

フィアットの世界観を体現し、「ジブン時間」と趣味を堪能するオトナの遊びゴコロを楽しむクルマと位置付けられており、ステランティスグループ内での日本市場における競合を避けるため、日本仕様のドブロリフターやベルランゴに対して装備を簡略化して価格を抑えるなど差別化されている。ただし、ACC等の基本的な装備は省かれていない。内外装はシンプルにまとめられていて、いかにもフィアットらしい顔立ちをしている。バンパーは黒い素材のままの面積が広いことが特徴なのは見てのとおりだが、フェンダーモールは装着されていない。ルーフレールは標準装備され、サイドにはエアバンプが配されている。ボディカラーは「ジェラートホワイト」、「マエストログレー」、「メディテラネオブルー」の全3色が選べる。

インストルメントパネル

黒一色のインパネとハイセンターコンソールで囲まれた運転席・助手席は小物入れも充実しておりプロのツール感満点。左右独立調整式オートエアコンは全車に標準装備される。

黒基調でコーディネートされた車内もシンプルな構成で、大開口のガラスルーフや頭上を前後に貫く大きなストレージは備えられていない。リヤスライドドアが電動でないのは向こうでこのクラスでは当たり前。後席には3人分の独立したシートが対等に設けられているのも、兄弟車ともども日本においては特徴となる。必要に応じて3列シート車が選べるのもありがたい。

居住性

リヤゲートはガラス部分のみ開けて狭い場所でもラゲッジにアクセスすることができるのも重宝しそうだ。走りは至って軽快で、ステアリングの操作に要する力も軽い。適度に締まった足まわりにより、キビキビと走れる。低速から力強く加速するディーゼルもそれを後押しする。走りにダイレクト感があり、パドルシフトを操作したときの反応も心地良い。

うれしい装備

2列5人乗り仕様にはフレキシブルラゲッジトレーを標準装備。中央で折れ曲がるため荷物出し入れの際も完全に取り外す必要がない。下段にセット(写真)してもフロアからの高さは280㎜と余裕がある。
月間販売台数    NO DATA
現行型発表     23年5月
WLTCモード燃費   18.1 ㎞/ℓ

ラゲッジルーム

音への対策はそれほどでもなく、車内に侵入する音がやや大きめに感じられるのだが、そのあたりはご愛嬌ということにしたい。フィアットが好きでかつて愛車としていたが、手頃なトールワゴンがなかったことから他ブランドに流れたユーザーも少なくないようだ。こうしてドブロが日本に導入されたことで、彼らがフィアットの世界に戻ってくることが期待できそうだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.155「2024 最新ミニバンのすべて」の再構成です。

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