「第2回日本グランプリ」はスカイラインとポルシェだけじゃない! スバル360の活躍を知っているか? 優勝マシンのレプリカはウィナーのサイン入り!!

2023年10月25日(水)〜11月5日(土)の会期で開催された『東京モーターショー』改め『ジャパンモビリティショー2023』(以下、JMS)。その、特別招待日/プレビューデーの10月27日(金)と一般公開初日の10月28日(土)に場外で開催された「CONSORSO DI REPLICA CAR(コンソルソ・ディ・レプリカカー)」。そこには実に様々なレプリカマシンが展示されたが、1990年代〜2000年代のWRCレプリカが大勢を占めるなか、クラシックなクルマの姿も見受けられた。その内の1台がスバル360だった。

「CONSORSO DI REPLICA CAR(コンソルソ・ディ・レプリカカー)」にエントリーされtレプリカマシンのうち、旧車は2台。1台がアドバンカラーのツーリングカー仕様のパブリカ・スターレット(KP47)。そしてもう1台がスバル360だった。

スカイラインにセリカ……ラリーもレースもグループAも旧車も! レプリカマシンが集まった『コンソルソ・ディ・レプリカカー』を振り返る

2023年10月25日(水)〜11月5日(土)の会期で開催された『東京モーターショー』改め『ジャパンモビリティショー2023』(以下、JMS)。その、特別招待日/プレビューデーの10月27日(金)と一般公開初日の10月28日(土)に場外で開催された「CONSORSO DI REPLICA CAR(コンソルソ・ディ・レプリカカー)」はご覧になっただろうか? ジャパンモビリティショーを盛り上げた、レプリカカーの祭典を振り返ってみたい。 PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)/MotorFan.jp

どちらかというとラリー寄り、時代的に1990年代〜2000年代がメインのエントラントの中でも、1960年代のしかもサーキットレース仕様のレプリカはやはり目を引くものがあった。

ダートトライアル静岡県チャンピオンは旧車好き?
1968年式スバル360デラックスは一桁ナンバー!!

オーナーのきょ〜と360さんは以前はスターレット(KP61、EP71改)やカローラレビン(AE86/2ドア)でダートトライアルに参加しており、1991年には静岡県シリーズのC1クラスチャピオンを獲得した実力派。それとは別に古いクルマも好きで、スバル360は学生時代にトミカをもらったり、「てんとう虫の会(スバル360のオーナーズクラブ)」で試乗させてもらったりしているうちに、静岡スバル沼津店に入庫したこのクルマを購入したそうだ。

きょ〜と360さんのスバル360デラックス(1968年式)

購入したスバル360は1968年式のデラックス。子供が生まれる前に……との思いもあり、1993年に21万円で購入。以来、31年間スバル360ライフを楽しんでいる。
購入した静岡スバル沼津店て来歴を訊いているみると、驚いたことに近所の床屋さんが所有していた車両だということがわかったそうだ。そのために、前オーナーからナンバーを引き継いでおり、今では希少な一桁ナンバーを保持している。

希少なシングルナンバー。静岡一桁の表示は1964年11月(それ以前は「静」1文字)からで、新旧オーナーが登録している沼津は1977年から沼津ナンバーになる。
当時モノの貴重なステッカー。スバル360は1968年の最終型から全車3速+「オーバートップ(4速)」になった。
車名エンブレム。
グレードエンブレムの下には、静岡スバルがオーナー向けに用意するオーナーズバッヂを装着。

きょ〜と360さんのスバル360デラックスは1968年式で、モデルライフとしては最終型にあたる(1970年生産終了)。しかし、好みに合わせてフロントフードやテールランプを中期型に換装しているという。
というのも、スバル360のデザイン的な特徴ともなっているボンネット前端のスリットは、初期型が9本(1958年〜1966年)、中期型が11本(1966年〜1968年)だったが、最終型では消滅(1968年〜1970年)している。やはりスリット付きのフードと、丸型のテールランプが好きなのだそうだ。

1958年の初期型でいわゆる「出目金」。フードのスリットは9本。
1968年の最終型からはフード前端のスリットがなくなる。
きょ〜と360さんのテールランプ。最終型はこのテールランプが角型に変更されている。

きょ〜と360さんはイベントに参加する際など、こうした愛車のカスタムポイントをスバル360の豆知識として紹介するリーフレットを配布していたりするという。

きょ〜と360さん手作りのスバル360紹介リーフレット。両面印刷で、短いながらスバル360について綺麗にまとめられている。

当時モノを維持しながら好みに合わせてカスタムしたインテリア

室内に目をやると、スバルワールドラリーチームカラーのシートカバーや、スバル360車名入りクッションなどが鮮やかに目に映る。また、ステアリングも当時の細いステアリングホイールのものではなく、ダートトライアル時代に使用していたインターゲット製をR2/レックス用のステアリングボスを介して装着。ホーンボタンはSTIロゴのものをセレクト。

きょ〜と360さんのスバル360のコックピット。

他にもタコメーターを追加していたり、カセットプレイヤーを追加したり、シガーソケット電源を追加するなどカスタムされているが、空気感はまったく当時のままだ。

メーターは140km/hスケール(数字は120まで)のスピードメーターの一眼で、中央にオドメーター、左に燃料計を配置。右に2ストロークオイルとバッテリーの警告灯、下にウインカーとヘッドライト点灯のランプがある。
ダッシュボードの中央に追加されたタコメーター。スバル360は最終型のヤング系グレード(ヤングS、ヤングSS)にはタコメーターを標準装備した二眼メーターが採用されたが、それ以外は左のスピードメーターのみのタイプ。
ラジオは三菱電機製。『紅の豚』に登場する飛行艇のミニチュアを設置している。
クラリオンのカセットプレイヤーは追加したもの。その左にシガーソケット電源を追加している。
シートにはスバルワールドラリーチームカラーのシートカバーを装着するほか、車名入りクッションを敷いている。シートベルトにサベルトの4点式2インチバックルタイプを装着。赤いシートベルトがヤングSSをイメージさせる。ちなみに、シートベルトの設置義務化は1970年から。
スバル360と言えば前開きのスーサイドドア。
ウインドウの前側にある三角窓も開閉可。
フロントフードの空調用ベンチレーターは室内から開閉可能。
ヤングSSのコックピット。二眼メーターにレザーステアリングなど、スポーティなトップグレードらしい演出。
ヤングSSはヘッドレスト付きのブラックシートに赤い3点式シートベルトを備える。ヘッドレストは1969年に義務化。

できることは自分でやる! コンディション良好で自走で参加!!

きょ〜と360さんが参加したJMSの2日目は晴天に恵まれ絶好のドライブ日和でもあり、自走で会場にまでやってきたという。50年以上も前の旧車で長距離移動が可能なコンディションが維持されているのは流石。大きなトラブルといえば、このクルマでジムカーナに参加した際にクラッチを踏み抜いたことくらいだそうだ。

オーバートップ付き3速MTのシフトレバー。
シフトレバーの手前には左からチョーク、ヒーターコック、燃料コックのレバーがある。

とはいえ、周囲の360cc軽自動車スペシャリストや仲間の協力も不可欠。パーツの調達に関してもオーナー間のネットワークやスバル360に強いショップに頼りながらも、メカニカルな部分は自分でできることであれば自分でやってしまうのは、競技経験も生きているのだろう。

エンジンフードを開けたところ。2ストローク強制空冷2気筒エンジンが収まる。

そもそもシンプルなエンジンまわりは好調で、カストロールの2ストロークオイルにハイオクガソリンを使用することでコンディションを維持している。

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実はこれもレプリカマシン?第2回日本グランプリのウィナーカー仕様!

スバル360でレプリカ?と思う読者もいるかもしれないが、これも歴としたレプリカ仕様。しかもスバルワークスのレーシングカーのモノなのだ。
その元ネタは1964年に鈴鹿サーキットで開催された「第2回日本グランプリ」。式場壮一選手のポルシェ904と生沢徹選手のスカイラインGTの名勝負で有名な一戦だ。

レースの参戦車/参戦者はもちろん、レース展開を当時の写真とともに詳細に解説。今だから聞ける関係者のインタビューも掲載。

レースはクルマのカテゴリーと排気量ごとに全11クラスに分かれており、件のポルシェ904とスカイラインGTはGT-II(1001cc〜2000ccのGTカー)クラス。スバル360は最小排気量のT-I(400ccまでのツーリングカー)クラスだった。

第2回日本グランプリのスバル360。決勝出走16台中、スバル360が7台、スズキ・フロンテが4台、マツダ・キャロル360が5台であった。

スバルチームはスバル360の性能に自信を持って臨んだ1963年の第1回日本グランプリでスズキ・スズライトに惜敗。雪辱を期してドライバー陣容も車両も万全の体制で第2回日本グランプリに臨み、見事1-2フィニッシュで優勝を飾った。そのウィナーがゼッケン9の大久保力選手である。

ゼッケン9はスバルチームのエースドライバー・大久保力選手で、第2回日本グランプリのT1クラス(黄色のゼッケン)優勝。

そしてなんとボンネットフードの裏側には大久保力選手の直筆サインが記されているのだ。イベントで大久保力選手にこのクルマを直接見てもらう機会があり、サインしてもらったそうだ。

「走れ!」の言葉と共に記された大久保力選手の直筆サイン。

ヘッドライトやテールランプなどの灯火類飛散防止テープも当時のレースカーを模したもの。それとは別に、リヤのピラーにあるインテークダクトに導風カバーを付けたり、ウインドウ上部にひさしを追加している。しかも一見カーボン製に見えるが、これはダイソーで売っているプラスチック板にカーボンステッカーを貼り付けたもので、自称「調カーボン」だそうだ。レーシーな雰囲気を演出するニクイ遊び心と言えるだろう。

自作したウインドウのひさし。カーボン柄でレーシーな雰囲気を選出している。
インテークダクトの導風版はカーボンでこそないが、レースカーにも装着されていた。
145SR10サイズのブリヂストンSF248タイヤを履く。
スバルのロゴ入りマッドフラップ。
スバル360スーパーDX(1968)
サイズ:全長2995mm×1300mm×1360mm
ホイールベース:1800mm
トレッド:前1140mm/後1070mm
車両重量:420kg
エンジン型式:EK32型強制空冷並列2気筒2ストローク
排気量:356cc
最高出力:25ps/5500rpm
最大トルク:3.5kgm/4500
トランスミッション:3速MT+オーバートップ
サスペンション(前後):トレーリングアーム独立懸架/ラジアスアーム独立懸架
ブレーキ(前後):2リーディングドラム/L&Tドラム
タイヤ:145SR10
最高速度:110km/h
価格(発売当時):38万円

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