クルマ好きなら知ってる?なぜオーテックが「ブルー」を採用するのか?実は深い理由が…

いまや内外の自動車メーカーがサブブランドを展開することは珍しくない。しかし、そのほとんどはスポーティさをアピールするものばかりという印象があるのも事実。多様化の時代に、いつまでも「特別なモデルはハイパフォーマンスであるべき」というマインドだけではユーザーは満足できない。そこで注目したいのは、日産のサブブランドとして2018年から展開されている『AUTECH(オーテック)』だ。「オーテックブルー」と称される鮮やかで深みのある青いボディのセレナに乗って、その価値を確かめるべく湘南の海を見に行くことにした。

REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto) 撮影協力:リバーポートマリーナ

「スポーティ」と「上質感」へのこだわり、日産にとっての「AUTECH」とは?

オーテックブルーをまとったセレナe-POWER AUTECH。海と空が実感できるヨットハーバーがよく似合う。

日本の自動車マーケットにおいてMクラス・ミニバンと呼ばれるカテゴリーは、典型的な子育て世代向けファミリーカーとして認識されているだろう。一方で、子育て世代においてドライバーを務めるパパママの中にはクルマに一家言ある人も少なくない。すなわち、凡百のファミリー・ミニバンとは異なる、オリジナリティのあるカスタマイズへのニーズは高い。

しかしながら、いまどきのクルマにおいてカスタマイズというのは、いろいろな点に留意する必要があったりする。サードパーティ製のパーツをつけたときにトラブルが出てしまう可能性は以前に比べて高くなっている。たとえば、エアロバンパーの形状が適切でないためにADAS(先進運転支援システム)のセンサー類が、その性能を発揮しきれないということもある。また、カスタマイズの定番といえるアルミホイール&タイヤ交換においても燃費やノイズに悪影響を及ぼしてしまう場合もある。

AUTECHのテイストでカスタマイズされたボディや専用アルミホイールが、特別な一台であることを実感させる。

そうした時代だからこそメーカー直系のカスタマイズバージョンへの注目度は高まっている。日産でいえばモータースポーツ活動イメージの強い「NISMO(ニスモ)」仕様のバリエーションは、幅広いモデルで展開していることが知られている。日産に限らず多くのメーカーが、こうしたワークスブランドの名を冠したモデルをラインナップに加えている。もはや当たり前のブランディングとなっているのだ。

しかし、日産にはもうひとつのスペシャリティなブランドがある。それが「AUTECH(オーテック)」だ。NISMOが「モータースポーツ直系のパフォーマンス」をアピールするサブブランドであるのに対して、AUTECHは「プレミアム」を具現化するサブブランドとして、しっかり色分けされているのも特徴だ。

e-POWERの電動感あふれるスムースかつスマートな走りが楽しめる。

先進性を想起させる、通称「オーテックブルー」のもつ意味とは?

AUTECHブランドのルーツであり、生みの親となる「オーテックジャパン」(現 日産モータースポーツ&カスタマイズ)は、日産という大きな自動車メーカーではカバーできないクラフトマンシップあふれる少量生産を行うために生まれたという経緯がある。AUTECHブランドにおいても、オーテックジャパンからの伝統である仕立ての良さやプレミアム性はブランド価値の根幹に位置付けられている。

AUTECHブランド発祥の地は神奈川県茅ケ崎市、湘南海岸に近い水辺の土地だったという。

それでいて、ハンドリングなど操る楽しさといったスポーツ性についてはNISMO、AUTECHの両ブランドでそれぞれの味付けを追求している。AUTECHはプレミアムなブランドだが、走りをおろそかにしているわけではない。ひと言で表現すれば「プレミアムスポーティ」が、AUTECHのブランド価値といえる。

そんなAUTECHブランドのシンボルとなっているのが、「オーテックブルー」と呼ばれる専用の青いボディカラーだ。今回、試乗したセレナ e-POWER AUTECHにおいては、『カスピアンブルー』がオーテックブルーとして設定されている。

「オーテックブルー」と呼ばれる専用の青いボディカラーは車種に合わせた最適な色に調整される。セレナe-POWER AUTECHでは「カスピアンブルー」が設定され、「ダイヤモンドブラック」ルーフとの2トーンも選択可能だ。

なぜ、「オーテックブルー」というわかりやすい名前でないのだろうか。じつは、オーテックブルーは一色ではないのだ。AUTECHグレードが用意されるモデルごとに、それぞれのスタイリングに似合うブルーを選定しているため、塗装色としてのオーテックブルーは何色も存在している。

とはいえ、オーテックブルーの狙いは各モデルで共通だ。そこには「伝統」と「革新」という思いが込められている。そして、ブルーを選んだ最大の理由は、AUTECHブランド発祥の地である湘南・茅ヶ崎の「海と空」をインスパイアしているからだ。

湘南の海と空は、まさにオーテックブルーの生みの親。

セレナAUTECHのエクステリアに込められた想い

湘南インスパイアはオーテックブルーだけではない。セレナe-POWER AUTECHでいえば16インチ・ダークシルバーの専用デザインアルミホイールは、海の中へ差し込む陽光をモチーフにしているという。さらにスポークデザインにはAUTECHの頭文字である「A」の造形を入れ込んでいるのもポイントだ。

AUTECHらしい独自の顔つきを生み出す専用フロントグリルは、海面のきらめきを想起させるクロームドット加飾となっている。まさに湘南の海をいつでも感じることができるのだ。そのポイントは、ドットパターンのサイズを微妙に変えることで、グリルの造形に奥行き感のある深みを加えている点。その中に、青いエンブレムが輝いているのも、AUTECHに共通するシンボリックな表現だ。

太陽の光が当る水面を思わせるAUTECH専用フロントグリルは、海面のエレガントなきらめきがモチーフ。奥行のあるドット加飾とすることで、どの角度から見ても充実した存在感を放つ。
専用16インチアルミホイールは、細部まで丁寧に作り込んだスポークフォルムにダーク金属調シルバーを組合わせた専用デザイン。スポークの形状はAUTECHの頭文字である“A”をモチーフにしている。

セレナe-POWER AUTECHにおいては、フロントバンパーに青く光るシグネチャーLEDを配置、その周囲をメタリック調の加飾で囲っているのもAUTECHらしい雰囲気を強めている。同様のメタル調フィニッシュは、専用デザインのフロントプロテクター、サイドシルプロテクター、リヤプロテクター、専用ドアミラーなどにも採用され、統一感を高めているのも所有満足度につながる。ボディのボトムラインをメタル調アイテムで彩ることで、低重心やワイドスタンスといった走りの良さを表現しているのもプレミアムスポーティというブランドの狙いを見事に表現している。

メタル調フィニッシュの専用フロントプロテクターと、専用シグネチャーのコンビネーションは白波の勢いと美しさがモチーフ。ベース車では採用しにくいコントラストの強い金属質感を実現している。
非常に凝った面構成となっているメタル調サイドシルプロテクターも専用デザイン。
専用リアプロテクターもメタル調で統一することでスタンス感を演出する。

また、冒頭でサードパーティ製パーツを使ったカスタマイズではADAS機能などに悪影響を及ぼす可能性があることに触れた。セレナe-POWER AUTECHで、日産の誇るADAS機能「プロパイロット」を使ってみたが、高速道路のジャンクションでは自動的に速度を落として安全に走り抜けるなど、しっかりと機能していることが確認できた。当たり前の話かもしれないが、さすがAUTECHといったところだろうか。

サードパーティ製のエアロパーツを装着した場合、ADAS(先進運転支援システム)のセンサー類に悪影響を及ぼすトラブルなどが懸念されるが、AUTECHなら日産のスポーティーサブブランドだけあって、そのあたりも考慮した設計となっているから安心だ。

手触りまでこだわったセレナAUTECHのインテリア

セレナe-POWER AUTECHは、ドライビング中にも、プレミアムスポーティを実感できるインテリアになっている。

レザーステアリングホイールは、イメージカラーであるブルーのステッチが入れられたもので、握り心地もしっとりとしたもので、まさにプレミアムスポーティ。ブルーのステッチがインパネからドアトリムにつながるように入っているのもファミリーミニバンとは思えない高級感あふれるものだ。

専用シートとブルーステッチにより彩られたキャビンはAUTECHの世界観をアピールする。立体感を強調させたシートのパターンは湘南の海のさざ波をモチーフにしている。
ステアリングホイールにも、しっかりブルーステッチが施される。

レザレットシートもAUTECH専用品。AUTECHのロゴをブルーの刺繍で施しているだけでなく、湘南の海のさざ波をモチーフにしたパターンとなっているなど、徹底してAUTECHの世界観を表現している。

専用シートに施されたAUTECHの刺繍。

またインパネのダークウッド調フィニッシャーもAUTECHの専用品となるが、その手触りはリアルな木材を思わせるもの。AUTECHブランドが目指す、上質やクラフトマンシップを指先で感じられるアイテムとなっている。まさに、乗るたびにAUTECHの世界を体感できるコックピットに仕上がっている。

ダッシュボードのダークウッド調フィニッシャーは、鮮やかな木目が特徴的な紫檀(シタン)の柄にダークグレー色をベースにブルーに光るパールをあしらっていて、本杢を思わせる手触りまでも表現している。

今回の試乗コースには「湘南」という言葉から想像するであろう国道134号線をメインルートに設定した。そして、海沿いのパーキングでひと休みしながら、セレナe-POWER AUTECHを眺めたときの風景のマッチングといったら! ”オーテックブルー”は、たしかに湘南の海と空にインスパイアされた色であることが実感できたのだった。

「AUTECH」ロゴの入ったフロアカーペットはディーラーオプションで用意される。
3列目シートを格納したときに存在感のあるラゲッジカーペットはディーラーオプション。こちらも「AUTECH」のロゴ入りだ。

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セレナ e-POWER AUTECH 主要諸元

ベース車:e-POWER ハイウェイスターV
全長×全幅×全高:4810mm×1725mm×1870mm
ホイールベース:2870mm
最低地上高:135mm
車両重量:1800kg
最小回転半径:5.7m
タイヤサイズ:205/65R16 95H
乗車定員:7名
メーカー希望小売価格:415万300円
※持込み登録でNMCオーテック扱いとなります。
登録時の車両重量等は実測値が適用されますので、主要諸元(設計値)とは異なる場合があります。
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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…