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ジュネーブモーターショー2017で3人乗り超小型EVを初公開
2017(平成29)年3月19日、トヨタがジュネーブモーターショーで超小型EVのコンセプトモデル「TOYOTA i-TRIL」を世界初公開。i-TRILは、“走る楽しさを追求する近未来の都市型モビリティ”として、都市生活者のニーズに応えるかたちで提案された超小型EVだ。
トヨタが進めるパーソナルモビリティの歴史
トヨタは、いち早くパーソナルモビリティの開発に取り組み、2003年の東京モーターショーで発表した「PM」以降、進化させたパーソナルモビリティを提案し続けてきた。2005年3月から9月にかけて開催された「愛・地球博」では、PMをさらに進化させた「i-unit」を、同年10月の東京モーターショーでは、「i-swing」を発表している。
2007年の東京モーターショーでは、より実用化に近付けた「i-REAL」を披露した。i-REALは、それまでのコンセプトモデルとは異なり、限られた場所の業務用に展開することを狙った一人乗りモビリティで、実際に空港などで実証試験が行われた。
そして、2013年により実用的で公道を走れるパーソナルモビリティとして登場したのが、「i-ROAD」。使い勝手の良さを追求した前2輪/後1輪の超小型EVは、各地での実証試験だけでなく都内のカーシェアリングサービスの実証試験も行った。このi-ROADを4輪にして進化させたのが、「i-TRIL」である。
3輪の超小型EVモビリティ「i-ROAD」を4輪に進化させた「i-TRIL」
i-TRILのボディサイズは、2830mm/1500mm/1460mm(全長/全幅/全高)で空車重量は600kgで。クルマの中心にドライバーを配置する(1+2)3人乗り、満充電時の航続距離は200kmである。ちなみに、3輪のi-ROADのボディサイズは、2350/850/1455mm(全長/全幅/全高)で空車重量は300kg、満充電時の航続距離は50kmだ。
i-TRILの車両運動制御には、i-ROADで開発された“アクティブリーン機構”を採用している。アクティブリーンとは、コーナリング時に左右の前輪が車体の向きに合わせて自動的に上下してバランスを取って制御する機構。その他にも、ドアを開けると一緒にステップ部が持ち上がる機構、ドライバーズシートがドア側に回転する仕組み、ステアリングは通常のホイール型でなくジェット機のような両手で制御する操縦桿タイプ、またペダル類がないので操縦桿でアクセルやブレーキ操作を行う。
ユニークなスタイリングと扱いやすさで大きな話題を集めたi-TRILだが、残念ながら今のところ市販化されていない。
トヨタ初の市販化された超小型EVモビリティ「C+pod」
ベンチャー企業や自動車メーカーから様々な超小型モビリティが提案され、現在も実証試験が行われているが、大手メーカーで市販化されている超小型モビリティは、トヨタ車体の「コムス」だけだったが、2021年にトヨタから「C+pod」が市販化された。
C+podは、2人乗りの超小型EVで、2020年12月から法人や自治体にリース販売、2021年12月からは個人向けリースを開始した。ボディサイズは2490mm/1290mm/1550mm(全長/全幅/全高)で、i-TRAILよりもコンパクト。価格は税込み165万~171.6万円である。
9.06kWhのリチウムイオン電池を搭載し、航続距離150km(WLTCモード)、最高速度60km/hで高速道路と自動車道路は走行できない。また、最大1500WのAC100Vコンセプトも装備され、非常用電源としても活用できるように設計されており、歩行者傷害軽減ボディやエアバッグも採用されている。
トヨタが本腰を入れて投入したC+podだが、今年(2024年)の夏頃に生産を終了するという発表があった。今後のパーソナルモビリティに対するトヨタの動きについては、現時点では不透明な状況だ。
超小型モビリティは、特定地域での使用や短距離で走る業務用には適しており、徐々に普及している。ただし、一般のクルマと混走するような状況では危険で、一般車の流れを阻害する原因にもなりかねない。超小型モビリティが効率的かつ安全に走行できる環境を構築しないと、普及はどうしても限定的になってしまう。
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