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FFレイアウトでクラウンを凌ぐ広い室内空間を実現
1982(昭和57)年3月24日、トヨタから2代目「カムリ」(※カムリの単独ネームとしては初代)がデビュー。トヨタとして「ターセル/コルサ」に次ぐFF車だが、エンジンを横置きにしたFFはトヨタ初であり、「クラウン」を凌ぐ広い室内空間が自慢の高級ミドルセダン。同時に、兄弟車として「ビスタ」も発売された。
カムリの源流はセリカのセダン版として登場したセリカ・カムリ
1980年1月、2代目カリーナをベースにしたスポーティなミディアムセダン「セリカ・カムリ」が登場した。ベースになったのはカリーナだが、「セリカXX」と同じメッキ製T字バーのグリル、ホイールデザインは「セリカ」と共通でセリカの流用品や類似品が多く使われた。
セリカのセダン版として登場したセリカ・カムリだったが、セリカの名を冠していた割に1.6Lと1.8L直4 SOHCエンジンは力不足で、ユーザーの期待に応えることはできなかった。
そこで人気挽回のために、2.0L直4 DOHCのEFI(電子制御燃料噴射)エンジンを搭載した最上級グレードのGTモデルを追加し、これでやっとセリカの名に恥じないモデルになった。
結局、セリカ・カムリは1982年にベースのカリーナがモデルチェンジしたため、2年の短命で販売を終え、セリカの名を取ったカムリにバトンを渡すことになった(ちなみに、このセリカ・カムリを初代カムリとする場合もあるが、単独ネームとなったカムリを初代とする場合もある)。
広い車室をアピールしFFセダンのパイオニアとなったカムリ
トヨタ初のFF車は、1978年発売のターセル/コルサだが、横置きエンジンのFF車はカムリが最初だ。兄弟車のビスタも同時に発売されたが、細部に多少の違いはあるものの、販売網の違いだけで、基本的には同一モデルである。
カムリは、当時ブームに火が付いていた“ハイソカー”を意識した直線基調のシャープなスタイルを採用したオーソドックスな4ドア3ボックスセダン。パワートレインは、セリカにも搭載されていた1.8L直4 SOHCと5速MTの組み合わせだが、車重が比較的軽かったので2.0Lクラスの走りができた。
最大のアピールポイントは、何といってもロングホイールベースと横置きエンジンのFFパッケージングによって実現された、当時のFR車クラウンを凌ぐ広い室内空間だ。車両価格は117.5万~165.7万円、ちなみに当時の大卒初任給は12.5万円(現在は約23万円)程度だった。
初代カムリの国内販売は期待されたほど伸びなかったが、居住性の高さは海外、特に米国で高い評価を受けて大ヒットを記録。また1886年に登場した3代目(※セリカ単独ネームとしては2代目)は、スポーティなスタイルとハイソカーブームが相まって、国内でも人気を獲得した。
国内では堅調、米国ではロングセラーのカムリ
その後のカムリはビッグヒットとはいかないまでも、“セダン冬の時代“にあってもコンスタントに月販1000台程度の堅調な販売を続けた。一方で、1983年から販売が始まった米国では、16年間連続で米国の乗用車販売1位を記録するほどの人気モデル。米国市場でのライバルはホンダの「アコード」とフォード「トーラス」だが、コストパフォーマンスで上回り、耐久信頼性が高く評価されているという。
ところが2023年3月にカムリの国内販売終了が報じられた。落胆した人も多かったと思われるが、その年の11月には、新型(XV8#型)カムリの発表があった。米国では2024年春から発売が始まるらしいが、日本の発売については具体的にされておらず、今のところ販売は不透明だ(2024年3月23日現在)。期待しているファンも多いはずなので、ぜひ国内にも投入して欲しい。
FR車からFF車への流れは、1970年代に小型車から始まった。その流れは徐々に普通乗用車や高級車へと拡がったが、そのパイオニア的な存在がカムリだ。FFにすると、こんなに室内が広くなるのかと教えてくれたのもカムリであり、大きな功績を残したモデルと言える。
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