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一世を風靡したロータリーのリアルスポーツ
1978(昭和53)年3月30日、マツダのロータリースポーツ「サバンナRX-7」が発表された。リトラクタブルヘッドライトを装備した流麗なスタイリングと、フロントミッドシップに搭載される軽量ロータリーエンジンの力強い走りで、多くの若者を夢中にさせたスポーツカーである。
マツダが進めたロータリーモデルのラインナップ展開
1967年、マツダは世界初の量産ロータリーエンジン搭載車「コスモスポーツ」をデビューさせ、世界中に大きな衝撃を与えた。
最高出力110ps/最大トルク13.3kgmを発生する10A型(491cc×2ローター)ロータリーエンジンを搭載したコスモスポーツは、圧倒的な動力性能でロータリーのポテンシャルをアピール。
その後、マツダは「ファミリアクーペ(1968年~)」、「ルーチェクーペ(1969年~)」、「サバンナ(1971年~)」、「コスモAP(1975年~)」と、ロータリー搭載車のラインナップ展開を進めた。
しかし、1973年に起こったオイルショックと排ガス規制の強化によって、メーカーはその対応に追われ、特にレシプロエンジンよりも燃費や排ガス性能に苦しんだロータリーエンジンにとっては厳しい状況が続いた。
そのような中、昭和53年排ガス規制に適合したピュアスポーツのRX-7の登場は、大きな注目を集めることになったのだ。
ロータリーの優れた動力性能で国際レースも席巻したRX-7
サバンナRX-7でまず注目されたのは、エアロダイナミクスに優れたCd値0.36を達成した、その流麗なスタイリングだ。リトラクタブルヘッドライトを装備したラジエターグリルレスのスラントノーズ、リアは個性的なリフトバックウインドウとリアデッキ、それまでの日本車にはない斬新なデザインには目を見張るものがあった。
搭載された12A(573cc×2)型ロータリーエンジンは、最高出力130ps/最大トルク16.5kgmを発生し、1000kgを切る軽量ボディによって、最高速度は180km/h、0→400m加速15.8秒と、「ポルシェ924」や「フェアレディZ」に匹敵する抜群の動力性能を発揮。
さらに、軽量コンパクトなロータリーの特徴を生かし、エンジンをフロントミッドシップに搭載し、前後重量配分を50.7:49.3と最適化することで、スポーツカーらしい軽快なハンドリング性能も実現された。
その実力は、1979年のデイトナ24時間レースでクラス優勝、スパ・フランコルシャン24時間レースで総合優勝という形で実証された。
車両価格は、リミテッドREマチック(3速AT)が173万円、5速MTは169万円。ちなみに当時大卒初任給は10.3万円程度(現在は約23万円)だが、その実力から見ると割安感があった。
RX-7が人気に火を付けたリトラクタブルヘッドライトが消えた理由
リトラクタブルヘッドライトは、空力性能に優れ、何よりもスマートでフロントノーズが精悍に見えるため、1980年代に多くのスポーツモデルで採用されたが、現在国産車で採用例はない。日本で初めて採用したのは、1967年に登場した「トヨタ2000GT」だが、普及のきっかけとなったのはサバンナRX-7である。
その後1980年代には、トヨタ「スプリンタートレノ(AE86)」、「セリカXX」、三菱自動車「スタリオン」、日産自動車「シルビア(3代目)」、ホンダ「プレリュード」、「アコード(3代目)」など、人気モデルの定番アイテムとなった。
一方でリトラクタブルヘッドライトは、展開時に空気抵抗が増える、接触時に突起物となって危険、可動部品によってコストと重量が増すなどのデメリットがあり、また北米でヘッドライト最低地上高が緩和されたこともあり、1990年中頃からリトラクタブルヘッドライトの採用は急減。2002年まで生産された3代目RX-7(FD型)を最後に、日本車での採用は完全に消えたのだ。
流麗なスタイリングのみならず、当時排ガス対応で性能が伸び悩んでいた他車を圧倒する動力性能を発揮したRX-7。パワーはもちろん、加速性やレスポンスなどロータリーエンジンの魅力を存分に生かし、逆風にあったロータリーの復活を印象付けた起死回生のモデルだった。
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