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1990年代にモデューロの礎がしっかりと築かれた
ホンダファンにとって「Modulo(モデューロ)」というブランドに対する印象は様々だろう。スーパーGTマシンのカラーリングとして認識しているファンもいれば、コンプリートカー「Modulo X」に紐づけて記憶しているファンもいることだろう。
いずれも正解だが、Moduloというブランドはホンダの純正アクセサリーを開発するホンダアクセスのこだわりを示す名前であり、そのルーツは純正アルミホイールにあることはご存知だろうか。
Moduloというブランドが誕生したのは1994年、直列5気筒エンジンをフロントに縦置きするFFスペシャリティ「ビガー」のマイナーチェンジに合わせたドレスアップホイールに使われたのが最初だ。つまり、2024年はモデューロ誕生30周年のアニバーサリーイヤーとなる。
その後、1995年~1996年にかけてスペシャリティカー「プレリュード」に向けて空力を意識したエアロパーツや走行性能と乗り心地を両立するサスペンションを開発。1999年にはいくつかのモデルでアルミホイール、エアロパーツ、サスペンションをモデューロとしてトータルプロデュースするなど、1990年代にModuloはホンダ車を磨き上げるパフォーマンスアップといったブランドイメージを確立した。
現在のModuloブランドのシンボル的テクノロジーである「実効空力」コンセプトを最初に提唱したのは、2008年に開発されたシビックタイプR用エアロパーツ。空力重視のフロントバンパーに合わせて、標準装着される大きなリヤウイングからダックテールタイプのトランクスポイラーに交換するなどトータルバランスを追求したことは、大いに話題を集めたことは記憶に残る。
そうしたイメージを極めたのが、冒頭でも紹介したコンプリートカー「Modulo X」シリーズであることは言うまでもない。
初代NSXにドライカーボン製スポイラーを追加設定
さて、Moduloブランドの30周年を記念してメディア向けに開催された「Modulo 30th Anniversary EXPO」には、そんなモデューロ・ヒストリーにおけるエポックメイキングな2台のデモカーに試乗する機会が用意されていた。
それが1999年仕様の純正アクセサリーを装着したS2000と、2011年に新開発されたパーツをまとったNSXの2台だ。
NSXの誕生20年を記念して、モデューロの考える4輪接地を実現すべく開発されたアイテムはエアロパーツとサスペンション。より具体的にいえば、ドライカーボン製トランクスポイラーと、純正形状のスポーツサスペンションとなっている。
いまや貴重な初代NSXで、しかも希少なモデューロアイテムを装着している個体ということもあって、リスク回避を第一に、モビリティリゾートもてぎの中での試乗となった。そのため空力効果を明確に体感することはできなかったが、4輪接地なハンドリングと乗り心地をバランスしたスポーツサスペンションが、現在の基準でみても高いレベルにあることは確認できた。
初代NSXの基本設計は1980年代まで遡るわけだが、まったくもってそうした古さを感じさせない。ヤレのなさはNSXが世界初採用したオールアルミ・モノコックボディのおかげかもしれないが、そこにモデューロのサスペンションが加わることで、スポーツフラッグシップらしい価値を実現しているわけだ。
S2000では実効性のある空力デバイスを目指した
「実効空力」という四字熟語は生まれていなかったが、Moduloエアロとして初めて空力効果を与えられたのが、1999年に生まれたS2000用エアロパーツ群。前から、フロントアンダースポイラー、リアストレーキ、トランクスポイラーという3つのアイテムで構成されている。
フロントミッドシップのFRマシンであるS2000のスタビリティを高めるのは、当時としては大柄なトランクスポイラー。そのダウンフォース効果に前後バランスを合わせるのがフロントアンダースポイラーで、リヤタイヤ直前に置かれたストレーキは前後の大物エアロとの相乗効果により整流と空気抵抗低減を図っている。そのほかスポーツサスペンションやスポーツマフラーなどもラインナップ、安心して気持ちよく走ることができるというModuloの目指す世界にS2000を近づけることができた。
久しぶりに試乗したModuloチューンのS2000は、20世紀のスポーツカーらしい荒々しさがマイルドに洗練されているのが、純正アクセサリーによるカスタマイズらしいと感じさせた。NSXと同じく貴重な個体のため低速での走行確認にとどめたゆえ、元祖・実効空力の効果を感じることはできなかったが、この時代にストレーキの重要性を理解していたというのは、さすがホンダアクセスの技術力というほかない。
Moduloブランドが生まれて5年ほどで、これほどの高いトータルバランスに仕上げていたというのも驚かされる。