世界屈指のテスト&開発拠点「シモヤマ」で、トヨタのクルマづくりはどう進化するか?

Toyota Technical Center Shimoyama(トヨタ・テクニカルセンター・シモヤマ)
Toyota Technical Center Shimoyama(トヨタ・テクニカルセンター・シモヤマ)が完成した。愛知県豊田市と岡崎市にまたがる山間部に作られた3000人が働く新開発拠点だ。下山の完成でトヨタのクルマづくりはどう変わるか?
PHOTO:山上博也(YAMAGAMI Hiroya)

Toyota Technical Center Shimoyama(トヨタ・テクニカルセンター・シモヤマ)のお披露目式が4月2日に開催された。自動車メーカー、サプライヤーにとってテストコースは秘匿にすべき場所。我々メディアもそうそう足を踏み入れられない場所だ。チャンスがあれば、無論、行くしかない。

トヨタ・テクニカルセンター・シモヤマは、もちろん単なるテストコースではない。というより、巨大なテストコースであり巨大な技術開発拠点でもある。なにせ、3000人が働く場所なのだから。

国内にあるトヨタのテストコースは、東富士研究所(通称 : Toyota Technical Center Higashi-Fuji)、北海道の士別試験場(通称 : Toyota Technical Center Shibetsu)にもある。どちらも訪問したことがあるが、テストコース/研究開発拠点としてのシモヤマの規模は、別格だ。

世界中の路面を再現した特性評価路、カントリー路、2kmの直線路、高速周回路、レクサスカンパニー、GRカンパニーの企画・デザイン、開発・設計、試作・評価などあらゆるメンバーが働く車両開発棟の規模には驚かされた。

お披露目式で挨拶する豊田章男会長、言わずとしれたマスタードライバーである。
式典会場に展示されていたGRヤリスのラリー仕様。この車両は、永久保存されるという。
これは、マスタードライバー、モシゾウがシモヤマでテスト中にクラッシュした車両だ。

お披露目式が行なわれた来客棟には、「詰めて入れば1000人入れる」というホールもある(らしい。そこには入れなかった)。しゃれたカフェスペースを併設した社員食堂もあった。

通常、開発車両は開発拠点からテストコースに運び込まれる。エンジニアもまた開発拠点からテストコースへ向かう。テストコースでさまざなま評価を行ない、開発拠点に戻ってさらなる進化の方法、課題の整理、解決法を見つける。それが、シモヤマではタイムロスなく、「走る・壊す・直す」のサイクルを回せるのだ。

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お披露目式の前週にドイツ・ニュルブルクリンクを走った豊田章男会長は、「先週、ニュルを走った。片道15時間以上かかる。向こうでも2時間の車移動。1周20km、高低差300mのニュルブルクリンクは、世界で一番過酷な道。その一部をシモヤマで体験できるのは、もっといいクルマづくりに大きな影響を与えることができる」と語った。

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フェラーリF40とF355がピットに置かれていた。

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ニュルブルクリンクでしかできないテスト・評価もあるし、シモヤマでしかできないこともある。

「どちらいいというわけではないが、どちらかの強みを活かして、もっといいクルマづくりに活用していければいい。道は変化するし公道も変化するので、それがもっといいクルマづくりにもっとも必要なこと。いかにリアルな道に近いものを用意できるかが、ニュルに一歩近づくことかなと思う。日本のテストコースは整備がしっかりされるため、実際の公道とちょっと違ってくる。厳しい道がもっといいクルマづくりになるという原点。安全に走りきる技能、日々鍛錬していることで、いいクルマができると思う。自動運転になればなるほど人間の感性・センサーが必要になる。そういう時代だからこそ、こういうリアルな現場があるべき」(豊田章男会長)

世界屈指のテストコース&研究開発拠点は完成した。

多くの報道陣に囲まれる豊田章男会長

「これから若い世代を含めて現役の人が、どう活用していくのか? 私が現役のときには、この施設はなかったので、現役の人たちが、この施設があることをどのように、価値・創造に使えるか。この施設を使ってクルマをどうよくしていくか、考えてほしい」
と豊田章男会長はメディアの取材に答えた。

シモヤマからどんなクルマが生まれるのか? 最高のツールを手にした3000人のチームは、おそらくもの凄いプレッシャーを感じながらシモヤマでの仕事をスタートするのだろう。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…