蘇った三菱ワークス・ランサーエボリューションIIIがお台場を疾走! トミ・マキネンのWRCグループA優勝マシンが復活!!

1996年のWRC(世界ラリー選手権)第6戦の1000湖ラリー優勝車。あのトミ・マキネンが駆るランエボIIIは、このシーズン5勝を挙げて三菱自動車に初のWRCドライバーズチャンピオンをもたらした。この実車を、三菱自動車は社内教育の一環として再生プロジェクトを結成、ベテランと若手エンジニアがタッグを組んでレストアに着手。ついにお台場でデモ走行するまでに復活を遂げた!
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ル・マンのグループCカーやWRCで活躍したランサーエボリューションも大暴れ!お台場でモータースポーツを体感する『モータースポーツジャパン』!!

『モータースポーツジャパン』が『JAFモータースポーツジャパンinお台場2024』(2024年2月24〜25日)として、2年ぶりにお台場へ帰ってきた。今回のテーマは「親子で『見て』『聞いて』『触って』『体感する』モータースポーツ」ということで、ファミリーで参加しても楽しめるようなコンテンツが充実していた。 REPORT&PHOTO:TOKYO CIAO MEDIA

エンジン、駆動系、足回りをレストアして完全復活させた奇跡のレジェンドカー

4WD体感試乗会も実施した三菱自動車のコーナーはモータースポーツジャパンでも大人気だった。

2024年2月に開催された「JAFモータースポーツジャパンinお台場」の三菱自動車コーナーでは、4WD体感試乗会やアジアクロスカントリーラリー2023に参戦した新型トライトンの展示(レプリカ)も人気だったが、このエリアで圧倒的な存在感を放っていたのが、「ランサー・エボリューションIIIグループA」車両だ。

同じ年には、リチャード・バーンズや篠崎建次郎選手もミツビシワークスドライバーとしてWRCに参戦した。

今でもファンの多いランエボ。とりわけモータースポーツの世界では、なんといってもスバルのインプレッサWRXと長年にわたって死闘を繰り広げたWRCの印象が鮮烈に残っていることだろう。

当然左ハンドル仕様。このハンドルをマキネンが握ったのかと思うと、ファンならずとも感慨深い。

このマシンは、なんと1996年のWRC第6戦、フィンランドの「1000湖ラリー」でトミー・マキネンがドライブして見事に優勝を飾った実車というだけでもラリーファンにとってはたまらないヒストリーがあるのだが、三菱自動車のオートギャラリーにて25年以上保管されたのちに、“希少車両と技能継承のため、ベテランエンジニアが指導しながら若手エンジニアを育てる”という再生プロジェクトが発起。レストアされて息を吹き返したという、正真正銘の「ワークス車両」と呼べるのだ。

Aピラーには、誇らしげにスリーダイヤモンドと月桂樹マーク。その年の4勝目を誇示すべく、燦然と輝いている。ラジエーターや左フェンダーアーチなどには、激闘の勲章とも言えるようなキズも残るが、そうしたボディの「痕跡」は、あえてヒストリーの証明という意味でも修復せずに残してあるという。

ちょうど1996年の4勝目となったのが、1000湖ラリーだった。最終的には5勝を挙げてチャンピオンに。
フェンダーなどには傷跡も残っているが、あえてそのまま「勲章」として手を加えていないそうだ。

室内のバケットシートにも、ドライバー「T.マキネン」とコドライバー「S.ハルヤンネ」、「RALLIART」の刺繍が入る。フロントバンパーには冷却効果を高める大きなダクトが開いており、「M5」というマーキングは、1996年シーズンのマキネンが使用する「5台目」を意味しているのだとか。

マキネンとハルヤンネのコンビで、年間5勝を飾った。その後、ドライバーズタイトル4連覇にもつながる転機となった。
大開口のフロントバンパー。マキネンの「5号車」という意味を表す「M5 MRE」というマークが残る。

愛知県岡崎市にある三菱自動車のオートギャラリーで長年大切に保管されていたが、当時のエンジニアと若手のメンバーがタッグを組み、技術継承という目的で2年間ほどのプログラムを実施。エンジンもおろして、完全オーバーホール。ほぼ当時のスペックで復元されているそうだ。

美しいエンジンルーム。育成プログラムによって、エンジンは完全にオーバーホールがなされたそうだ。

1年のフルレストアを経てデモランを披露

約1年かけて、前回のモータースポーツジャパンの際にもエンジン始動できるまでに完成されていたが、その後ミッション、駆動系、足回りもレストアが終わったので、今回のイベントではギャラリーの前でデモランできるところまでに到達。

お台場の地に降り立った、ランエボIIIグループA。大きなリヤウイングが誇らしげに備わっている。
2023年のラリージャパンでもデモ走行を実施し、大きな反響を呼んだというランエボIIIのグループA。
当時を知るベテランエンジニアと、若手エンジニアがタッグでマシンを蘇らせた、夢のあるプロジェクト。

会場では、名器4G63エンジンの始動デモンストレーションも行われ、たくさんのファンが取り囲む中、轟く爆音。当時に思いを馳せるラリーマニアの姿も多く見られた。どこの会場でも「このクルマを見るために来ました!」という、たくさんのラリーファンが訪れるらしい。

エンジン始動デモの時間が近づくと、ランエボの周りには人だかりができるほどの人気ぶりだ。

三菱自動車のモータースポーツの歴史においても、初めてドライバーズタイトルをもたらしてくれたマシンであり、マキネンにとっても年間5勝という圧倒的な強さを見せたアニバーサリーイヤーの重要なマシン。これからも、名車として後世に伝えてほしい。

1996年のWRC第6戦優勝マシンが復活。ラリーファンにとってはたまらないレジェンドカーの降臨だ。
ランサー・エボリューションIII(グループA)
全長:4310mm
全幅:1695mm
エンジン:4G63 直列4気筒DOHCインタークーラーターボ
排気量:1997cc
最高出力:270ps
最大トルク:45.0kgm

ランサー・エボリューションIIIグループAギャラリー

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自動車系出版社勤務を経て、2022年に独立したメディアクリエイター。自動車メディアへの寄稿、編集、撮影…