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エンジン、駆動系、足回りをレストアして完全復活させた奇跡のレジェンドカー
2024年2月に開催された「JAFモータースポーツジャパンinお台場」の三菱自動車コーナーでは、4WD体感試乗会やアジアクロスカントリーラリー2023に参戦した新型トライトンの展示(レプリカ)も人気だったが、このエリアで圧倒的な存在感を放っていたのが、「ランサー・エボリューションIIIグループA」車両だ。
今でもファンの多いランエボ。とりわけモータースポーツの世界では、なんといってもスバルのインプレッサWRXと長年にわたって死闘を繰り広げたWRCの印象が鮮烈に残っていることだろう。
このマシンは、なんと1996年のWRC第6戦、フィンランドの「1000湖ラリー」でトミー・マキネンがドライブして見事に優勝を飾った実車というだけでもラリーファンにとってはたまらないヒストリーがあるのだが、三菱自動車のオートギャラリーにて25年以上保管されたのちに、“希少車両と技能継承のため、ベテランエンジニアが指導しながら若手エンジニアを育てる”という再生プロジェクトが発起。レストアされて息を吹き返したという、正真正銘の「ワークス車両」と呼べるのだ。
Aピラーには、誇らしげにスリーダイヤモンドと月桂樹マーク。その年の4勝目を誇示すべく、燦然と輝いている。ラジエーターや左フェンダーアーチなどには、激闘の勲章とも言えるようなキズも残るが、そうしたボディの「痕跡」は、あえてヒストリーの証明という意味でも修復せずに残してあるという。
室内のバケットシートにも、ドライバー「T.マキネン」とコドライバー「S.ハルヤンネ」、「RALLIART」の刺繍が入る。フロントバンパーには冷却効果を高める大きなダクトが開いており、「M5」というマーキングは、1996年シーズンのマキネンが使用する「5台目」を意味しているのだとか。
愛知県岡崎市にある三菱自動車のオートギャラリーで長年大切に保管されていたが、当時のエンジニアと若手のメンバーがタッグを組み、技術継承という目的で2年間ほどのプログラムを実施。エンジンもおろして、完全オーバーホール。ほぼ当時のスペックで復元されているそうだ。
1年のフルレストアを経てデモランを披露
約1年かけて、前回のモータースポーツジャパンの際にもエンジン始動できるまでに完成されていたが、その後ミッション、駆動系、足回りもレストアが終わったので、今回のイベントではギャラリーの前でデモランできるところまでに到達。
会場では、名器4G63エンジンの始動デモンストレーションも行われ、たくさんのファンが取り囲む中、轟く爆音。当時に思いを馳せるラリーマニアの姿も多く見られた。どこの会場でも「このクルマを見るために来ました!」という、たくさんのラリーファンが訪れるらしい。
三菱自動車のモータースポーツの歴史においても、初めてドライバーズタイトルをもたらしてくれたマシンであり、マキネンにとっても年間5勝という圧倒的な強さを見せたアニバーサリーイヤーの重要なマシン。これからも、名車として後世に伝えてほしい。
ランサー・エボリューションIII(グループA) 全長:4310mm 全幅:1695mm エンジン:4G63 直列4気筒DOHCインタークーラーターボ 排気量:1997cc 最高出力:270ps 最大トルク:45.0kgm