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今日はクルマの足元を支える「タイヤの日」
4月8日は、一般社団法人日本自動車タイヤ協会(JATMA)が定めた「タイヤの日」だ。数字の8の形がタイヤの形を連想させるからだが、ドライバーにタイヤの重要性を知ってもらったり、正しい使い方をアピールすることが狙いだ。
これを機に、タイヤの進化と最新の技術について言及してみた。
世界初のガソリン自動車は鉄輪だった
世界初のガソリン自動車は、1986年にカール・ベンツが発明した3輪自動車「モトールヴァーゲン」だ。そのタイヤは、まだ空気封入のタイヤが発明されていなかったので、最初は鉄輪、2号車は空気のないソリッド(中実)ゴムの輪を巻いたタイヤで、もちろん乗り心地は酷いものだった。
空気入りタイヤを発明したのは、アイルランドの獣医師ジョン・ボイド・ダンロップで、10歳の息子に自転車がもっと速く走れるように頼まれ、空気入りタイヤを思いついた。空気で膨らませたゴムの袋を丈夫な帆布で包み、自転車の車輪に巻いて製作。それまでの空気のないゴムタイヤに比べて、乗り心地に優れスピードも出せた。
1888年に空気入りタイヤの特許を取得し、翌年には自転車用タイヤの会社を設立し、その後世界的なタイヤメーカー「ダンロップ」へと成長したのだ。
一方、自動車用の空気入りタイヤを初めて作ったのは、フランスのミシュラン兄弟。1895年のパリ~ボルドー間で開催された世界初の自動車レースで、パンクが多発して優勝は逃したものの、空気入りタイヤを履いたクルマの速さが評判になり一気に普及。ミシュラン兄弟もタイヤメーカーを起こして急成長した。
ちなみに、1908年に発売された大量生産で有名な「T型フォード」は、空気入りタイヤを標準装備していた。
タイヤは耐久信頼性の向上によって飛躍的に進化
米国で大ヒットしたT型フォードもタイヤの耐久性に苦しめられ、2000km~3000kmで交換する必要があったとされ、その後ゴムの材料や構造などの進化によってタイヤの耐久信頼性は飛躍的に向上した。代表的な改良ポイントは、以下の4つである。
・カーボンブラックの使用(1910年頃):ゴムにカーボンブラックを混入することで耐久性は5倍程度改良
・すだれ織りコードの採用(1920年頃):縦糸と横糸の間に薄いゴム層を挟んだ“すだれ織り”で強度を強化
・タイヤコードに化学繊維や合成繊維を採用(1937年~1962年):レーヨンからナイロン、そしてポリエステルが使用され始め、強度と性能が向上
・バイアスタイヤからラジアルタイヤへ(1950年頃):タイヤコードを円周と直角に配置し、更に円周にベルトを巻いたラジアルタイヤによって寿命は倍増
耐久信頼性が向上したタイヤだが、現在は燃費低減のための転がり抵抗が少ない低燃費タイヤ、騒音規制などの要求から低騒音タイヤなどが普及している。
パンクしないエアレスタイヤの実用化も近いか
約130年前、空気入りタイヤが発明され飛躍的な進歩を遂げたタイヤだが、現在は空気のないタイヤ、エアレスタイヤの開発が大きな注目を集めている。
タイヤに封入されている空気は、路面からの衝撃を緩衝する重要な役を担っているが、空気があるからこそタイヤはパンクしたりバーストしたりなどで走行不能になる。エアレスタイヤが実用化されれば、そのリスクが低減し、タイヤの寿命は延び、空気圧の管理も不要になるのだ。
エアレスタイヤは、メーカーによって多少の違いはあるが、通常の空気入りタイヤのサイドウォールがなく、衝撃を吸収する樹脂やゴムのなどの複合材料で構成された多数のスポークの外周にトレッドゴムを張り付けた構造。通常のタイヤの空気の代りとなるバネ特性を持つスポークの形状や材料に、メーカー独自のノウハウが生かされ、このスポークこそがエアレスタイヤの性能や快適性、耐久性などを決定するキー技術である。
海外では、配送車両で実用化されており、日本ではゴルフカートで運用されている例もある、今後の展開が大注目されている将来有望な技術だ。
クルマの足元を支えるタイヤ、技術の進歩は目覚ましいものがある。一方で、多くのユーザーは空気圧や溝深さなどの摩耗具合を日常的に管理しているだろうか。タイヤは消耗品である。この機会にタイヤをチェックしてみてはどうだろうか。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。