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欧州に6ヵ所 アウディが充電ステーションに取り組む理由
アウディ・チャージング・ハブは、アウディが運営する充電サービスだ。現在、欧州域内のザルツブルク、チューリッヒ、ニュルンベルク、ベルリン、ミュンヘン、フランクフルトの6ヵ所にある。提供するのは、「プレミアムな充電体験」だ。とはいえ、アウディが充電サービスビジネスに本格参入するわけでなく、「充電に関するノウハウの取得」だ。広報担当者の言を借りれば
「チャージングハブを考えているからといってインフラ管理、インフラ整備の大手になりたいわけではない。都市環境の特殊なケースで充電のための拠点を設けたい」ということだ。「インフラをビジネスとして考えたいわけでなない。一時的に、自分たちの役割を切り換えて充電ステーションの運用そのものを知ることは、アウディにとても付加価値をもたらすと考えている」と。
立地選びの基準は
・アウディのユーザーが多い地域なのか?
・インフラの条件がどれほど揃っているか?
・付加価値を引き出せる地区なのか?
だという。インフラの条件とは、充電インフラが充実しているか、という視点ではない。ドイツでも郊外に住む人は自宅に充電設備を持つ人が多いが、都市住民はそうではない。充電インフラが整っていない場所を選んでいる、というわけだ。
セカンドライフバッテリーを使い、高圧送電網には繋がっていない
注目ポイントは、急速充電が可能な充電ステーションなのに高圧送電網と繋がっていないということだ。BEVのセカンドライフバッテリー(現状では研究・試作車から外したもの)モジュールを198個収めたパワーキューブと呼ぶコンテナ状のボックスに通常の送電網(と施設屋上の太陽光発電パネル)から充電し、そこからBEVに急速充電する仕組みだ。
「高電圧送電網に直結すれば、わざわざ大容量バッテリーを使ってバッファを持たせなくてもいいという考え方もあるかもしれない。ただそのためには、高電圧送電網に直結するためのいろいろな備えが必要になる。そうではなくて、低電圧の既存の送電網に直接繋げられるものとして設計している」と説明された。もちろん、高電圧送電網に繋がないことで、設置に関する法規制も違ってくるのだろう(当然、高圧送電網に繋ぐ方が厳しくなる)。
充電の出力は最大320kW(この出力に対応するBEVはまだ少ないが)。ひとつのパワーキューブにふたつの充電ロットが備わるから2台同時であれば、160kW×2で充電が可能だ。
ミュンヘンからニュルンベルクまで約150kmのアウトバーンをアウディQ8/SQ8 e-tronで走って、実際に充電してみた。最高で110-120kW、約20分間で33-34kWhの充電ができた。これなら、BEVの使用のストレスはない。
ちなみに、アウディオーナーであれば、1kWh=約35セント(1ユーロ165円換算で約58円)で、他社ユーザーは約50セント(約83円)で充電できる。これは、急速充電の料金としてはかなりお手頃だという。
セカンドライフバッテリーを使うアウディ・チャージング・ハブは、高電圧送電網に繋げないので、設置が比較的容易(規制対応なども含めて)だという。今後、大量に出てくるBEVのバッテリーの「セカンドライフ」の使い方として、大きな可能性があることがわかった。もちろん、日本でも考えていいコンセプトだと感じた。
バックヤードはどうなっているか?
特別に、バックヤードを見せてもらった。
ニュルブルクリンクのアウディ・チャージング・ハブはPowerCube×3、Control-Cube×1、Strage Cube×1の構成で6つの充電口を備えている。
バックヤードには、我々に見せるために、使用しているバッテリーモジュールが置いてあった。バッテリーのラベルには、「LG化学 Minimal Energy 2.65kWh(Nom.Voltage10.77V/Minimal Capacity24.0Ah)ポーランド製」と記されていた。
アウディは、アウディ・チャージング・ハブを通して充電ニーズ、ノウハウを集めるとともに、他社ユーザーに対するタッチポイントとしても機能させる心づもりだ。また、セカンドライフバッテリーの利用法、新しい急速充電設備のあり方の提案でもある。年内には東京にも2ヵ所、オープンさせる計画だ。
東京にオープンするアウディ・チャージング・ハブは、欧州外では初になる。もちろんCHAdeMO対応だ。詳細は未発表だが、蓄電付き急速充電器になるという。こちらにも注目したい。