200万円ちょっとで手に入るWR-Vは、昭和のホンダ魂が宿っていた!

Honda WR-V Z
ホンダのエントリーSUVとして登場したニューカマー、WR-V。ハイブリッドも4WDもないけれど、その分軽く、そして手の届きやすい価格なのが魅力。といっても、単に軽くて安いSUVではない。そこは、ホンダ、走って楽しく、使い勝手のいいクルマに仕上がっていた。
TEXT:瀨在仁志(SEZAI Hitoshi)

お値打ち価格のWR-V、純エンジンの魅力あり

ボディ色はプラチナホワイトパール(3万8500円の有料色)

ホンダの良いところは、過去の慣例に縛られることなく、やりたいことをサッサとカタチにしてしまうところ。まずはやってみよう、とばかりに軽自動車のミッドシップスポーツモデルを作ってみたり、都市型コンパクトEVをいち早く市場に投入したりするなど、フットワークの軽さが持ち味。引き際も早くて、だめならサッサと諦める。S660もHonda eもすでに存在しない。続けることよりも次に駒を進める変わり身の速さによって、新鮮味のあるモデルに出合えるのもまた魅力だ。

今回の最新SUVモデルであるWR-Vは、ホンダの海外生産拠点としては最新のインド工場で生産され、日本に投入された。サイズ的には全長×全幅×全高が4325mm×1790mm×1650mm、ホイールベース2650mmで、上位モデルとなるヴェゼルの4330mm×1790mm×1580mm、ホイールベース2610mmと比較してみると、ボディサイズは全長がほぼ同じで全高が70mm高く、ホイールベースに関しては40mm長く、室内スペースの広さが窺える。

全長×全幅×全高:4325mm×1790mm×1650mm ホイールベース:2650mm 車両重量:1230kg 前軸軸重760kg 後軸軸重470kg
トレッド:F1540mm/R1540mm 最低地上高:195mm
最小回転半径:5.2m

価格はHEVや4WDが主力モデルとなるヴェゼルが239.9〜341.8万円に対して、HEVや4WDモデルを持たないWR-Vは、209.8〜248.9万円とお値打ち設定。手頃なSUVがアジアにあるなら、例え既存モデルと競合しそうでも、投入してしまう柔軟性はホンダらしいし、ユーザーにとっては選択肢が増えてうれしい限りだ。

実車を見てみると、M・M思想を高らかに謳った昭和のホンダを思い出す。カドの欠けた豆腐のような四角いボディは居住空間や荷室スペースに無駄がなくてデザインよりも機能最優先といった感じ。それでいながらボンネットに段差を付けて見切りの良さにこだわったり、スパッと切り落とされたフロント部分に大きなグリルを組み合わせて力強さをアピールしたりするなどポイントは押さえている。エンジンはいま時の環境ユニットとは異なり、電池やモーターに頼ることなく、伝統技術のVTECを基本に高効率を極めた純エンジン一本で勝負する潔さも持つ。

ぶんぶんエンジンを回して、燃費はどうだった?

エンジン 形式:1.5L直列4気筒DOHC 型式:L15D型 排気量:1496cc ボア×ストローク:73.0mm×89.5mm 圧縮比:10.6 最高出力:118ps(87kW)/6600pm 最大トルク:142Nm/4300rpm 燃料:レギュラー 燃料タンク:40L

実際に乗ってみると正に昭和だ。モーターも電池も搭載していない1.5LVTEC・DOHCユニットは吹け上がりが軽く、4000rpmを境に密度のあるサウンドに変わると同時に、加速度がアップ。CVTとの組み合わせながら6500rpmまで一気に加速させた直後にストンと5000rpm前後に落としてパワーバンドに乗ったまま加速し続ける。MTに乗っているようなメリハリの良いシフトアップを繰り返し、パワーピークを常に捉えていることから右足に対するレスポンスも良く、純エンジンの気持ちよさを満喫できる。

もっとも1230kg(Z)のボディに118psのパワーだから、決してパワーに余裕があるわけではない。気がつけば3桁のスピード域まで達するものの、その間は純エンジンならではの軽快な吹け上がりと、サクサクとシフトアップしていくCVTの気持ちよさで感動体験をしているに過ぎない。免許を取りたての頃に乗ったサニーやシビックのちょっと運転がうまくなった気分をWR-Vで味わえるのだ。

客室内寸 長×幅×高:1955mm×1460mm×1280mm
後席はシートクッションがたっぷりめで座り心地がいい
フロントシートの出来もいい

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リヤドアは全開する

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後席用のエアコン拭きだし口がある

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トランスミッションはCVT。前回にするとステップ状に変速する。

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アクセルペダルは吊り下げ式

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それを支えるのは重量バランスの良さにもある。ボンネット内には1.5・L4気筒の純ガソリンエンジンがちょこんと収まっているだけだから、フロントが軽い。ロックtoロックが3.5回転もあるステアリングレシオによって低速ではハンドル操作が忙しいものの、高速域では操作に対して遅れがなくて正確。車線変更やインターの出口などでスムースにラインをトレースしていってくれる。

重量感は薄くて路面の変化は正確に拾いやすく乗り心地はちょっと固めに感じるものの収まりは良い。背が高いにもかかわらず、ボディの揺れが残らないから、遠慮なくコーナーへアプローチしていけるし、速度維持もしやすい。ボディの軽量感と、回して楽しめる純エンジンとの組み合わせは、重量モデルがひしめくSUVのなかではとっても新鮮だし、昭和に残してきた若々しいホンダの切れ味を実感。

思い切りアクセルペダルを踏む快感がある(ただし、速いわけではない)。そこがいい。
ブリヂストンTURANZA T005A
225/55R16サイズ 指定空気圧はF230kPa R220kPa
リヤサスペンションはTBA。4WDの設定はない。
フロントはマクファーソンストラット式

燃費だってモーターも電池もないけど、その分軽いから、200km近くの高速ドライブと加減速を繰り返すような走りをしてもモード数値とほとんど変わらぬ15.1km/Lをマーク。軽快な吹け上がりによるパワーフィールを見せてくれた上に100km/h走行時は1500rpmで巡航し、回して走るワインディングから高速まで幅広く燃料消費を抑えてくれることも純エンジンの魅力に違いない。

ちょっと無骨で色気も感じにくいけど、室内は広くてラゲッジスペースもたっぷり。ゆとりあるロードクリアランスによって道を選ぶこともなく、今求められている性能をすべて満たしてくれて、200万円ちょっとで手に入る。クルマ生活を楽しむエントリーモデルに加えて、走りを楽しむ1台としての魅力もある。今のクルマに求められているものって、WR-Vの持つ性能で十分。インドで生まれたクルマは、昭和のホンダ魂が宿っていた。

ラゲッジスペース:500L 後席を畳むと1545Lと充分
ホンダWR-V Z
全長×全幅×全高:4325mm×1790mm×1650mm
ホイールベース:2650mm
車重:1230kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
駆動方式:FWD
エンジン
形式:1.5L直列4気筒DOHC
型式:L15D型
排気量:1496cc
ボア×ストローク:73.0mm×89.5mm
圧縮比:10.6
最高出力:118ps(87kW)/6600pm
最大トルク:142Nm/4300rpm
燃料:レギュラー
燃料タンク:40L
燃費:WLTCモード 16.2km/ℓ
 市街地モード:12.3km/ℓ
 郊外モード:17.2km/ℓ
 高速道路モード:18.0km/ℓ
トランスミッション:CVT
車両本体価格:234万9600円
メーカーオプション:Honda CONNECT for Gathers+ナビ装着用スペシャルパッケージ/LEDフォグライト/本革巻ステアリングホイール+セレクトレバー/リアセンターアームレスト(ドリンクホルダー付)/パーセルカバー/コンビシート/17インチアルミホイール
ディーラーオプション:フロアカーペット4万0700円/ドライブレコーダー3万7400円/9インチHonda CONNECTナビ20万2400円/ETC2.0 1万9800円
オプション込み価格:268万8400円

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…