最新技術満載の新型アコード、シンプルで品がある。それにスポーティ!

ホンダ・アコード e:HEV
ホンダのフラッグシップセダン、アコードの新型は、ホンダの最新テクノロジーを満載したハイテク・セダンだ。セダン人気が低迷する現代だが、アコードはそのトレンドを打破できる素質の持ち主だ。
TEXT:世良耕太(SERA Kota)PHOTO :MFi

ホンダの最新技術満載のアコード

ホンダ・アコード e:HEV 車両価格:544万9400円

11代目となる新型アコードが発売された。セダン系の背の低いクルマでは2021年に発売されたシビックから、水平基調のシンプルなデザインが採用された。新型アコードも同じ流れを汲む。かつてのアコードがシビックの上位に位置していたように、新型のアコードもシビックと同じファミリーに属していながら上位に位置することがひと目でわかる。水平基調で、低重心で、シンプルでありながら品がある。それにスポーティだ。

全長×全幅×全高:4975mm×1860mm×1450mm ホイールベース:2830mm 車重:1580kg  最小回転半径:5.7m 最低地上高:135mm

インテリアも同様。視覚的ノイズを排除した水平基調のシンプルでクリーンなデザインでまとめられている。気が散る要素が徹底的に排除されているおかげで、運転する際にストレスがない(と言って言いすぎなら、ストレスを感じにくい)。

上位なので当然のことながら、アコードはシビックより車両サイズが大きいし、機能が付加されていることもあって価格も上だ。もろもろ余裕があるなら、アコードを選びたい。静的にも動的にも、そう思わせる出来映えだった。

シビックの発売からアコードの発売まで2年半あったこと、それに上位に位置するモデルであることもあり、新技術や新機能がたくさん盛り込まれている。国内向けホンダ車として初めてとなるGoogleの搭載はそのひとつ。Googleアシスタントでは音声操作により、ナビの目的地設定、音楽の再生、車内温度設定などができる。

アコードならではの機能は車両情報と連携していることで、例えば、燃料残量の確認ができる。「あと何キロ走れる?」と聞くと、「200キロ走れます」などと具体的な数字で答えてくれる。

Googleアシスタントとのやりとりでは、LEDアンビエントランプが連動してアンサーバックしてくれる。アンビエントライトは主に中国のユーザーの嗜好に合わせる格好で普及が進んでおり、アコードもその流れに乗った格好。しかし、アコードの開発陣はただ照明を設置し、色のバリエーションを用意するだけでは芸がないと考え、光に機能を持たせた。

音声操作を行なった際にはライトブルーに明滅させてアンサーバック。ドアを開閉すると、開いたドアのライン照明をアンバーで点灯し、乗員と側方通過車に注意を促す。エアコンの温度設定を上げた場合は、インパネとドアのライン照明を赤に、下げた場合は青に点灯してアンサーバックする。点灯の仕方は上品だ。

インパネ中央には12.3インチ大画面のHonda CONNECTディスプレイを設置している。使用頻度の高いキーは運転席側に集中配置。オーディオとエアコンの表示は左側にまとめ、タッチすると専用画面に切り替わる。

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インテリアのアクセントになっているのはエクスペリエンスセレクションダイヤルと呼ぶ、時計が表示された大きなダイヤルだ(時計画面は10種類から選択可能)。ダイヤルを操作することでプリセットされたエアコンモードの選択や、自分好みにセットしたエアコン、オーディオソース、照明の色や明るさの組み合わせを呼び出すことができる。つまり、コマンダーダイヤルというわけ。

「ディスプレイの中にいろんな機能を入れていくと、どんどん階層が深くなっていき、使いにくくなる。よく使う機能をすぐに使えるようにという発想で開発しました」(開発者)

水平基調のインテリアは最新世代のホンダ車と共通。そのなかでももっとも先進的だ。室内長×幅×高:2010mm×1590mm×1175mm

助手席の乗員がディスプレイをいじっているとドライバーはナビ画面が確認できない。ヘッドアップディスプレイに矢印は表示されるが、ルートを広く俯瞰したい場合もある。そんな状況を想定し、ドライバー前のメーターにマップを表示できる「マップインメーター」の機能を設定した(今回の試乗時、実際に役立った)。

オーディオにもこだわっている。新型アコードは12スピーカーのBOSEプレミアムサウンドシステムを標準で装備する。ハッチバック車の場合はウーハーを荷室床下に設置したり、ミニバンでは荷室側面に設置したりするが、アコードはセダンなので剛性が確保されたリヤシェルフに設置することが可能だった。荷室をウーハーボックスに利用するが、ハッチバック車やミニバンのように荷室の荷物に左右されることなく、一定の音を出すことができる。

BOSEは他社モデルとの組み合わせでも走行中に聴きやすい(クルマが発する音や外の音=情報はしっかり把握でき、運転の邪魔をしない)音を鳴らす。アコードも例に漏れず、車内で聴くにふさわしいいい音が鳴る。

スポーツe:HEV

スポーツe:HEVと呼ぶハイブリッドシステムはシビックやZR-Vが搭載するユニットの進化版だ。2.0L直列4気筒自然吸気直噴エンジンを積む点は同じだが、スペース面で排気系の取り回しに余裕があるのを生かし、最高出力はシビックより高くなっている(104kW→108kW)。

エンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:LFD 排気量:1993cc ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm 圧縮比:13.9 最高出力:147ps(108kW)/6100rpm 最大トルク:182Nm/4500rpm

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走行用と発電用の2つのモーターと減速機、それにエンジン直結クラッチを一体化したトランスアクスルはシビック/ZR-Vがモーター同軸配置なのに対し、アコードが搭載するのは平行軸配置だ。CR-V(日本にはプラグイン燃料電池車のみ導入)を含め、世界展開する中型車のニーズに対応するため新開発したユニットである。

効率とドライバビリティを重視して開発している点は同軸配置のトランスアクスルを適用したシビック/ZR-Vのスポーツe:HEVと変わらない。走行用モーターの最高出力は135kW、最大トルクは335Nmで、シビック/ZR-Vの走行用モーターより20Nm数値が大きい。

日常シーンのほとんどはモーターで走行(EV走行)し、高速クルーズなど、モーターよりエンジンで走行したほうが高効率の場合は、クラッチをつないでエンジン直結で走行。バッテリー残量が少なくなった際や、ドライバーの出力要求が大きい場合にはエンジンを始動して発電またはアシストする。この場合もタイヤを駆動するのはモーターで、ハイブリッドはハイブリッドでもシリーズハイブリッドということになる。いずれのモードの場合も静粛性は高い。強い加速を求めてエンジンが始動した際は、刺激的なサウンドを響かせつつATのようにステップ状に音を変化させる。

走りに影響する機能では、減速セレクターの進化が大きい。新型アコードは先代に対して最大減速度を大きくすると同時に、減速段を4段(最大−0.11G)から6段(最大−0.2G)に増やして制御性を高めた。マイナスのパドルを1回引くと6段階のうちの3段階になって中程度の減速G(−0.95G)が発生する。アクセルペダルを踏み込むと選択した減速段は解除される。

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NORMALまたはECOモードでマイナスのパドルを約1秒長引きするか、SPORTモードを選択すると固定モードになり、アクセルペダルを踏んでも減速段は解除されない。アップダウンが激しく、急勾配が連続するシチュエーションでは固定モードがおすすめ。勾配やペースにもよるが、減速度が強い段数ほどアクセルペダルだけでの加減速コントロールがしやすく、リズミカルに走ることができる。

長い下り勾配でもやはり減速セレクターの存在はありがたい。先行車との車間が縮まったと感じたらパッとマイナス側のパドルを引いて車間を元に戻したり、コーナーの手前で引いて減速させたりする使い方ができる。減速セレクターを使うことで小まめにブレーキペダルに踏み換える煩わしさが減る。

高速道路の巡航時に役立つ新機能が車線変更支援機能だ。アダプティブクルーズコントロール(ACC)と車線維持支援システム(LKAS)が作動中に一定の条件を満たした状態でドライバーがウインカー操作をすると、システムが車線変更にともなうステアリング操作を支援する。試してみた感じでは、システムの操作をドライバーが(ステアリングに手を添えて)見守る感じだ。ウインカー操作後の応答が良く、動きはスムーズなので、これならシステムに任せてもいいいと感じた。

以下の新機能は危険が伴うので試してはいないが、あってありがたい機能である。車線変更時衝突抑制機能と、前方交差車両警報だ。前者は車線変更をする際、隣車線で後方から近づく車両と接触の危険性がある場合、システムがドライバーへ音とメーター表示で危険を警告し、衝突回避のためのステアリング操作を支援する。

後者は一般道の交差点などで低速走行をしているとき、あるいは停車状態から発進する際に、左右前方から接近する交差(横切る)車両の情報をドライバーに通知する。路地から直交する道路に顔を出すような状況だ。接触の危険性がある場合は、システムがドライバーへ音とメーター表示で危険を警告し、衝突回避の運転操作を促す。

新型アコードはシンプルなデザインで品があるだけでなく、先進技術は満載で、運転支援機能が充実している。デザインだけでも、技術や装備だけでもなく、クルマと積極的にかかわりたい人にとって最も重要な、操る楽しさが担保されているのがとてもいい。

ホンダ・アコード e:HEV
全長×全幅×全高:4975mm×1860mm×1450mm
ホイールベース:2830mm
車重:1580kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/R マルチリンク式
駆動方式:FWD
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:LFD
排気量:1993cc
ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm
圧縮比:13.9
最高出力:147ps(108kW)/6100rpm
最大トルク:182Nm/4500rpm
燃料供給:DI
燃料:レギュラー
燃料タンク:48L

モーター
H6型交流同期モーター
最高出力:184ps(135kW)/5000-8000rpm
最大トルク:335Nm/0-2000rpm

WLTCモード燃費:23.8km/L
 市街地モード 20.5km/L
 郊外モード 27.0km/L
 高速道路モード 23.6km/L

車両価格:544万9400円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…