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VTECエンジンを搭載し100ps/L超えを達成
1989(平成元)年4月19日、ホンダは「クイントインテグラ」の2代目で、クイントの冠が取れた「インテグラ」を発表。3ドアクーペが翌日、4ドアハードトップが5月12から発売。インテグラは、ホンダ初の高性能VTECエンジンを搭載したスペシャリティカーとして、大ヒットを記録した。
クイントがモデルチェンジ、スポーティなクイントインテグラ誕生
1980年にデビューした「クイント」は、「シビック」と「アコード」の中間のコンパクトカーだったが、やや中途半端な位置づけだったために販売は低迷。そのクイントがモデルチェンジして登場したのが、クイントインテグラだった。
クイントインテグラは、実用性重視のクイントから一転、スタイリッシュなフォルムで走行性能を重視したスポーティなモデルへ変貌。フロントマスクは低いノーズで、当時流行っていたリトラクタブルヘッドライトを採用。パワートレインは1.6Lの高性能DOHCエンジンと5速MTおよび3速ATの組み合わせ、駆動方式はFFが設定された。
こうして出来上がったクイントインテグラは、シビックよりも優れた走り、プレリュードよりも小気味よい走りで、国内外で好評を得た。
世界初の100ps/L超を達成したインテグラ
1989年に登場した2代目クイントインテグラは、車名からクイントが消え、インテグラの単独ネームとなり、リトラクタブルヘッドライトから個性的な横長ワイドのヘッドライトに変更。スポーティなワイド&ローのウェッジシェイプフォルムに、3ドアクーペと4ドアハードトップが設定された。
エンジンは、1.6L直4 SOHCのデュアルキャブ仕様と電子制御噴射PGM-FI仕様、そして最上級グレードには注目の新開発1.6L 直4 DOHC VTECエンジンを搭載。160psを発揮したVTECエンジンは、NA(無過給)で初めてリッター100psを超えた記念すべきエンジンであり、“エンジンのホンダ”を世界に再認識させた名機となった。
高性能VTEC搭載のベース仕様は146.5万円で販売され、TVコマーシャルに当時“バック・トゥ・ザ・フューチャー”で人気となったマイケル・J・フォックスを起用し、CM中の“カッコインテグラ”の決め台詞とともに大ヒットを記録した。ちなみに、当時の大卒初任給は16.4万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算で現在の価値なら200万円程度と比較的廉価な設定だった。
インテグラとともに誕生したホンダの名機VTECエンジン
ホンダエンジンの代名詞となっているVTEC(バリアブル バルブタイミング アンド リフト・エレクトロニック コントロール システム)は、インテグラとともに誕生した。VTECは、特定回転で低速カムと高速カムを切り替えることで、バルブリフトとバルブタイミングを変更する機構。吸気量増大、ポンピングロス低減、排気ガスの掃気を制御することにより、高出力、低燃費、低排ガスを達成するのが狙いである。
その後も“DOHC VTEC”は、歴代のタイプRやS2000など高性能モデルで採用され、2000年にはVTECに加えて吸気バルブの開閉時期の位相を連続的に変化させる、現在のホンダの標準的な機構“i-VTEC”、4代目「シビックタイプR」で採用された“VTEC TURBO”も登場した。
変わり種としては、V6エンジンに採用されているVCM(気筒休止システム)は、パワーを必要としない定常運転などでは、6気筒のうち3気筒を止めて燃費を向上させるシステム。VTECのリフトを極低にし、3気筒の燃焼を止め休止状態にするシステムである。
現在は、各社が独自の可変バルブ機構を標準的に採用しているが、VTECはその中心的な存在で進化し続けている。
シビックとアコードにより4輪メーカーとしての地位を確立したホンダが、次に目指したのは若者をターゲットにしたスポーティなモデルだった。プレリュードとともにインテグラは、ホンダの“スポーティさ”や“若々しさ”というブランドイメージの構築という重要な役目を果たした、ホンダにとってもエポックメイキングなクルマだった。
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