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乗用車テイストを加味したオフロード4WDの初代パジェロ
1982年(昭和57)年4月22日、三菱自動車がRVブームの立役者となった「パジェロ」を発表、発売は5月7日から始まった。それまでの武骨なイメージの本格オフロード4WDとは異なる、乗用車的な快適性を融合させたオフロード4WDのパジェロは、1990年代のRVブームのパイオニアとして人気モデルとなった。
パジェロの源流は、重工時代の三菱ジープ
パジェロの源流を辿ると、1956年から生産された「三菱ジープ」まで遡る。もともとジープは、米国陸軍の要請で開発された小型4輪駆動の軍用車が元祖で、ジープの名前が正式に付けられたのは、第二次世界大戦後に米国ウイルス・オーバーランド社が商標登録したことに始まる。
ウイリス社は、1949年から日本での販売も始め、1953年に三菱重工がジープの国内ライセンス生産を取得し、三菱ジープが誕生。最初は、ウイリス社の技術支援を受けていたが、1956年からは自社エンジンを搭載して完全国産化を実現した。
その後、三菱ジープはバリエーションを増やしながら進化を続け、一方で1982年にそれまでのジープの開発で培った技術を生かしたパジェロが誕生したのだ。
乗用車感覚を纏ったオフロード4WDパジェロの誕生
初代パジェロが目指したのは、ジープの走破性能を持ちながら、乗用車的な快適性や安全性を合わせ持つオフロード4WDだ。堅牢なセパレートフレーム、フロントサスペンションにダブルウィッシュボーン/縦置きトーションバーの独立懸架、フロントブレーキにベンチレーテッドディスクなど、新しい時代に対応した仕様が採用された。
ボディタイプは、当初は2ドアのメタルトップと帆をまとったキャンパストップの2種だけだったが、翌1983年に乗用車系のワゴンタイプと7名乗車を可能にしたロングボディが追加された。
パワートレインは、低中速トルクに優れた最高出力95psの2.3L直4 SOHCディーゼルターボと75psの3.0L直4 SOHCディーゼル、110psの2.0L直4 SOHCガソリンの3種のエンジンと、4速および5速MTの組み合わせ。駆動方式は、パートタイム4WDだった。
車両価格は、ガソリン車が189万~256万、ディーゼル車が163万~255万円、ちなみに当時の大卒初任給は12.5万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算で最安価な163万円モデルが今なら約300万円に相当する。
従来の武骨なオフロード4WD車とは異なり、スタイリッシュな新しいタイプのパジェロは、瞬く間に人気モデルとなり、日本のRVブームの先駆け的な存在となった。
パリダカの活躍がパジェロ人気を加速
パジェロは、発売の翌年1983年からオフロード性能の高さをアピールするため、パリ・ダカールラリー(通称パリダカ)に参戦。パリダカは、毎年正月元旦にパリをスタート、アフリカの砂漠地帯を走破しセネガルのダカールにゴールする、当時としては世界一過酷なレースだ。
初参戦は、2.5L直4ガソリンエンジン搭載のキャンパストップモデルで、さっそく市販車無改造クラスで優勝、その後エンジンを同エンジンのターボ仕様に変更し市販車改造クラスに移り、1985年に日本車初の総合優勝を果たす。1990年代から、このパジェロの活躍ぶりをNHKが連日特番で放映したため、パリダカブームに火がつき、パジェロ人気はさらに加速した。
【1997年パリ・ダカールラリー画像ギャラリー】
その後も、パジェロはモデルチェンジしながらパリダカに参戦を続け、1997年ついに篠塚建次郎選手が日本人初となるパリダカ総合優勝。さらに、1999年からは増岡浩選手が参戦し、2001年から2007年まで破竹の7連覇、7連覇中の2002年と2003年は、増岡選手が連覇するなど、三菱パジェロの人気は絶頂期を迎えたのだ。
初代パジェロは、悪路専用だった本格オフロード4WDを、一般路や高速路でも快適に走れるお洒落な4WDへと変身させた。それまで高級車やスポーツカーに乗っていた4WDとは無縁のユーザーまでも、パジェロに熱い視線を送ったのだ。
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