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ハイラックスよりも大きいが、最小回転半径は小さい
プレス向け試乗会は、オフロードコース、公道のオンロードが用意されていて、さらに筆者は山梨県から都内まで高速道路を使ってドライブする機会があった。また、別の日には内外装や居住性、積載性もチェックすることもできた。三菱トライトンを購入するのなら、ボディサイズと取り回し性は織り込み済みだろう。全長5360×全幅1930×全高1815mm(GSR)というスリーサイズは、国産車最大級で、全長5320×全幅1900×全高1840mm( Z“GR SPORT”)のトヨタ・ハイラックスよりも長く、ワイドになっている。
トライトンの最小回転半径は6.2mで、対するハイラックスは、6.4m。片側2車線の大きめの道路であれば容易にUターンできると開発陣は説明していたが、試乗会が行われた富士ヶ嶺オフロード周辺であれば、確かに苦もなく取り回しができた一方で、都内での取り回しやサービスエリアの駐車場などでもその大きさを実感させられた。
圧倒的な悪路走破性を確保
トライトンの最大の美点は、当然ながら公道であればどこでも走破できそうな悪路走破性の高さにある。最低地上高は220mmで、アプローチアングルは30.4°(GLS)、29.0°(GSR)、ランプブレークオーバーアングルは23.4°、ディパーチャーアングルは22.8°となっている。オフロードコースでは、岩場やモーグル、バンク、バケツ(大きな穴)などがあったが、腹下(下回り)を擦る心配は無縁だった。悪路走破性は、「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」の恩恵は絶大で、直結4WD(センターデフロック)の「4HLc」もコースの大半をクリアできた。岩場の急登で一度停車し、再発進するという厳しい状況下ではローギヤ直結4WDの「4LLc」に入れる必要があった程度だった。そのほか、急な下り坂では、一定速で維持するヒルディセントコントロールの恩恵も実感できた。
「 新型トライトンの○」乗り心地の良さと静粛性の高さ、軽快なハンドリング
凹凸だらけのオフロードコースでも乗り心地の良さは想像以上で、ミシリとも言わないボディの剛性感が高い安心感をもたらしてくれる。オンロードでは、リヤサスペンションがリーフスプリングにもかかわらず、空荷でも比較的上下動が小さく、後席での乗り心地の良さも印象的だ。新型は、リーフスプリングを従来の5枚から3枚に減らし、フリクションの低減を図ったそうだが、高速道路で流れをリードするようなシーンでも、若干ピッチングは大きくなるものの、SUVのような快適性を享受できる。
また、コーナーが多く、アップダウンも続く中央道でのハンドリングもピックアップトラックとしては大きさを感じさせない軽快感さえ味わえる。後輪駆動になる「2H」のほか、タイトコーナーブレーキング現象を発生させないフルタイム4WDの「4H」にするとより安定感が増す。雨天時の高速道路などでも「4H」ならより安心して走破できそうだ。
「 新型トライトンの○」ディーゼルエンジンの力強さも魅力的
2.4Lの「4N16」型ディーゼルターボエンジンは、キャラバン向けと同じ2439ccで、86.0×105.0mmのボア×ストロークも同値だ。ただし、キャラバンの最高出力97kW(132PS)/3250rpm、最大トルク370Nm/2000rpmからトライトンは、最高出力150kW(204PS)/3500rpm、最大トルク470Nm/1500-2750rpmと、72PS/100Nmも増強されている。概ね1.9t台から2.1tに収まるキャラバンに対し、トライトンも2080〜2140kgと、その巨体の割に軽い。プラットフォームもシャーシも一新されている恩恵といえるだろう。なお、ハイラックスは、2100〜2110kgとなっている。
オフロードコースでの急登でも、高速道路の合流路や追い越し時でも分厚いトルク感と必要十分なパワーを感じさせてくれるディーゼルターボエンジンも魅力的だ。しかも、じゃじゃ馬的で扱いにくいこともなく、アクセル操作に対してリニアに反応してくれる。ピックアップトラックとの相性は抜群で、ロングドライブでも疲れ知らずといえるだろう。
「 新型トライトンの△」電動パーキングブレーキ(EPB)が未設定なのは惜しい!
装備では、電動パーキングブレーキ(EPB)は未設定で、手動式のパーキングブレーキ(サイドブレーキ)になる。つまり、アダプティブクルーズコントロール(ACC)のレーダークルーズコントロールは、全車標準だが、ストップ&ゴー付の全車速域対応ではない。25km/h以下になると、ACCは自動的にオフになる。最近は、オフロードモデルでもEPBの標準化が進んでいる。新興国を主戦場とするトライトンにそこまで求めるのは酷かもしれないが、先進安全装備の充実ぶりを考えると、ストップ&ゴー付ACCが欲しいというニーズもアルだろう。
そのほか、身長171cmの筆者にとっては、乗降ステップの高さが少々中途半端で、なくても乗り降りできるため、足元に気を使うこともあった。もちろん、子どもや小柄な人にとっては必須アイテムだけに、身長により乗降性の良し悪しは大きく変わりそうだ。また、リヤゲートの開閉には、若干力がいる。ただし、ピックアップトラックとしては重い方ではない。地上からの開口高も約830mmと、一般的なSUVと比べると、かなり高めで大きな荷物や重い荷物は、2人がかりになることも多そうだ。一方で、対角で1.8m近い奥行きがあり、ピックアップトラックならではの高い積載力も享受できる。
■後席の居住性と積載性は?
そのほか、後席の居住性もピックアップトラックとしてはかなり頑張っているのがうかがえた。後席は固定式で、スライドもリクライニングもしない(背もたれの前倒しが可能)が、荷台長を確保するという制約がありながらも膝前スペースを確保。背もたれも座面もやや平板で、しかも背もたれは直立気味だが、大人でも実用になる快適性を確保している。なお、海外では子どもが後席に横になって休むというニーズもあるそうで、座面の後傾角をあまりつけられなかったそうだ。
「 新型トライトンの×」明確にダメと言える項目はないが…。
些末な点ではあるが、ディーゼルエンジンの音・振動面の粗さは少々きになった。また、低速域から高速域までスムーズで操作性に違和感はないものの、巨体の割には軽すぎる感のある電動パワーステアリング(パワステ)は、好みが分かれそうだ。走行中にやや気になったのは、大きな後席ヘッドレストもあって、後方視界が限られる点。ヘッドレストを取り外しするのは面倒だし、置き場に困ることもある。前席にしか絶対に乗車しないのなら取り外す手もありそうだが、急に座る必要があると困ってしまう。また、長めの荷台を備えることもあり、後方が遠く感じる。後退時も慣れるまで気を使うこともありそうだ。