目次
は1954年に創業、2024年で70周年を迎えた。電子計測機器や各種エンジニアリングサービス事業を展開し、創業年にはジェットエンジンの回転数を計測する回転計を開発するほどの技術力を持っていたほど。
小野測器といえばクルマ好きには最高速アタックの計測機器「小野ビット」を思い出す人も多いだろう。同社は自動車産業の縁の下の力持ちとしてメーカーへ測定技術を提供しており、ホンダ第二期F1活動でもV6ターボエンジンのベンチテスト用システムを特注するなど、クルマとはとても縁の深い会社なのだ。
新横浜からみなとみらいへ……100年企業のみらいへ新たなる船出
70周年を迎えた同社は、このほど本社をこれまでの新横浜からみなとみらいへ移転。100企業へ向けて新たなる体制を築いた。本社新社屋は総務や財務、広報といった事務方に加えデザイン部門などが入っている。
本社新社屋が入る横浜コネクトスクエア13階の窓からはみなとみらいが見渡せ、ビルの合間からは横浜港や横浜ベイブリッジも垣間見える羨望。夏には花火大会が見えることも期待しているそうだ。
新社屋では社員の席を固定しないフリーアドレス制を導入。部署を超えた社員同士のコミュケーションを促進し、会社をより活発にしていく狙いだ。
一方で、間仕切りを設けたファミレスエリアや、リモート会議に最適な防音ボックス、机の高さを変えられるスタンドワーク席、一席ごとに区切った集中エリアなど、多彩なワーキングスペースが用意されている。
個別のワーキングスペースが充実する一方、オフィス全体は間仕切りもなくとても開放的。エントランス周辺はカフェのような雰囲気でランチタイムを楽しむことができる。電子レンジやウォーターサーバーを置いた”スタバのような”カウンター周辺のデザインやレイアウトは社長の意向だそうだ。
デザイン担当部署など、一部使用機材の関係で固定席も用意しているものの、どこで仕事をするのも自由。みなとみらいを見渡す窓際の席も、上記のスペースだけでなくソファー的な椅子と間仕切りを備えた席も用意されていた。観葉植物や棚などもセンスよく配置されており、おしゃれで現代的なオフィスに仕上がっていると言えるだろう。
会議室や社長室もガラス張りになっており、社員の動向はもちろん社長の動向も社員から見えるようになっている。風通しよく活発な会社にしていこうという心意気を感じさせるレイアウトだ。
また、エントランス近くに設置された広めの会議室も、みなとみらいを望む窓に加えオフィス側もガラス張りになっている。一方でピクシーダストテクノロジーズ社の吸音材「iwasemi」を貼り付けて内外の静粛性を保っている。なお、このiwasemiの開発には小野測器の計測技術が生かされているという。
なお、小野ビットをはじめとした同社の計測機器の歴史的製品が展示されていたショールームは横浜テクニカルセンターに移設されている。
小野測器 本社:神奈川県横浜市西区みなとみらい三丁目3番3号 横浜コネクトスクエア 12階 横浜テクニカルセンター:神奈川県横浜市緑区白山1丁目16番1号
10dB以下の微小音域の測定が可能なローノイズマイクロホン
この新社屋で発表された新製品「MI-1282M10」は国内初(小野測器調べ)の1/2インチバックエレクレット型ローノイズマイクロホン。この製品は、これまで6dB程度が一般的だった自己雑音レベルを4.5dBまで低減することで、より微小な音を精密に測定することが可能とした。
クルマの快適性を高めるために自動車メーカーが追求する「NVH」というものがある。「Noise=騒音」「Vibration=微振動」「Harshness=突き上げ振動・衝撃」の3つのことで、これまでエンジンの存在で隠されてきたノイズが電動化によりよりハイレベルで求められる時代になり、微小音測定のニーズが高まっている。小野測器ではメーカーが求める「より微小騒音を計測したい」という声に応え、このMI-1282M10が開発された。
また、音の測定は測定位置や距離によって異なる音圧レベルだけではなく、音の放射エリア全体で捉える「音響パワーレベル」という尺度が主流となっている。そのため、音の反射ない無響音室などで複数のマイクを周囲に配置して測定するのだが、MI-1282M10を使用することで静音性の高い機器の動作音を正確に測定できることに加え、騒音の発生場所や原因の特定にも有効なのだ。
現状ではMI-1282M10の自己雑音4.5dBは業界トップということで小野測器ではこの新製品に強い自信を持っており、従来製品がマイク単体で20万円程度のところ70万円と強気の価格設定としている。しかし、電動化進むクルマにおいて静粛性はセールスポイントの重要なファクターなってくるであろうことから、自動車メーカーには高くない投資ということになるだろうか。