【動画で見る】これがホンダミュージックだ! F1マシンとGPマシンのエンジンサウンドを聴く!! ホンダコレクションホール収蔵のRA272とRC166

2024年3月1日にリニューアルオープンした「ホンダコレクションホール」。報道関係者を集めた内覧会のオープニングセレモニーでは、同館が所蔵するホンダの歴史的レーシングマシン2台のエンジン始動デモンストレーションが行われた。

【画像200枚】「ホンダコレクションホール」が3月1日リニューアルオープン!ココがスゴイ!! ホンダの歴史をその名車と製品で振り返る展示内容は?

「ツインリンクもてぎ」を擁する「モビリティリゾートもてぎ」内にある「ホンダコレクションホール」が2024年3月1日にリニューアルオープンした。ホンダが所蔵するクルマ、バイク、レーシングマシン、そしてそれだけに止まらない数々の収蔵品が展示され、訪れる人を楽しませてきた。そのホンダコレクションホールが、オープンから25年を経て、どのように生まれ変わったのだろうか?

ホンダコレクションホールの中には引き出されたマシンは、1台はバイク「RC166」。二輪の世界選手権を席巻したGPマシン。もう1台はフォーミュラカー「RA272」。ホンダにF1初勝利をもたらしたマシン。いずれもホンダとそのレーシングヒストリーに大きく刻み込まれるレジェンドだ。

スタッフがRC166を入念にチェックしている。
スタッフにより引き出されるRA272

セレモニーでは、元ホンダのワークスライダーであり、四輪ではスーパー耐久シリーズST-4クラスでチャンピオンを獲得した宮城光氏がマイクを握り、2台のマシンの来歴や戦績を解説した。

2台のマシンについて解説する宮城光氏。

同氏は現役時代はホンダ一筋で、現役引退後もホンダとの関係は継続しており、動態保存されるホンダコレクションホールの収蔵車の動態確認を担当している。
この日もスタッフとともにエンジン始動に立ち会うと共に、始動後のレーシングやエンジン停止は同氏が行っていた。

RC166のアクセルを回しレーシングする宮城光氏。
RA272のコックピットに収まる同氏。

1966年・1967年の世界タイトルを獲得したRC166

ホンダRC166

最初にエンジンを始動したのはGPマシン・RC166。
同車は1966年に、当時の二輪世界選手権において全クラス(500cc、350cc、250cc、125cc、50ccの5クラス)制覇を目指すホンダが250ccに投入したマシン。1960年にそれまでの125ccに続きRC161で250ccに挑戦を開始したホンダは、1961年から1963年までチャンピオンシップ三連覇(1961年-1962年:RC162/1963年:RC164)を果たした。

高橋国光選手が駆るRC162。ドイツGP(ホッケンハイム)での高橋選手による日本人GP初優勝が、ホンダの250ccクラス初優勝となった。(PHOTO:ホンダ)

しかし、1964年と1965年はヤマハのフィル・リード選手に2年連続で惜敗。1966年に捲土重来を期して投入されたのが空冷直列6気筒DOHC4バルブエンジンを搭載したRC166だった。
4ストロークエンジンで挑むホンダは、多気筒による超高回転化でライバルの2ストロークエンジン勢に対抗。常用回転数1万4000回転以上、最高回転数1万8000回転という脅威的エンジンなのだ。

ホンダRC166

残念ながら500ccクラスはMVアグスタのジャコモ・アゴスチーニ選手にタイトルを阻まれ全クラス制覇こそ果たせなかったものの、250cc以下の4クラスでチャンピオンを獲得。その筆頭となったのがRC166とマイク・ヘイルウッド選手だった。

RC166を駆るマイク・ヘイルウッド選手。写真は1967年のマン島TT。(PHOTO:ホンダ)

1967年もRC166は引き続き使用され、マイク・ヘイルウッド選手により世界選手権連覇を達成した。
エンジン始動デモンストレーションを行ったRC166は、上の写真と同じゼッケン7。マイク・ヘイルウッド選手のマシンに他ならない。その伝説級のエンジン音を聞いてほしい。

RC166のエンジン始動デモンストレーション
RC166
エンジン:空冷4サイクル並列6気筒DOHC4バルブ
排気量:249.42cc
最高出力:60PS以上/18000rpm
最高速度:240km/h以上
車両重量:112kg
トランスミッション:7速

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ホンダF1に初勝利をもたらしたRA272

ホンダRA272

続いてエンジンを始動したのはホンダ第1期F1マシン、1965年に選手権に投入されたRA272。
前年(1964年)ホンダはRA271でF1世界選手権に参戦を開始したが、エンジン出力こそトップレベルながら急遽制作せざるをえない状況で開発されたシャシー性能が足を引っ張り、無得点で挑戦初年度を終えるという屈辱を味わうことになった。

ホンダRA271(PHOTO:ホンダ)

というのも、元々はエンジンサプライヤーとしての参戦計画だったのだが、二輪での実績こそあるものの自動車も生産していないメーカーのエンジンを採用するチームは無く、シャシーまで自製するフルコンストラクターとしての参戦に舵を切ることになったからだ。

ドライバーはロニー・バックナム選手。(PHOTO:ホンダ)
ドイツGPでデビュー。(PHOTO:ホンダ)

1966年からレギュレーションが変更(エンジンの排気量が1.5Lから3.0Lに)されることから、1965年はRA271のシャシーを大幅に改良して前年の雪辱に挑むのだが、そのマシンがRA272だった。

エントランスホールに展示されるRA272はロニー・バックナム選手のカーナーンバー12。

ドライバーも、前年のロニー・バックナム選手の1台体制から、リッチー・ギンサー選手を加えた2台体制に拡大。好走しつつも結果に結びつかないなか、選手権の最終戦となるメキシコGPでは予選3位からスタートしたリッチー・ギンサー選手が全周ラップリーダーでホンダにF1初勝利を届けることに成功した。

ホンダRA272。1965年のメキシコGPでリッチー・ギンサー選手が優勝したカーナンバー11。(PHOTO:ホンダ)

エンジン始動を行ったのはまさにそのメキシコGP優勝車。エンジンは水冷60度V型12気筒DOHC48バルブ。まだバイクしか製造していなかったホンダらしく、エンジンはセンターアウトプットというバイクと同じレイアウトとなっている。

RA272に搭載されるRA272Eエンジン。HONDAロゴの入ったシルバーのカバーがVバンクの中央で、インテークがある。エンジン自体はやや前傾させて搭載されており、前バンク(写真右手)はボディ内に潜り込んでいる。
排気管未装着状態のRA272Eエンジンとトランスミッション。写真上のインテークにはカバーは付いておらず、左写真の搭載状態より直立しているのがわかる。(PHOTO:ホンダ)

230馬力という出力は同時代のライバル(BRM P56:212馬力V8/コベントリー・クライマックスFWMV:213馬力V8/フェラーリTipo205/B:210馬力V8/フェラーリTipo207:220馬力180度V12)を上回っていた。

前バンクからの排気は左右3気筒ずつに分かれて車体底部を通す。排気管は3in1で集合されている。
上が後バンクからの排気。同じく3in1で集合されるので、最終的に排気管は4本に。

全く同じではないかもしれないが、1965年のメキシコの空に響き渡った勝利のエンジン音を聞いてみてほしい。
余談ながら、宮城光氏は佐藤琢磨選手がイベントでこのRA272をドライブする際にコックピットドリルを担当。その際「シートベルトはないんですか?」と訊かれたのが印象に残っているそうだ。近年の何重にも安全対策が施されたレーシングカーに比べれば、当時のF1マシンの安全対策はあまりに頼りなかったというエピソードだ。

RA272
・シャシー
車体構造:アルミニウムモノコック+パイプフレーム(セミモノコック)、アルミボディ
サイズ(全長×全幅×全高):未発表
ホイールベース:2300mm
トレッド(前/後):1350/1370mm
サスペンション(前後):ダブルウイッシュボーン
トランスミッション:ホンダ製6速MT
車体重量:498kg
燃料タンク:180L
タイヤ:グッドイヤー
・エンジン
型式:RA272E
形式:水冷横置き60度V型12気筒DOHC48バルブ
総排気量:1495cc
最大出力:230hp
最高回転数:12000rpm
重量:215kg(ギヤボックス含む)

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ホンダコレクションホールの収蔵車は動態保存されているものが多く、この日お披露目された2台のレーシングマシン以外にも、折々エンジン始動やデモ走行が行われることも少なくない。今後も、収蔵車が末長く走行可能なコンディションを維持されることを期待せずにはいられない。

ホンダコレクションホール
所在地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県芳賀郡茂木町桧山120-1)
開館時間:10:00-17:00 ※季節・曜日により変動あり
料金:入場無料 ※別途モビリティリゾートもてぎ入場料・駐車料が必要

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