「ホンダジェット」量産型4号機が米国で初飛行に成功! お値段5億7000万円(当時)から【今日は何の日?5月4日】

ホンダジェット
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一年365日。毎日が何かの記念日である。本日5月4日は、「ホンダジェット」量産4号機が米国での初飛行に成功した日だ。これをベースにした量産ホンダジェットは、2017年~2021年まで小型ビジネスジェットカテゴリーの出荷数トップとなる人気を獲得している。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)

ホンダジェットの量産型4号機が初飛行に成功

2012(平成24)年5月4日、ホンダの航空機事業子会社「ホンダ・エアクラフトカンパニー(HACI)」は、小型ビジネスジェット機「ホンダジェット(HondaJet)」の飛行試験用量産型4号機が、米国ノースカロライナ州で初飛行に成功したことを発表した。

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2012年に米国で初飛行に成功した「ホンダジェット」量産型4号機

本田宗一郎氏の夢だった航空機事業への参入

ホンダの航空機の歴史は、本田宗一郎氏の幼少期の夢から始まった。今から100年以上も前の1917年、当時10歳だった本田少年は、静岡県浜松市で開催されたアクロバット飛行ショーを見て大きな衝撃を受け、そして大きな夢を抱いた。

本田氏は、1946年に本田技研研究所を設立し、まず2輪で成功し、続いて4輪事業に参入して成功を収める。当初から航空機事業への参入を夢見ていたが、夢の第一歩は1962年に開催された通産省および運輸省が後援し、ホンダが協賛した軽飛行機の設計コンテストだった。このコンテストには、後にホンダの社長となる東大在学中の吉野浩行氏が応募するなど、優秀な航空機技術者がホンダに入社するキッカケとなったのだ。

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具体的に動き出したのは、1986年設立の和光基礎研究センターで、航空機事業参入へ向け小型飛行機とジェットエンジンの開発に着手。当時のチームには、入社3年目の現ホンダ・エアクラフトカンパニー社長、藤野道格氏も在籍していたが、実際の航空機開発経験者がひとりもいないという体制でのスタートだった。
1992年に世界初の全炭素複合材ビジネスジェットの実験機「MH02」が完成し、翌1993年3月5日に初飛行に成功した。

型式認証を取得しホンダジェットの出荷開始

実験飛行の成功を受け、2003年に本格的な量産型ホンダジェットの開発に着手し試作機が完成。ホンダが独自開発したジェットエンジン「HF118」を搭載し、同年12月に初飛行に成功した。

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2)初飛行を喜ぶホンダ・エアクラフトカンパニー(HACI)の従業員

そして2012年5月のこの日、飛行試験用のホンダジェット量産型4号機が米国ノースカロライナ州で初飛行に成功。量産型4号機は、高度3500mの上空を飛行速度580km/hで74分間飛行し、ホンダジェットが性能や快適性、信頼性において、ユーザーの要求に十分対応できるレベルであることが実証されたのだ。

ホンダジェット
「ホンダジェット」の豪華なインテリア

しかし、実際にユーザーに出荷するためには、米連邦航空局および欧州航空安全局「型式認証」の取得が必要。2012年にも出荷を計画していたが、量産機の開発遅れや厳しい型式認証を取得できずに、当初の計画から大幅に遅れる事態となった。

その後、量産4号機をベースとしたホンダジェットは、2015年に連邦航空局から型式認証を取得し受注を開始。認証を取得したホンダジェットは、ベース価格490万ドル(当時の1ドル117円として、日本円で5.7億円)で、欧米やアジア、中国、インドなどで2015年末から出荷を始めた。

優れた性能で5年連続小型ジェット部門トップの座に君臨

ホンダジェットは、主翼上面のエンジン搭載や自然層流型、一体成型型複合胴体などホンダの独自開発技術の採用により、クラス最高水準の性能と室内空間を実現。特に注目されたのは、従来の小型ジェットの常識を打破した主翼の上にエンジンを搭載した独自のレイアウトだ。これにより、大きな室内空間と荷室容積を確保し、空気抵抗を減らして性能アップにつなげたのだ。

ホンダジェット
ジャパンモビリティショー東京2023のホンダブースに展示されたホンダジェットには、乗り込み体験の長蛇の列ができた

2017年の出荷台数は43機で、小型ビジネスジェットカテゴリーの出荷数でトップとなり、その後も2021年まで5年連続トップの座を獲得。残念ながら、2022年はトップの座を譲ったが、2022年2月時点世界中で約200機以上が運用されており、相変わらずの人気を維持している。

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オートバイから自動車、そして一気に空を飛び回る航空機まで手掛けるホンダの技術力は驚くばかりだ。そのDNAを作った本田宗一郎氏の夢を追う姿勢、チャレンジスピリットは、現在のホンダに脈々と受け継がれているのだろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

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竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…