ユーザーにうれしい進化の充実ぶり「スズキ・スペーシア」【最新国産新型車 車種別解説 SUZUKI SPACIA】

23年11月にフルモデルチェンジした「スズキ・スイフト」。大容量のコンテナがモチーフとあってボディ側面のラインや室内の豊富なサイズの収納などまさにどんな用途でも使いこめる頼りがいのあるモデルとなった。全モデルがマイルドハイブリッド、そしてスズキ随一の先進安全装備を備え、燃費も向上。デザイン、機能、乗り心地とも、バランス良く進化した。
REPORT:渡辺陽一郎(本文)/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:平野 陽/中野幸次 MODEL:平岡明純

使いやすさを格段にアップ スーパーハイト1の燃費も○

近年のスズキは、国内の売れ行きが堅調に推移して、乗用車メーカーの販売ランキングはトヨタに次ぐ2位だ。そのスズキ車の中で最も販売台数が多いスペーシアが2023年11月にフルモデルチェンジされた。

エクステリア

先代スペーシアのデザインモチーフがスーツケースであったのに対し、新型では「ガンガン使い込める」「ユニークで頼りがいがある」というイメージから大容量のコンテナをモチーフにしている。

スペーシアは現在の軽自動車の売れ筋―全高1700㎜を上回るボディにスライドドアを備えたスーパーハイトワゴンカテゴリーに属する。日本一売れているホンダN-BOXや、このカテゴリーの元祖たるダイハツ・タントといった強力なライバルに対抗すべく力の入った開発が行なわれた。グレード構成は、標準ボディと、エアロ形状のバンパーなどを備えたカスタムに分けられる。クロスオーバースタイルで人気を集めたスペーシアギアは24年中に投入されるとも言われており、4ナンバー商用車のスペーシアベースは従来型を継続販売している。

乗降性

ボディサイズは先代とほぼ同じだが、新型はたくさんの荷物を積み込めるコンテナをモチーフにしたデザインが目を惹く。ボディ側面にもコンテナ風のラインが入るのが面白い。インパネ周辺では、助手席の前にコンビニ弁当も置ける大型トレーを装備したことが特徴だ。先代はこの部分にフタの付いた収納ボックスを備えていたが、開発者は「コロナ禍以降は車内で食事をするお客さまが増えたためトレーに変更した」と言う。収納も豊富で、大型トレーの下にはボックスティッシュが収まる引き出し、さらにその下にはグローブボックスも備わる。助手席の座面の下にも、取り外し可能な大きな収納ボックスを配置した。

インストルメントパネル

スズキ初となるヒーター機能が付いた新設計のステアリングを採用する。Aピラーの形状を工夫することで細幅化し、優れた視界を提供する。ヘッドアップディスプレイは従来のフロントウインドウ投影式に代わり、専用スクリーンが立ち上がるコンバイナ式になった。

後席は先代同様に頭上と足元の空間が広い。そして主力グレードには、後席の座面の前端にマルチユースフラップを装着した。オットマンに似たクッションで、角度を変えたり引き出すことで、ふくらはぎを支える。ただし走行中には、踵が床から離れないような使い方を推奨したい。フラップを過度に持ち上げると、万一衝突した際、シートベルトが正常に作動しない心配があるからだ。またフラップを反転させると、後席の上に置いた荷物が床に落ちにくい。

居住性

エンジンはすべてマイルドハイブリッドを搭載する。自然吸気が基本だが、カスタムにはターボも用意される。自然吸気は平坦路では不満はないが、登り坂でパワー不足を感じる。ノイズも少し粗い音質だ。試乗して不満を感じるなら、ターボも検討したい。実際の走行性能を左右する最大トルクが自然吸気の1.7倍に増強され、パワー不足やノイズの不満も解消されるからだ。

うれしい装備

先代では蓋付きのボックス形状だった助手席前の収納スペースは、新型ではオープンな大型トレーになって使いやすくなった。
前席の空気を後席に流し、エアコンの効率を高めるスリムサーキュレーター。先代にもあったが新型では作動音が静かになっている。
フルモデルチェンジ     23年11月9日
月間販売台数          11407台(23年11月)
WLTCモード燃費        25.1km/ℓ※「HYBRID G」のFF車 

ラゲッジルーム

乗り心地は、街なかでは硬めだが、軽自動車の平均水準だ。走行安定性は高重心のスーパーハイトワゴンでは優れた部類に入る。操舵に対する反応にも鈍さはなく、混雑した街なかを機敏に走る。また燃費にも注目したい。自然吸気の燃費はFFの場合、売れ筋グレードが23.9㎞/ℓでハイブリッドXは25.1㎞/ℓに達し、スーパーハイトワゴンでは最良だ。ターボも21.9㎞/ℓだから、自然吸気と比べて燃費が8%しか悪化しない。以上のように新型スペーシアは、内装からシートアレンジ、安全装備、燃費まで、さまざまな機能やデザインをバランス良く向上させ、選ぶ価値を高めた。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.156 「2024年最新国産新型車のすべて」の再構成です。

http://motorfan-newmodel.com/integration/156/

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