「CX-5を外してはいけない」──主査が感じた最大のプレッシャー

今日、正式に販売が開始されたマツダ新型CX-5。初代は2012年登場で、2代目は2017年デビューだったから、9年もの長いモデルライフを誇ったモデルの後継モデルとなる。2代目CX-5は、日本のみならず世界的なヒットモデルとなり、グローバル販売で年間約33万台、累計500万台を売り上げている。
その数、じつにマツダの世界販売の約4分の1である。

そのマツダの社運がかかったCX-5の新型開発を任されたのが、主査の山口浩一郎さん(クルマ開発本部主査)だ。
――新型CX-5、いよいよデビューですね。先行予約段階でのお客様のフィードバックはいかがですか?
山口浩一郎さん(以下山口):はい。おかげさまで好評です。日本だけでなくグローバルでたくさんのご注文をいただいています。
――マツダ車の4分の1を占める基幹車種の開発責任者になるというのは、どういう感じなんですか?
山口:最初は、やはり新しいクルマですからワクワクしましたが、いろんな条件を聞くと、だんだんプレッシャーが強くなりました。これは大変なプログラムだな、という想いでスタートしましたね。
――CX-5は基幹車種であると同時に、上にはラージ商品群のCX-60、CX-80があり、下にはCX-30があります。僕の理解が間違っていなければ、本当はみんなモデルチェンジで二桁に変わっていくんだろうと思っていたんです。CX-30、60、70、80、90というときに、一桁の「5」を出さないといけないプレッシャーというのは、我々外野から見ても大変だなと思います。収めなければいけないコスト制限もある。サイズの制限もある。こうした枠組みのなかで最大限いいクルマをつくるというのは、すごく難しいプロジェクトだと思います。

山口:その理解で合っています。やはり条件はサイズ感とかコンセプトをどうするか、あるいは本当に(ラージと)どういう差別化していくか、ということもあります。でも、もっともっと私が感じたプレッシャーは、このCX-5はいつの時代も大ボリュームで売れるクルマですけれども、やはりその時代をリードする革新的なものを求められます。どこをどうやっていくかは非常に悩みました。そのなかで、日々の使い勝手に徹底してこだわるところを、お客様は応援くださっていると感じていました。いまでも2代目CX-5が売れ続けているということは、その価値をちゃんと認めてくださるお客様がいらっしゃるということです。それを心の支えに、その方向で新型CX-5の行く道を決めました。

――通常、新型車がデビューする際のプレゼンではターゲットカスタマーの想定があって、たとえば「50代で都会に住んで所得はこのくらいで……」という話になりますが、この新型CX-5ではそういう話はありませんでした。
山口:そうですね。とくにヤングカップルで小さいお子さんがおられると、ものすごく忙しい毎日です。たとえば、奥さんが働いていらっしゃる場合、毎日が忙しい。そのなかでシンプル・クリーンで使いやすい、かつ、だからこそ誇りを持って毎日乗れる、そういうクルマを念頭に置いていました。
――CX-5のように売れているモデルだと、例えば初代を買った購入当時30代だった方が40代後半になっていたり、40代の人が50代に入っていたり……となるとどうしてもそこを見ちゃうことが多いと思うのですが、あえてそうではなくて、先ほどおっしゃっていたターゲットを取りに行こうと考えたのですね。
山口:やはり顧客基盤もマツダでもっとも大きいモデルですから、これまでのCX-5ユーザーも絶対大事にする。そのうえで、選ばれる存在になるというか、外さずに開発に取り組みました。ただ、CX-5に求められる新規性・革新性というところもちゃんと入れないと新しい層も取れない。そのバランスはかなり大事でしたね。
魂動デザインは守る、そのうえで“日常の快適性”を攻めた

――今日、置いてあった初代と2代目をあらためて見て、初代はいま見てもカッコいいし、2代目もこんな綺麗なSUVってなかったよな、と存在感がいまでもちゃんとある、と思いました。やはり3代目をつくるときに、どこまで変えていいのか、魂動デザインってどうすればいいのだろう。やっぱり一般からの言われ方としては、マツダ車みんな似てきちゃったよね、というのがあると思います。似ているけれど新しくしなくてはいけないみたいな、すごく絶妙な難しさがあるんと思うのですけれど。



山口:それは最初にご紹介したコンセプトの「新世代エモーショナル・デイリーコンフォート・新世代価値」、それで詳細というより全体の守るところと攻めるところを決めました。具体的に言いますと、エモーショナルというのはどのメーカーさんにも負けない魂動デザインと人馬一体の走り、これは絶対に継承して守っていくところです。デイリーコンフォートのところを今回攻めて、マツダでも最高パッケージを持っていますけれどもその領域をブレークスルーしながらやってきて、あとは新しいこれまで提供したことのない価値をしっかりその上に載せていく。なので、守りがエモーショナル、デイリー・コンフォートと新世代価値が今回の攻めとして提案していくと決めました。
――最近のミドルサイズSUVって世界的に言うとラギッドな方向に進んでいます。マツダの場合、CX-50があるからCX-5はそっちへは行かなくていいということになる。
山口:CX-5はグローバル車種ですから(北米専用モデルの)CX-50のポジショニングというよりもこれまでのCX-5のポジションが都会でちゃんと機能的に使えるクルマであるというのが大前提でしたので、そこを外さないとしたときに、得意な独特で綺麗なスタイル、そこを守るという命題は最初からありました。
ディーゼル終了、SKYACTIV-Z投入へ……新型CX-5の次なる進化

――SKYACTIV-Zハイブリッドの話がありました。2027年中に投入なんですね。
山口:そうです。SKYACTIV-Zにマツダ独自のハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレーンです。
――新型CX-5はディーゼルエンジンの設定がありません。今年に入って現行CX-5ディーゼルを最後に買うか、新型CX-5ガソリンの登場を待って買うか選択があったと思います。お客様の反応はどうだったんですか?
山口:やはりお客様ごとに反応は分かれました。やっぱりディーゼルがいいという方は、新型でディーゼルがなくなるのであれば上級移行して直6ディーゼル+FRのCX-60を選んでいただく方、SKYACTIV-Zハイブリッドを待ってみようかと言われる方、あるいは現行CX-5ディーゼルを一旦新車で2年のマツダ・スカイローン(残価設定ローン)で購入して……という方もいらっしゃいます。
――なるほど。
山口:ただ、現行ディーゼルから新型に乗り換える方は、Google搭載とか新しいHMIとか、その新しい魅力で現行ディーゼルより新型を選んでいただけています。やっぱり新しい提案に対してしっかり価値を感じていただける方は、ディーゼルからでも振り返っていただけると。
――北米や欧州の反応はどうですか?
山口:北米はこれからです。欧州は、計画より好調な数字で滑り出しています。

――プレゼンテーションでカーボンニュートラル燃料への対応も将来的にちゃんと見据えているというお話でした。
山口:そうですね。いろんな手の内化されたものですから、そのなかでできることは持っています。それを内燃機関の理想を追求しながらいろいろな対応ができるというのは、ずっと考えています。新型CX-5は将来的なCN燃料の普及も見据えてE10ガソリンにも対応しています。

新しいブルーに込めた“デイリーコンフォート”という思想


――今回の新色、ネイビーブルーは、チーフエンジニアとして、思った通りの色をつくってくれた、という感じですか?
山口:はい。これはもう素晴らしく綺麗な色で、室内で見るとちょっとわかりにくいのですが、今日みたいな晴れた日は、太陽光が当たると影の暗いところと光が当たる鮮やかなところのコントラストがすごく美しい。いい色をつくってくれました。
――マツダにはソウルレッドという色があります。新型開発のときに、「もう一色、アピールできる色をつくってよ」ってデザイン部にお願いするんですか?
山口:そうです。かなり急いでこの色をつくってもらいました。この新しい色の話をちょっとお聞き下さい。
そこにデザイナーの管由希さんが歩み寄る。

管由希さん:ソウルレッドや(オプション設定)のスペシャルカラーではなくて、プラスのコストをいただかないベーシックなカラーとして新しくつくりました。ブルーを新しくしたいねって言ったときに、アメリカで見ると、これまでのブルーはフレークが大粒なのでちょっとギラギラ見えすぎてやや下品に見えてしまう。で、逆にヨーロッパへ持っていくと天候が曇りがちなので青があまり際立たずにグレーに見えてしまう。そのふたつの課題があったんですね。で、それに対してフレークを小さくして横に揃えたことで見る角度によって色が違うブルーができました。誰が見てもより新しいブルーとして美しい青だねって見えるように開発しました。
――最初からブルーを新しくしようっていう話だったんですか?
管:マツダとしてブルーを新しくする計画はあったのですが、なんとか新型CX-5に間に合わせたい。特に白黒2トーンに合わせるとすごく爽快感のあるコーディネーションができるので、どうしてもこのクルマから入れたい、急げ!と。
――でもそれはソウルレッドのようにお客様から何万円か頂いていいぞっていう話にはならなかったんですか?
管:そうです。これはやはりベーシックな色として誰でも選べるように、と。マツダにとって青は大切な色で、初代のシンボルカラーも青でした。しかも青はどのクルマでも世界中でコンスタントに売れる色なんですよ。あまり派手でなくテーマカラーになったりはしないんですが、コンスタントに売れるんですね。今回それをしっかりアップデートして、新型CX-5の「デイリー・コンフォート」日常で広く使っていただくということに対してもピッタリなカラーだと思っています。
――今回のインテリアで白黒2トーンがあります。珍しいですよね、白黒2トーンって。
管:そうですね。だいたい白一色か黒一色ですね。今回、白一色のインテリアも一回描いてみたんですけど、白一色だとちょっとプレミアムな感じとか、ラグジュアリーな感じが出て、逆に言うとお子さんがいる方とか、ちょっと汚れるかなっていう、敬遠してしまう色になってしまうんです。けれども、上を白にして下を汚れても大丈夫な黒で、なおかつ少しスエード調にすると、そういうものにすることで滑りにくさも兼ね備えることで、本当は白内装を選びたいんだけどなっていうお客さんが選べるようにっていうので、白黒ツートンを提案しました。


――白黒ツートンだと、どこから白で、どこから黒っていうのは、高さが違ったら多分全然印象が変わると思うんですけど、それはいろいろ絵を描いて決めたんですか?
管:そうですね。インパネとドアトリムから全部繋がるようにコーディネーションしているので。すべてここの高さで、こうお風呂に入ってる上側みたいな感じ。下は黒ですが上はそうですね。
山口:ラグジュアリーヨットのイメージですね。
ミドルクラスSUVというライバルひしめく大海を進み始めた新型CX-5。山口さんの口調と表情には自信が漲っていた。

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