連載

あのコンセプトカー、どうなった?

あまりにも市販車に近かったコンセプトカー

マツダ 勢(MINAGI)

2011年3月のジュネーブ・ショーでワールドプレミアされたコンセプトカーがマツダ 勢(MINAGI)である。2009年にマツダのデザイン本部長に就任したのが、前田育男氏だ。翌2010年には、魂動デザインのビジョンコンセプトとして「靭(SHINARI)」を発表。それ以前の「アスレチック・デザイン」路線と決別した新しいデザインは興奮と賞賛をもって受け入れられた。

そして魂動デザイン第二弾としてデビューしたのが勢(MINAGI)だった。

当時のSUVは、まだ“道具感”や“タフ感”を強調するデザインが主流だった。そのなかで勢(MINAGI)は、低く構えたフード、大きく張り出したフェンダー、流れるような面構成によって、まるでスポーツカーのような躍動感をSUVへ持ち込んだ。マツダはすぐに、勢(MINAGI)をベースにする市販車、CX-5の登場を発表。9月のフランクフルト・ショーで披露し、東京モーターショーでも展示した。

発売は2012年春である。

これだけコンセプトカーと市販車の登場タイミングが近いと、勢(MINAGI)を発表した時点でCX-5は出来上がっていた、と考えるのが自然だ。

となれば、新しい魂動デザインを世に知らしめた靭(SHINARI)の衝撃を上書きして、より市販車に近い魂動を勢(MINAGI)で示し、その勢いのままCX-5を出す……そういう流れを意図していたのだろう。まさに、勢いに乗せて、である。

ということで、マツダ 勢(MINAGI)がなにになったかは誰もが知っているので、マツダ 勢(MINAGI)と初代CX-5を並べて見ることで、マツダ 勢(MINAGI)を出した意図を想像していこう。

マツダ 勢(MINAGI)
マツダ初代CX-5 初代CX-5のボディサイズは全長×全幅×全高:4540mm×1840mm×1705mm ホイールベース:2700mm
マツダ 勢(MINAGI)
マツダ初代CX-5
マツダ 勢(MINAGI)
マツダ初代CX-5

ほぼ、そのままである。違いは「間違い探し」レベル。明らかに違うのは
・マツダ 勢(MINAGI)のサイドビューミラーが、カメラ化されているのに対してCX-5はコンベンショナルなミラー
・ドアハンドルの形状
・排気管出口の形状
・ルーフ上のシャークフィンアンテナの有無
・CX-5のタイヤサイズは17インチホイール(225/65R17)だが、勢(MINAGI)は1サイズ大きなタイヤを履いている。
というあたりだ。

デザインスケッチを見比べる

初代CX-5のチーフデザイナーは、のちにNDロードスターも手がけマツダのデザイン本部長になる中山雅氏。勢(MINAGI)のデザインスケッチには「N.Iwao」のサインが入っている。

勢(MINAGI)のデザインスケッチ

マツダ 勢(MINAGI)
マツダ 勢(MINAGI)

初代CX-5のデザインスケッチ

マツダ 勢(MINAGI)のオフィシャル写真。右から中山雅氏、前田育男氏、左端が岩尾典史氏だろうか。

どちらもデザインスケッチは同じ「N.IWAO」のサインが入る。これは岩尾典史氏(現・デザイン本部マスタークリエイティブエキスパート)のことだろう。岩尾典史氏は、2025年のジャパンモビリティショーでお披露目されたMAZDA VISION-X-COUPE、VISION X-COMPACTの2台のビジョンモデルの製作を陣頭指揮したひとりである。

勢(MINAGI)のインテリア
マツダ 勢(MINAGI)
マツダ 勢(MINAGI)
マツダ 勢(MINAGI)のセンターディスプレイ。なかなか斬新な形状だ。
マツダ 勢(MINAGI)

マツダ 勢(MINAGI)は、インテリアも作り込んでいた。現実的でありながら先進的(当時としては)な印象を与えるインテリアに仕上がっていた。

初代CX-5のインテリア

量産車であるCX-5は斬新というわけにはいかないが、それでも勢(MINAGI)でやりたかったことは表現できている。

マツダCX-5は、ご存知の通り大ヒットした。いまやマツダの屋台骨を支える最重要モデルに成長している。2代目CX-5は2017年に2代目にスイッチし、2025年に3代目をお披露目し、まもなく日本でも発売されるはずだ。

2代目CX-5
3代目CX-5
3代目CX-5

ただし、勢(MINAGI)のような商品コンセプトは2代目以降、CX-5では制作されていない。マツダは、勢(MINAGI)のあとも
マツダ雄(TAKERI)→MAZDA 6(アテンザ)
マツダ跳(HAZUMI)→MAZDA 2
マツダ越(KOERU)→MAZDA CX-4
マツダ魁(KAI)→MAZDA3
というように、量産車と結びつくコンセプトカーをつくってきた。デザインが大きく変わるタイミングで登場してきた「漢字ひと文字」コンセプトカーを次に見られるのはいつだろうか。

連載 あのコンセプトカー、どうなった?

by MotorFan
カーデザイン 11時間前

CX-5成功の前夜―マツダ 勢(MINAGI)は“量産される魂動デザイン”だった

by MotorFan
カーデザイン 2026.05.10

S2000へとつながった、ホンダ渾身のFRスポーツ構想

by MotorFan
歴史 2026.05.03

トヨタが“小さなランクル”を模索したCompact Cruiser EV